北条鉄平「沙都子はワシが守る!!」


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1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/10/01(水) 21:23:02.28 ID:s3aicERt0

一年ぶりのこの村は、相変わらず空気がいい。

興宮に比べるとパチンコ屋もなければ雀荘も飲み屋もない、不便なところである。

が、それでも寝床と飯とたくさんの麻雀仲間。そして…

とにかく、今の私にとっては十分満足のいく環境である事は間違いない。


一年前に妻を亡くし、愛人の律子が失踪。身寄りのない私は、この雛見沢村の姪のもとに身を寄せている。

6 名前:1[] 投稿日:2008/10/01(水) 21:27:46.68 ID:s3aicERt0

姪の沙都子と私の仲は決して良好ではない。

一年前に死んだ妻が姪とその兄の悟史をいじめた事が原因だろう。

兄夫婦に押し付けられたあの兄妹は、我々夫婦にとっては確かに厄介者であった。
妻は兄妹をいじめぬき、児童相談所の監査が入るような騒ぎになった事もある。

しかし密かに「子供が欲しい」という願望を持っていた私にとって、そのいじめは本意ではなかった。


妻に逆らう事は出来なかったが。

9 名前:1[] 投稿日:2008/10/01(水) 21:32:05.73 ID:s3aicERt0

妻が死に、悟史が失踪したあの事件から一年間。

それまで姿を見せなかった私は、沙都子の保護者であるかどうか以前に、彼女にとって非常に迷惑で身勝手な存在であると言えよう。

血は繋がってはいないが、このただ一人の身寄りを大切にしたい。


罪滅ぼしがしたい。


そう考え、私はこの愛らしい姪との関係修復に尽力している。

10 名前:1[] 投稿日:2008/10/01(水) 21:41:02.10 ID:s3aicERt0

鉄平「沙都子の作る飯は美味いのぉ」

沙都子「…」

鉄平「そ、そうじゃ、最近の学校はどんな感じね?」

沙都子「…」

鉄平「あのお前の友達の梨花ちゃんだったっけか?今度またここへ遊びに呼んでやるとええ。」

沙都子「…」

鉄平「ワシがおらん間、お前の面倒を見てくれたお礼もせんといかんしのぉ」

沙都子「…」

11 名前:1[] 投稿日:2008/10/01(水) 21:45:15.24 ID:s3aicERt0

鉄平「…なぁ沙都子!?」


沙都子「…ひゃっ!ごめんなさいごめんなさい!私が悪いんですごめんなさい!!」

鉄平「ど、どうした!?」

沙都子「ごめんなさいごめんなs…いやぁぁぁぁぁぁっ!!」


がしゃーん!


これが我々夫婦が行った事への報いであり、あの兄妹を救えなかった私の罪なのだ。
床の味噌汁を拭きながら、私はそんな事を思った。

19 名前:1[] 投稿日:2008/10/01(水) 21:55:25.61 ID:s3aicERt0

鉄平「沙都子〜!今日も学校いかんでええんか?」

沙都子「…」


私が帰ってきてから3日が過ぎたが、沙都子はその間一度も学校へ行こうとはしなかった。
ただ黙々と、家事をこなすロボットのようだった。

これはさすがにまずい。

村内にも、私が「沙都子を閉じ込めて無理矢理家事をさせている」といった噂が立ち始めたようだ。


今日は沙都子を家の外へと連れ出し、無理矢理学校へと向かわせた。

20 名前:1[] 投稿日:2008/10/01(水) 21:59:31.94 ID:s3aicERt0

私が雛見沢に帰って数日が経過したが、未だ沙都子は私に心をひらいてはくれない。

話かければ黙ったままで、いきなりスイッチが入ったように泣き叫び、食卓をひっくり返すような癇癪を起こす。


それに最近は妙な長風呂をするようにもなった。

もはや私にはどうしようもないのではないか。


そんな考えが頭をよぎる。

23 名前:1[] 投稿日:2008/10/01(水) 22:05:31.70 ID:s3aicERt0

そもそも私がこの村にいなければどうだろう?

沙都子は仲の良い友達に囲まれ、何も気に病む事なく毎日を笑顔で過ごすだろう。

しかし、いつまでもそうはいかない。


子供が成長する上で、保護者がいない事への弊害は計り知れない。

これからの沙都子の人生にかかる金はどうする?


やはり私がいなくてはならない。
どんなに時間がかかっても沙都子に心を開かせる。

それが最善なのだと自分に言い聞かせた。

27 名前:1[] 投稿日:2008/10/01(水) 22:12:19.90 ID:s3aicERt0

職安で仕事をみつけた。

組に足がつかないかという心配もあるが、この際そんな事を気にしてはいられない。

これからの私は、カタギの道でまっとうに働いて沙都子を養ってゆくのだ。

ひとまず安心した私は、少しばかりの気休めとして、家に友人を集めた。

気の合う仲間と笑い合って酒を飲み、麻雀を楽しむ。
ここ数日分のストレスがゆっくりと分解されてゆく感覚をおぼえた。

33 名前:1[] 投稿日:2008/10/01(水) 22:19:31.29 ID:s3aicERt0

「おい鉄っつぁん!台所が煙で真っ白だぞ!!」


…何!?

今日俺は台所には入っていない。

さっき、頼んでもいない乾き物と熱燗を用意して持ってきたのは…


さ・・・と・・・・・・こ・・・・・・!?

「沙都子ぉぉぉぉぉ!!」

私は頭が事態を飲み込むと同時に台所へと飛び込んだ。


台所には人影がなく、水分がすべて蒸発したであろう鍋から、もくもくと白い煙が上がっていた。

35 名前:1[] 投稿日:2008/10/01(水) 22:23:23.61 ID:s3aicERt0

よかった…沙都子に何事もなくて本当によかった…。

心配かけやがってあの馬鹿…!

気を使って酒なんか用意しなくてもいい。私はそんな事を強要したりはしないのに。


その時、窓の外から声が聞こえた。

沙都子の声と、若い二人の男の声だ。

37 名前:1[] 投稿日:2008/10/01(水) 22:28:34.81 ID:s3aicERt0

大きな買い物袋の中には、大量の酒が入っている。

ちょっと待て。私がいつそんな買い物を頼んだ。

思わず窓を全開にし、私は叫んだ。


鉄平「沙都子ぉ!!燗のガスかけっぱなしで何をしとるかこのダラズが!!早よう家の中に戻らんか!!」

沙都子「ひっ!」


ふと沙都子から目をそれし、横で沙都子の荷物持ちを手伝う白衣の男と少年に目をやった。


親の仇を見るような目でこちらを睨む二人の男。


…貴様らに何がわかるというのか…!

私は彼らを思い切り睨み返し、力強く窓を閉めた。

43 名前:1[] 投稿日:2008/10/01(水) 22:38:35.82 ID:s3aicERt0

買い物の一件以降、沙都子は一層私にたいして心を閉ざした。

怒鳴った事を反省すると同時に、ふと湧き上がる違和感。

私の言葉が耳に入らない沙都子。

私の頼まない家事や買い物を、さも私にやらされるかのように行う沙都子。

私の些細な言動に過剰反応して怯える沙都子。

以前我々夫婦にいじめられたトラウマ?

しかしいじめを行ったのは妻で、私は何の危害も加えてはいない。

それならば、トラウマでないというのなら自ずと答えが出よう。


・・・沙都子は狂言で私を陥れ追い出そうとしている。

そう、何かの病気で幻覚を見ているなどでないかぎり、そうとしか考えられない。

51 名前:1[] 投稿日:2008/10/01(水) 22:47:01.65 ID:s3aicERt0

沙都子は私を拒絶する。

しかし私はどんなに嫌われようが拒絶されようが、投げ出す事は出来ない。

いつの日か沙都子に受け入れられ、本当の親子のように暮らし接する事ができるように、努力を続けなければならない。

それがこの北条鉄平という一人の男の意地であり、義務でもあると考えている。

52 名前:1[] 投稿日:2008/10/01(水) 22:54:24.39 ID:s3aicERt0

今日の夕刻、児童相談所の保護司が家を訪れた。

しかし驚くべきは、沙都子が保護司を自ら追い返したという事だ。

てっきり沙都子が自ら通報したものだと思っていたため、私はその光景に驚き狼狽した。


沙都子は私を追い出すつもりではなかった・・・?


では一体誰が?

沙都子の今までの態度は?児童相談所への通報は?

沙都子に入れ知恵をし、私を陥れようとする黒幕が存在する?

一体誰が・・・・・・・

54 名前:1[] 投稿日:2008/10/01(水) 23:01:34.20 ID:s3aicERt0

煙草を切らした私は、煙草屋のある村の中心部まで出かけた。

昨日の保護司の訪問から一夜が開け、相変わらず沙都子は私の呼びかけや質問に答えようとしない。

中心部へ出るための山道の途中、茂みの奥から人の声が聞こえた。

??「あっ・・・ん・・・け・・いち・・・・くん」

??「はぁ・・・はぁ・・・・レナ・・・」


あれは…喘ぎ声?

律子が失踪して依頼ご無沙汰である事を思い出した私は、少々覗き見をする事にした。

55 名前:1[] 投稿日:2008/10/01(水) 23:03:55.56 ID:s3aicERt0

ん・・・なんだ、よく見えないぞ。

おっ、なんだ、まだ二人とも中学生くらいじゃないか!いいぞもっとやr…


あの男の方、どこかで見た事が…


私が沙都子をどなってしまった時の記憶がフラッシュバックした。

あの時荷物持ちを手伝っていた少年…?

61 名前:1[] 投稿日:2008/10/01(水) 23:10:23.17 ID:s3aicERt0

圭一「なぁレナ…今日は挿れてもいいだろ?俺もう…」

レナ「だ〜め、まだ我慢なんだよ。だよ。」

圭一「何でだよ!」

レナ「レナは知ってるんだよ。圭一君本当はレナじゃなくて沙都子ちゃんの事が好きなんだよね?」

圭一「・・・そんな事・・・沙都子はまだ小学生だぞ!」

レナ「レナの目はごまかせないんだよ。最近の圭一君、沙都子ちゃんの事ばっかり。」

圭一「しょ、しょうがないだろ!!一刻も早く沙都子を叔父の虐待から救ってやらないと…」

レナ「それにしても最近の圭一君は行き過ぎてるよ。今日のお昼の時だって」

圭一「う、うるさい!!あの叔父は悪だ!排除しなければならない存在なんだ!」

65 名前:1[] 投稿日:2008/10/01(水) 23:14:16.26 ID:s3aicERt0

圭一「つべこべいう奴はこれでもくらえ!そりゃ!ウッディ!!」

ズブっ・・・・

レナ「ひぎぃっ!!」

レナ「い、痛いよ圭一くん、やっぱり付き合ってないのにこんな事しちゃいけないよ。ね、御願いだからそれを抜いて?」

圭一「うるさい!おらっ・・・おらっ!!」

レナ「痛いよ、痛いよ、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。もうやきもちやいたりしませんから、ごめんんさい」


鉄平「(あ、あのガキ…狂ってやがる)」

75 名前:1[] 投稿日:2008/10/01(水) 23:22:10.66 ID:s3aicERt0

帰路を早足で辿りながら、私は混乱する頭を必死で回転させた。

あのガキ、俺を悪だと?排除するだと…!?

私を陥れようとしていたのは、あの圭一とかいうガキ・・・?
沙都子をそそのかし、児童相談所に通報し、私を悪者に仕立て上げこの村から追い出そうとしている?


何のために?

あのさっきの小娘のように、沙都子も自分の手篭めにするために??

ふざけるな。
そんな事はこの私が許さない
悪は貴様だ私は貴様の毒牙から大切な沙都子を守らなければならないお前のような存在が許せない許せない許せない許せない許せない…


…ひた。

立ち止まった私は、強烈な違和感を感じた。


今、足音が一つ余計に聞こえた・・・?

81 名前:1[] 投稿日:2008/10/01(水) 23:29:07.00 ID:s3aicERt0

翌日、村では年に一度の祭りがあるとかで、周りにはせわしない空気が流れていた。
よそ者の私にはそんな祭りは関係無いのだが。

そういえば去年妻が殺されたあの事件も、この祭りの日だったか。

電話が鳴った。

雛見沢に戻ってから、家の電話が鳴るのはこれが初めてだ。

??「こちらは鹿骨市興宮警察署です。北条さんのお宅ですか?」

…何が警察だ。貴様の声は覚えているんだよ。

??「今お宅のお嬢さんの北条沙都子さんをこちらで保護しています」


…上等だよ。貴様の策略に乗ってやろうじゃないかクソガキが。

84 名前:1[] 投稿日:2008/10/01(水) 23:33:20.67 ID:s3aicERt0

奴の要求はこうだ。

沙都子を保護したから、警察まで迎えに来いと、ただそれだけだった。


奴にとって、私を警察へ行かせるメリットは何もない。

では何故奴はそんな要求を?


なんだ、簡単な事だ。


警察へ向かうための道中で、奴は何かを仕掛けてくる。

87 名前:1[] 投稿日:2008/10/01(水) 23:42:13.26 ID:s3aicERt0

私は奴の要求通り、興沼へ向かってバイクを走らせた。

鬼ヶ淵沼を越えたところで、奴は姿を現した。


茂みからいきなり体当たりをくらわされ、私はぬかるんだ地面へと放り出された。


さぁ来いクソガキ…

武器は何だ、チャカが、ドスか、


…バット!!

…そんな扱いづらい武器でこの私を殺そうとは…笑止!!

鉄平「北条鉄平をなめるなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


振り下ろされるバットを右手で受け止め、奪い取る。

鉄平「沙都子は・・・沙都子はワシが守るっ!!!」

私は奴のコメカミを狙い、鋭くバットを振った。

92 名前:1[] 投稿日:2008/10/01(水) 23:49:11.75 ID:s3aicERt0

真芯でとらえた感触。

高校球児だった時代を思い出す。


奴は綺麗な放物線を描き、そのまま鬼ヶ淵沼へ着水した。


鉄平「…ふん、逆転満塁ホームランじゃ」


しかし、快感も束の間、すぐに凄まじい恐怖感が私を襲った。

私はついに人を殺めてしまった。

この場合は正当防衛?
しかし元ヤクザの私と普通の子供の奴とでは、誰が私の言い分を信じる?

そもそも、沙都子の信頼するあいつを私が殺したとなれば、私と沙都子の未来はいよいよ絶望的だ。

隠そう。逃げよう。何もなかった事にしよう。


狂気のバットを沼へ捨てようとした瞬間、グリップエンドにマジックで書かれた文字が目に入った。


悟・・・・・史・・・?

119 名前:携帯から少し続き ◆Lrb7aHG4Ls [] 投稿日:2008/10/02(木) 02:59:22.76 ID:+V8TEZSpO

私はそのバットを捨てる事が出来ず、持って帰った。

誰よりも沙都子を守ろうとした、悟史のバット。

もしかすると、悟史は沙都子を守るために、このバットで妻を殺したのかもしれない。


そして今の私が同じ立場に立たされてもきっとそうするであろう。


家につくと祭りに行ったはずの沙都子が何故か夕食の用意を済ませ、無言で座っていた。

疲れ切った私は特に言及する事もなく、バットを棚の中に隠し、味噌汁をすすった。

121 名前:1[] 投稿日:2008/10/02(木) 03:07:59.15 ID:+V8TEZSpO

「前原屋敷の御曹司が失踪した」


騒ぎになるまで、大した時間はかからなかった。

しかし沼から死体が浮いてこないという事は、やはりあの沼は本物の底無し沼だったのだろうか。

ただの気味の悪い迷信だと思っていたが。


圭一とかいう奴の失踪が原因か、沙都子はいっそう元気をなくしたように見える。

奴が死んだという事実を知るのは私だけ。
悟史の失踪と重ねて余計に悲しく感じているのだろう。


「ぴんぽーん」

誰か来たようだ。この家に客とは珍しい。

124 名前:1[] 投稿日:2008/10/02(木) 03:13:17.91 ID:+V8TEZSpO

「んっふっふ、どうもどうも、私興宮署の大石と申します。北条鉄平さんですね?」


刑事…だと…!?


何故だ、まさかバレたのか?死体が浮いてきた?それとも目撃者?

さっさと認めて正当防衛を主張するべきなのか?


おちつけ、クールになるんだ北条鉄平。

125 名前:1[] 投稿日:2008/10/02(木) 03:19:58.57 ID:+V8TEZSpO

大石「あなた、間宮律子さんとご交際されていましたね?」

……律子?

大石「大変申し上げにくいのですが、落ち着いて聞いてください。失踪していた間宮律子さんですが、先日他殺体で発見されました。」


…なんだ、そんな事か。

愛人の死を知らされてこんな事を思うのは随分とおかしな話だが、私は心底安堵した。


律子が組の上納金に手を付けただの、園崎組が怪しいだのいろんな話を聞いたが、今は律子の事などどうでもいい。


圭一殺しがバレてさえいなければ万事OKなのだ。

126 名前:1[] 投稿日:2008/10/02(木) 03:28:29.92 ID:+V8TEZSpO

大石「いやはや、今回はお気の毒でした。今回はどぶに沈められていた死体が浮いてきた事で発見されましてね。日数も経過していたもので、そりゃあひどいありさまでした。」

鉄平「はぁ」

大石「同じく失踪中の前原少年も、ひょっこりどこかの沼から浮いてくる…なんて事がなければいいんですがね。おっと、不謹慎不謹慎」

鉄平「…」


いたずらに不安をあおられた気分だ。

そうだ、くだらない迷信を信じて安心していたが、あの沼が底無しである保障なんてどこにもない。

死体が浮くような事があれば、すべてが終わってしまうんだ。

128 名前:1[] 投稿日:2008/10/02(木) 03:33:43.94 ID:+V8TEZSpO

気付けば私は、例の沼の前にいた。


一度沈めてしまったものはもうどうしようもない。確認のしようもない。

しかし、何故かここへ来ずにはいられなかった。


不意に

背後に

小さな

気配を感じた。


そう、あの「余計に聞こえる足音」とよく似た気配。


??「前原圭一を殺したのは…あなたね?」

183 名前:1 ◆Lrb7aHG4Ls [] 投稿日:2008/10/02(木) 14:23:30.00 ID:hyLjeec40

振り向くと、そこにいたのは沙都子と同い年ぐらいの少女だった。

たしか…沙都子と一緒に暮らしてた、梨花とかいう神社の娘?

どういう事だ、こいつに圭一殺しがバレていたというのか…

ならば今ここでこいつを始末するしか…しかしこいつは沙都子にとって大切な…


梨花「ふふふ…そう怖い顔をしないで。私はあなたの敵じゃない。あなたを通報する気もなければあなたの罪をとがめる気もないわ。」

鉄平「!?」

185 名前:1 ◆Lrb7aHG4Ls [] 投稿日:2008/10/02(木) 14:29:54.36 ID:hyLjeec40

梨花「あなたは本当なら、祭りの夜に前原圭一にバットで撲殺されるはずだった。」

梨花「しかし、圭一が失踪しあなたが生きている…あなたが反撃に成功したとしか考えられないわ。」

な…こいつは何を言っている!?

梨花「そもそも、この世界は少しおかしかった。」

梨花「あなた自身からの悪意が全く感じられなかった。おそらく、あなたは沙都子や圭一が思っているような悪い叔父ではなかった。」

鉄平「・・・」

梨花「むしろ、この世界でおかしかったのは圭一のほう。」

梨花「でももうこの雛見沢にももう終わりが近づいているわ。」

こいつは一体何の話をしている!?気味が悪い!まるで全てを見透かしたような…


ヤハリココデサツガイスルシカ…

188 名前:1 ◆Lrb7aHG4Ls [] 投稿日:2008/10/02(木) 14:36:03.85 ID:hyLjeec40

梨花「ふふ…そんな顔で拳を握りしめて、私もここで殺されちゃうのかしら?」

鉄平「ぐぅ…」

梨花「やめた方がいいわよ?今私が死ぬと、この歪み始めた世界に終わりがこない。」

鉄平「!?」

梨花「沙都子は友を失ったショックで一層心を閉ざす。あなたは二人の子供を殺した殺人犯として、心に闇を残したまま生きてゆく。」


…ひた。

…めんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…

梨花「うるさいわね。少し黙りなさい」


鉄平「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

189 名前:1 ◆Lrb7aHG4Ls [] 投稿日:2008/10/02(木) 14:44:43.78 ID:hyLjeec40

威圧感。

組にいた頃に色んな修羅場をくぐってきたが、あの少女から感じる恐怖はそのどれとも次元が違った。

気がつくと私は息を切らして家の玄関に立っていた。


この北条鉄平が、あんな少女の勢いに押され、逃げて帰った…だと!?


…るせん、許せん。あの小娘が…!

この北条鉄平を馬鹿にしやがって!
そもそも俺の圭一殺しを知っているあいつを野放しにする事自体が危険極まりない。
日頃は幼いふりをしてあんな本性を隠してやがったあいつもきっと沙都子に私の追放をそそのかした共犯にちがいないあの前原圭一と同類のクズだ私の敵だ排除するしかない。


コ ロ ス シ カ ナ イ ・ ・ ・

192 名前:1 ◆Lrb7aHG4Ls [] 投稿日:2008/10/02(木) 14:54:42.33 ID:hyLjeec40

翌日。

私は倉庫から大きなトンビ鉈を出した。


…あの小娘め。この鉈で腹を引き裂いてやる。

私と沙都子との生活を邪魔しようとした、私を馬鹿にした天誅を下すのだ。

カラスの餌にしてやる。


沙都子の部屋を覗くと、沙都子はまだぐっすり眠っているようだ。

待っていろ沙都子。

私はあの魔女を殺して、お前の周りの邪魔なものを全て排除してやるからな。

待っていろ。

194 名前:1 ◆Lrb7aHG4Ls [] 投稿日:2008/10/02(木) 15:02:35.42 ID:hyLjeec40

神社の裏の小屋には、奴はいなかった。

どこにいやがる。神社か?

どこに隠れていようが、絶対にみつけてやる。ハラワタを引きずり出してやる。


…!?

境内に大量のカラスがたかっている??

一体…何が…!?


そこに置かれていた「物体」に、私は目を疑った。

196 名前:1 ◆Lrb7aHG4Ls [] 投稿日:2008/10/02(木) 15:07:48.68 ID:hyLjeec40

まさに、私が実行しようとしていた事が、目の前で完遂されていた。


梨花の死体…?引きずり出されたハラワタ…?群がるカラス…?


…な、どういう事だ。私はまだ手を下していない。

一体何が起こった。


「キ、キャァァァァァァァァ!!」

振り向くと、そこには真っ青な顔をし、自らの口を両手で塞ぎながら立っている沙都子の姿があった。

308 名前:出先なので携帯から ◆Lrb7aHG4Ls [] 投稿日:2008/10/03(金) 02:18:25.87 ID:dqLtjE0wO

沙都子「ひ、ひ、人殺しぃ〜!!」

鉄平「わし じゃ ない!わし は やって ない!」

気が動転して口がスムーズに動かない。

沙都子「ではその手に持っている巨大な屶は何ですの!?どうして、どうして梨花を…」

確かにこの状況を目にして、誤解をするなと言うほうが難しい。


鉄平「な、屶は別の目的で使おうと思っただけじゃ!わしは人を殺してなどは…」

沙都子「ならこれは一体何ですの!?戸棚の前に落ちてましてよ!!」


沙都子そう言って私に差し出したのは、赤黒い染みのついた、悟史の金属バットだった。

311 名前:1 ◆Lrb7aHG4Ls [] 投稿日:2008/10/03(金) 02:27:57.40 ID:dqLtjE0wO

沙都子「このにーにーのバットは、圭一さんが失踪する直前に持ち歩いていた物。これに血がつき、しかもうちにあるという事は…」

鉄平「う…」

沙都子「どうしてこんな事を!?私が憎いから!?」

沙都子「今朝は作ったご飯を投げられた。昨日は一万秒風呂に入れと言われた。」

鉄平「ま、まて、ワシはそんな事は…」

沙都子「そして圭一さんを…梨花を………にーにーを…私の大切なものを片っ端から奪ってゆく。」

鉄平「な…に…を………」


沙都子「おまえなんか死んでしまえぇぇぇ〜!!」

鉄平「ひ、ひぃぃ!!」

314 名前:1 ◆Lrb7aHG4Ls [] 投稿日:2008/10/03(金) 02:35:35.00 ID:dqLtjE0wO

バットを振り上げた沙都子から、私は全速力で逃げた。

どうしたら逃げきれる。とにかく林の方へ逃げよう。

灰色の眼をした愛しい姪は、信じられないスピードで私を追う。

そしてとうとう、私は木の根につまづいて転び、沙都子に追い詰められた。


沙都子「さぁ、観念しなさい、この人でなし!!」

鉄平「ま、待ってくれ!沙都子、話を聞いてくれ!」

沙都子「この期に及んで命乞いですって…?お前はそうやって命乞いをした梨花を、圭一さんを…うわぁぁぁ!」

316 名前:1 ◆Lrb7aHG4Ls [] 投稿日:2008/10/03(金) 02:44:54.98 ID:dqLtjE0wO

私は、沙都子の鋭いスイングを間一髪で躱した。

鉄平「わしは確かにおまえにとっては悪い伯父だった。妻のいじめからも救ってやれず、一年間もほったらかした。ただの厄介ものだった。」

鉄平「だが、わしはおまえを憎いと思った事もなければ、おまえの不幸を願った事もない!」

鉄平「わしはずっとおまえの幸せを願い、おまえを守る事だけを考えてきた。選択肢を誤る事もあったが、それはほんまなんじゃ!」

沙都子「…言いたい事はそれだけか」

沙都子は再びバットを握りなおし、私の頭の前で構えた。

鉄平「たのむ沙都子。わしを………信…じ……て…………く……れ」


カキーン☆

318 名前:1 ◆Lrb7aHG4Ls [] 投稿日:2008/10/03(金) 02:50:11.21 ID:dqLtjE0wO

不愉快なほどの爽やかな音とともに、私の体は宙に浮いた。


遅れて頭に鈍く重い衝撃。

かすむ視界。

まわらない頭。

動かない手足。


呆然と立ちすくむ沙都子の姿にピントを合わせた私の視界は、みるみるうちに暗くなっていった。

376 名前:1 ◆Lrb7aHG4Ls [] 投稿日:2008/10/03(金) 16:19:45.71 ID:k62FaAqm0



「…じさま、鉄平おじさま!」

沙都…子?

「早く起きてくださいまし!お味噌汁が冷めてしまいますわ!」



「今日はさんまの塩焼きと、ブロッコリーの胡麻和えですわよ!」



「え、白いのはカリフラワー!?…?ど、どちらも食べてしまえば同じですわっ!」



「さ…やく・・・・らして・・・しあがって・・・まし」


…んなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…

380 名前:1 ◆Lrb7aHG4Ls [] 投稿日:2008/10/03(金) 16:25:32.09 ID:k62FaAqm0

…頭が痛む。

周囲は真っ暗だ。

そうだ、私は沙都子にバットで攻撃されて…


腕時計を見た。私が神社の境内で沙都子にあった時間から6時間…

足元には、凹んだ金属バットが転がっていた。


沙都子はどこへ…?

385 名前:1 ◆Lrb7aHG4Ls [] 投稿日:2008/10/03(金) 16:28:56.39 ID:k62FaAqm0

「…都子、沙都子…!」

私はうわ言のようにつぶやきながら林の中を歩き、外へ出た。


村が変に騒がしい。

いつもは殆ど聞こえない車のエンジン音、騒がしい人の声…。


おかしい。これはいつもの雛見沢村ではない。

386 名前:1 ◆Lrb7aHG4Ls [] 投稿日:2008/10/03(金) 16:37:03.20 ID:k62FaAqm0

まるで自衛隊が使うトラック。

室内に集められ、怯える人々。

得体の知れない機械から発射される謎の気体。

動かなくなる人々。


ー目の前で大量殺人が行われているー

そう理解するのに時間はかからなかった。


沙都子は…沙都子はまさかあの中に…!!

390 名前:1 ◆Lrb7aHG4Ls [] 投稿日:2008/10/03(金) 16:45:54.05 ID:k62FaAqm0

鉄平「うおおおおおおおっ!!」

山狗1「うわわわわわっ何だこいつ!」


ガッシ、ボカッ!

山狗1「ぎゃぁーーーー!!」

私は頭で考える前に奴らに飛び掛り、そのうちの一人をぶちのめした。


山狗2「な、何だこのチンピラは!!」

山狗3「く、こ、こいつ…強えぇ!!」


鉄平「沙都子はワシが守るんじゃぁ!!貴様等のようなワケのわからん連中に邪魔をさせてなるものかぁ!!」

392 名前:1 ◆Lrb7aHG4Ls [] 投稿日:2008/10/03(金) 16:51:30.03 ID:k62FaAqm0

山狗4「うぐわぁぁぁ!」

山狗5「ぐふぉぉぉぉ」

鉄平「沙都子っ…沙都子ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

くっ…倒しても倒してもキリがない。

ゴキブリのように次から次へとわいてきやがる!!


だが負けるものか!沙都子は私が守ー…


ドン!!


な…チャカ……だ…と…

???「くすくす…本当に威勢のいいチンピラさんだこと。でも少々オイタが過ぎたようねぇ。クスクス」

さ・・・・・と・・・・・・・・・・こ・・・・・・

???「今大切な計画を実行中だから、邪魔をされるとこまるのよねぇ。そこで眠っててくれないかしら。クスクスクス…」

396 名前:1 ◆Lrb7aHG4Ls [] 投稿日:2008/10/03(金) 16:56:41.68 ID:k62FaAqm0

沙都子よ。

ワシはいつから道を間違ったんだろうなぁ。

ワシはただ、ごく普通の叔父と姪として、お前を可愛がりたかっただけなんだ。

ワシは精一杯お前の声を聞き、守ろうとしたが、その気持ちは届かんかったようだのぉ。


沙都子。どうか奴らから逃げ延びてくれ。

どうか元気に生きてくれ。

お前の両親のぶんも。

おそらく生きてはいないであろう悟史のぶんも。

私が殺めてしまった圭一少年のぶんも。

最も信頼する友だった梨花のぶんも。

そして、誰よりもお前の幸せを願ったワシのぶんも。


どうか…どうか…生きてくれ。

402 名前:1 ◆Lrb7aHG4Ls [] 投稿日:2008/10/03(金) 17:06:49.83 ID:k62FaAqm0



鉄平「どうもどうも!あけましておめで…とぉうぁっ!!!」

ガン!!

鉄平「な、何故こんなところにタライが!?」

沙都子「をーっほっほっほ!!引っ掛りましたわねおじさま!こんな簡単なトラップに引っ掛るなんて、本当おじさまはとんだ甘ちゃん野郎ですわね!」

鉄平「さっ、さーとーこー!きさんの仕業かこのダラズが!!どーしてもこのわしのデコ☆ピンをくらいたいようじゃな!」

沙都子「きゃっ!おじさまに虐待されますわー!児童相談所に通報しますわよ!」

404 名前:1 ◆Lrb7aHG4Ls [] 投稿日:2008/10/03(金) 17:07:34.60 ID:k62FaAqm0

母「こらこら沙都子、おじさまに失礼はダメでしょ!ほら、悟史も挨拶なさい!」

悟史「こんにちわおじさん。」

鉄平「おう悟史!野球を始めたらしいの!後でワシとキャッチボールでもするか!」

悟史「え、おじさん野球できるんですか?」

鉄平「何を言っとるか!県立大島の一番ショート、韋駄天の鉄とはワシの事じゃ!甲子園にも出たぞ!」

悟史「ほ、本当に!?是非僕にバッティングを教えてください!!」

沙都子「こらーっ!わたくしを無視しないで下さいまし!!」

鉄平「やれやれ、相変わらずやかましい奴じゃ、ほれ。」


沙都子「…え?」

鉄平「お年玉じゃ。あけましておめでとう、今年もよろしくの、沙都子。」

407 名前:1 ◆Lrb7aHG4Ls [] 投稿日:2008/10/03(金) 17:11:26.98 ID:k62FaAqm0



・・・

・・・・・・・

山狗「ねぇ三佐。」

??「なに?」

山狗「このチンピラの死体、どうします?」

??「そうねぇ…外傷があるから大災害の被害者にもできないし…」

??「本当始末に困るわねぇ。」

山狗「しかしやけに幸せそうな顔をして死んでますね。」

??「クスクス…本当、気味が悪いわね。鬼ヶ淵沼に捨ててしまいなさい。クスクス…」


            ______完______

408 名前:1 ◆Lrb7aHG4Ls [] 投稿日:2008/10/03(金) 17:13:07.64 ID:k62FaAqm0

これにて完結になります。今まで保守してくれたかた、楽しんでくれたかた、ありがとうございましたm(_ _)m

設定など突っ込みどころ満載かと思いますが、少しでも楽しんでもらえていたら嬉しいです。



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