古手梨花の決意


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5 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/28(木) 22:50:19.85 ID:aeLFUgPc0

隔離室で大石さんの話を聞いていた俺達は、一息いれるために
一階の自販機がある休憩所にきていた。
大石さんは用事があるらしくていないから俺達だけだ。
大石さんから色々なことを聞いたが、あまりにも衝撃的なことが多かった。
俺達はじいさんばあさんになる前に死に、沙都子は数日後には俺達のことなんか忘れて暴走する。
本当の雛見沢症候群の姿を知ってしまった…。

6 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/28(木) 22:53:09.77 ID:aeLFUgPc0

梨花「圭一、どうしたのですか。さっきから暗いのですよ?」

圭一「…なんでもないよ。ちょっと考え事をな」

梨花「そうですか」

圭一「ああ」

梨花「…」


圭一「…梨花ちゃんはショックじゃなかったか?
   俺達がじいさんになったら熱だして死んじまうなんて聞いて」

梨花「…圭一、それはしょうがないことなのです。普通のひとよりちょっとだけ、
   生きられる時間が短くなっただけなのです」

圭一「そりゃあわかってるんだけど、不安で…」

9 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/28(木) 22:58:21.94 ID:aeLFUgPc0

梨花「圭一、前にボクに話してくれましたよね。
   能力のおかげで女の子を救えたって。
   もし能力がなかったら、雛見沢症候群にかかってなかったら、
   女の子どころか圭一も死んでいたのですよ」

圭一「…」

梨花「能力があったからこそ今、圭一はここにいます」

圭一「…そうだな。あのとき俺は一回死んだ。
   だけど能力のお陰でこうして生きてる。それで十分だな」

梨花「そうなのですよ。それに圭一にはおじいさんは似合わないのです。
   若くてかっこいい圭一のままボクが最後を看取ってあげますです」

圭一「はは。ありがとよ梨花ちゃん」

10 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/28(木) 23:02:14.89 ID:aeLFUgPc0

レナ「圭一くん、梨花ちゃん。大石さんが準備できたから話の続きをするってさ」

圭一「おおどこ行ってたんだよ心配したんだぜ?サンキューレナ」

レナ「ごめんごめん。じゃあさっきのお部屋へ行こうか」

俺達はもう一度さっきまでいた隔離室へと向かう。


扉を開け中を覗くと大石はもう部屋の中で待っていた。
そしてもう一人意外な人物がいた。


圭一「い、入江先生?」

レナ「監督!」

11 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/28(木) 23:06:53.18 ID:aeLFUgPc0

入江「どうも。レナちゃんに梨花ちゃん、
お久しぶりです。前原君、お元気でしたか?」

大石「あなたたちが署に来たときに呼んでおいたんですよ。入江先生もいらっしゃった
   ほうが話がわかりやすいんでね」


ふたたび大石が電話でこの部屋を隔離してもらうと、
周りの音が遮断された。


大石「さぁ〜て、どこまで話しましたっけか…」

圭一「雛見沢症候群のことと、
沙都子が末期症状であることはわかりました」


大石「じゃあ沙都子ちゃん達を拉致したことについてですね。
   こいつがちょーっとややこしいんでよぉーく聞いていてくださいよぉ」

13 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/28(木) 23:10:57.11 ID:aeLFUgPc0

大石は再度メモ帖を取り出す。
それを開きながら俺達に語りかける。

大石「さきほど説明したように沙都子ちゃんと鉄平をさらったのは"東京"機関です。
   なぜなら東京はL4を発見次第早急に保護しないといけないからです」

圭一「じゃあL4になった沙都子は東京に匿われていて、どこかで治療中なんですね?」

大石「ええ。実はここにいる入江先生が沙都子ちゃんと北条鉄平を保護していたんです。
   彼も東京の人間ですからね」

圭一「入江先生も東京の人だったんですか!?
   それで、沙都子は無事なんですか!?」

俺が質問すると入江先生は急に苦い顔をしてうつむく。


圭一「入江先生?」

入江「…沙都子ちゃんと叔父さんは私の診療所の地下で保護していました。
   ですが、お二人は拉致されてしまったんです」

15 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/28(木) 23:14:01.96 ID:aeLFUgPc0

圭一「ええ!?ちょ、ちょっと待ってください。まず、沙都子達が行方不明になったって
   入江先生が警察に電話しましたよね?…あれがそのことだったんですか!?」

入江「あのときは既に私達が沙都子ちゃんと叔父さんを保護していました。
   当初の予定としてはお二人が行方不明ということにしておいて、
   病状によって今後どうしようか考えていたんですが…」

レナ「一度は二人を保護したけど、拉致されたってことかな、かな」

入江「…その通りです」

圭一「な、なにやってんだよ!沙都子はもうすぐ暴走するんだろ!」

入江「本当に申し訳ない!まさか拉致されるとは思わず!…」

16 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/28(木) 23:15:54.14 ID:aeLFUgPc0

大石「まぁまぁ…今回は入江先生を攻めてもしかたない部分が大きいんですよ」

圭一「え、どいうことですか」

大石「ええ。じつは拉致した犯人の見当はついています。というか、
   彼女じゃないと拉致などできないんですよね」

圭一「彼女…?」


入江「鷹野、三四さんです」

19 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/28(木) 23:20:04.86 ID:aeLFUgPc0

圭一「鷹野さん…たしか入江診療所の看護婦だっけか」

入江「はい。普段は診療所の看護婦をやってもらっているのですが、
   彼女も東京に属する人間です」

圭一「ちょっと待ってください、
   入江先生は東京の人なんですよね?東京は俺達能力者を保護・監視する機関で、
   今回は沙都子が末期症状になったから沙都子と叔父を入江診療所の地下に保護した。
   だけど、同じ東京の人間である鷹野さんはその二人を拉致した…そういうことですか?」

入江「はい…おっしゃるとおりです。診療所の地下は警備が厳重でして、
   実質私と鷹野さんしかは入れないんです」

20 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/28(木) 23:25:37.96 ID:aeLFUgPc0

圭一「な、なんで鷹野さんは拉致なんかしたんです?

入江「…最近彼女はどこか様子が変だった。私に隠してなにか事を進めているような…
   そして昨日ファックスからこれをみつけたんです」

圭一「なんですかこれ…能力者利用計画?」

その紙にはそう題名がつけられていた。あとは字の羅列が並ぶ。

入江「じっくり読んでいただければわかるのですが、
   ここに書かれていることを大雑把に言うと、
   彼女は雛見沢症候群患者を軍事、政治的に利用するつもりです」

21 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/28(木) 23:29:00.80 ID:aeLFUgPc0

圭一「利用、ですか」

入江「ええ。そのために沙都子ちゃんと叔父を行方不明扱いをいい事に、
   …その、研究すると」

レナ「つまり沙都子ちゃん達はこのままだとモルモットにされるんですね」

入江「…はい、そうです」

圭一「はぁ!?そんな馬鹿な!!」

梨花「そんな…」


圭一「うそだろ…。それじゃあ、はやく鷹野から沙都子を取り返さないと!
   今沙都子はどこにいるんですか!?」

22 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/28(木) 23:32:55.18 ID:aeLFUgPc0

入江「すいません、大体の見当はついているんですが、まだ確定してはいないので…」

圭一「いいからその見当のついたところを教えてください!
   沙都子を取り返すんです!」

大石「落ち着いてください前原さん。
   あなただけで行ったって何も出来やしない」

圭一「俺の能力があれば鷹野さんくらいなんてことないです!」

入江「いいえ、鷹野さんだけじゃあないんです。
   彼女は自分で雇った"山狗"という部隊に守られています」

大石「そしてその部隊は入江先生の話によると戦闘に長けている方々もいるようで」

24 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/28(木) 23:37:06.58 ID:aeLFUgPc0

入江「はい。その部隊のうち、何人かは、L3…
   スタンドを出現させることができるんです」

圭一「隊員が、L3?」

入江「ええ。どうやら鷹野さんは早速軍事的に雛見沢症候群を利用しているようです。
   自分の部隊の隊員に能力を出現させることに成功しています」

圭一「鷹野め…なんてやつだよ」

大石「そういうわけなんですよ。だからいくらあなたが戦闘に自信があったとしても、
   一人じゃあちらには適わないってわけです」

圭一「くそっ…」

梨花「…」


大石「だから、みんなで攻めるんです」

25 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/28(木) 23:40:01.81 ID:aeLFUgPc0

圭一「…みんな?」

大石「何分あっちは部隊出身であり能力者なんでねぇ…
   一般人であり健常者である警察には手に負えないんですよ。
   既に鷹野三四の調査に派遣させた警察官の何人かが行方不明になりました。
   きっと山狗にやられたんでしょうなぁ」

圭一「だから、能力者である俺達が行くってことですか?」

大石「危険なのはわかっていますがね…
   現在警察の中でも能力者や手練の者を集めています。難航してますが」

圭一「…つまり目には目を、能力者には能力者を…ですか?」

27 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/28(木) 23:44:23.82 ID:aeLFUgPc0

大石「そうです。それに鷹野三四をとっちめなきゃいけないのは、
   沙都子ちゃんの件や能力者利用計画だけじゃないんですよねぇ…」

入江「ど、どういうことですか」


大石「雛見沢連続怪死事件…ご存知ですか」

圭一「連続…怪死?い、いえ知りません」

大石「毎年雛見沢村でおこる殺人事件です」

28 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/28(木) 23:47:20.41 ID:aeLFUgPc0

圭一「ええ!?…毎年ってことはもう何年も続いてるんですか?」

大石「ええ。今から四年前、雛見沢ダム計画の現場監督が殺されたのが最初で、
   そこから毎年のように誰かが死んでいます」

圭一「詳しく聞かせてもらっていいですか」

梨花「圭一…」


大石「ええ。一年目はダム工事現場監督が他の工員によって殺されました。
   あ、ダム工事のことはご存知ですか?」

圭一「はい。雛見沢村全部が水没するようなダムをつくる計画だったんですよね」

30 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/28(木) 23:50:49.20 ID:aeLFUgPc0

大石「そうです。ちなみにここから毎年の被害者は全員ダム計画に関係しているんです。
   二年目の被害者は、沙都子ちゃんの両親です。
   白川自然公園内の崖に運悪く二人とも転落してしまったと言われています」

圭一「それは知っています。ですが、
   沙都子の両親はダム計画とどう関係があるんですか」

大石「北条夫妻は村人のなかでは数少ないダム推進派だったんですよ」

圭一「そうだったんですか…村人はみんな反対してると思ってました」

大石「それで、三年目なんですが…その…」

梨花「もう圭一には話してあるのです。だから大丈夫です」

大石「わかりました。三年目は古手夫妻が被害にあいました。
   旦那さんが病死、奥様は沼に飛び込んで自殺ということになっています。
   遺体は見つかっていませんがね」

31 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/28(木) 23:53:07.38 ID:aeLFUgPc0

梨花「ボクの両親はダムの工事のことに真剣にならなかったのです。
   その日和見な態度がみんな気に入らなかったみたいなのです」

圭一「そうだったのか」

大石「そして四年目、つまり去年です。
   北条沙都子の叔母、つまり鉄平の妻が撲殺されています」

圭一「連続して四年も…今年は、まだ起きていないんですよね?」

大石「そりゃあまだですよ。
   これら怪死事件は毎年必ず綿流しの祭りの日に起こるんですから」

32 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/28(木) 23:54:07.37 ID:aeLFUgPc0

圭一「綿流し祭りって、たしか三日後の…」

梨花「古手神社で行われる祭りなのです」

大石「ええ。今年はどうなることやら…」

33 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/28(木) 23:56:52.00 ID:aeLFUgPc0

圭一「それで、その連続怪死事件と鷹野さんがどう関係あるんですか。
   鷹野さんが犯人だとでも言うんですか」

大石「…その、まさかだったらどうします?んっふっふっふ」


梨花「!?
   ほ、本当なの!?」


入江「いえ、犯人というわけではないんです。
   ただ、彼女が関わっていることは確かです」

34 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/28(木) 23:58:46.16 ID:aeLFUgPc0

圭一「入江先生…どういうことです」

入江「実は…鷹野さんは数年前から人体実験による雛見沢症候群の研究をしていたようなんです」

圭一「じ、人体実験!?」

入江「それで、研究の材…サンプルを手に入れるために
   雛見沢連続怪死事件を利用したんです」

圭一「利用、ですか?」

35 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/29(金) 00:00:17.67 ID:RPVzknXN0

入江「はい。一年目の事件、あれは鷹野さんが直接手を下したわけではありません。
   あれは現場監督さんの横暴な態度に他の工員の方達が痺れを切らし、
   監督さんを殺してしまった、というのが真相です。
   ですが、その工員さんたちの一人に重度のストレスでL5を発症してしまった人がいたんです。
   その人は被害が出る前に山狗によって射殺されました。
   そしてその人の遺体は東京に渡る予定でしたが、…鷹野さんが横領したんです」


圭一「横領?遺体をですか?」

入江「ええ。自分の研究に使うために…
   そこから鷹野さんは研究のためなら人殺しも已む無い、という風になってしまいました。
   二年目、三年目の事件は鷹野さんに命令された山狗の仕業です」

梨花「じゃあ、沙都子の両親やボクの親を殺したのは…」

圭一「…山狗です」

梨花「…」

36 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/29(金) 00:02:35.95 ID:RPVzknXN0

圭一「な、なんのために!?」

入江「沙都子や梨花ちゃんの両親は鷹野さんの研究に使われたんです」

圭一「う、うそだろ…」

入江「事実なんです。…私も実験に立ち会っていましたから」

圭一「入江先生も!?なんでそんな研究を!」

37 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/29(金) 00:04:21.95 ID:RPVzknXN0

入江「責任逃れするつもりはありませんが…
   私は、その被験者の方々が不幸な事故により亡くなった方たちと鷹野さんから聞いていたんです。
   最近鷹野さんのことを調べるうちに、あの方たちは…
   沙都子ちゃんや梨花ちゃんの両親だったとわかったんです」

圭一「そうだったんですか…でも!」

入江「はい、私も同罪ですね…梨花ちゃん、私はあなたのご両親を…」

入江先生は梨花ちゃんにむかって頭を下げた。


梨花「入江は悪くないのです。あたまをあげてください」

入江「…ありがとうございます」

38 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/29(金) 00:10:42.18 ID:RPVzknXN0

圭一「…それで、四年目の撲殺事件も鷹野さんがかかわっているんですか?」

入江「いえ、四年目だけは鷹野さんの手で起こしたものではありません。
   あれは…仕方なかったのかもしれません」

圭一「たしか、沙都子の叔母が撲殺されたんですよね」

入江「ええ。あれは、沙都子ちゃんのお兄さん…悟史君がやったんです。
   自分の意思で」


レナ「やっぱり、悟史くんだったんだ…」

40 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/29(金) 00:13:53.13 ID:RPVzknXN0

圭一「悟史が…?何故ですか」

レナ「そのときは沙都子ちゃんと悟史くんと鉄平と叔母の四人で暮らしていたんだよ。
   前話したよね?沙都子ちゃんの叔母も虐待が酷くて
   悟史くんが沙都子ちゃんを虐待からかばっていたって」

圭一「それで悟史は虐待に耐えかね叔母を撲殺したってのか?」

入江「はい…本当はそんなことする子ではなかったんですが…
   彼もL5を発症してしまったんです。
   そして叔母を殺したすぐに山狗に保護されました」

42 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/29(金) 00:15:10.57 ID:RPVzknXN0

圭一「保護ってことは、悟史はまだ生きているんですか?」

入江「ええ。しかし、生きているというより"生かされてる"と言ったほうが正しいでしょう」

圭一「も、もしかして鷹野さんが?」

入江「ええ。彼は鷹野さんの研究に使われています。
   ずっと眠ったままではありますが…」

圭一「そんな…」

43 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/29(金) 00:16:43.36 ID:RPVzknXN0

梨花「…入江、今年の綿流しのことはわかっているのですか?
   鷹野がなにをするか」


おとなしく話を聞いていた梨花ちゃんがいきなり入江先生に問いかけた。


入江「今年ですか?それはわかりませんが、もしこのままであれば
   沙都子ちゃん達がいるので誰かを攫ったりはしないともいますが」

梨花「そう…」

44 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/29(金) 00:18:11.37 ID:RPVzknXN0

大石「今聞いてもらったとおりです。
   沙都子ちゃん拉致の件だけじゃなくて連続怪死事件の事でも
   私達は鷹野達をひっとらえなけりゃあならない。
   ですが、あいにくと警察だけじゃ奴らには敵わない。
   そこで、あなたたちに協力してほしいんです」

圭一「そうですか…」

俺、レナそして梨花ちゃんは顔を見合わせ、みんな頷く。

圭一「俺達も協力させてください。沙都子を取り返したいんです」

大石「ご協力、感謝します」

大石は座ったまま俺達に頭を下げた。

45 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/29(金) 00:18:58.38 ID:RPVzknXN0

圭一「それで、具体的にはどうするんですか」

大石「そうですねぇ…沙都子ちゃんと鉄平を取り返して、
   鷹野達を逮捕できれば一番いいですねぇ」

圭一「あの、何故今逮捕できないんですか?
   そこまでわかっているなら逮捕できるのでは?」

大石「まず確かな証拠がないですし、
   それにこれはほとんど私が個人的に捜査している事件でしてね。
   直接乗り込んででっかい証拠を掴んでやろうと思ってるんですよ」

入江「あそこは入江診療所とは名ばかりで
   実質鷹野さんが仕切っているようなものでして、
   私には立ち入れないところなどが多いんですよ。
   ですから私では大きな証拠をみつけられません」

46 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/29(金) 00:21:14.49 ID:RPVzknXN0

圭一「わかりました。それで、いつ攻めるんですか」

大石「…今の戦力で攻めても返り討ちにされるだけです。
   もっと絶好の機会に行こうと思っていますよ」

47 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/29(金) 00:23:50.45 ID:RPVzknXN0

圭一「あ、そういえば今日は来てないんですが、
   魅音がきっと協力してくれますよ!あいつがきてくれれば
   大きな戦力になります!」

大石「ダメです。園崎魅音さんには今日話したことは
   決して言わないでください」

圭一「え?な、なんでですか」


大石「園崎家と鷹野は協力関係にあるようなんです。園崎から鷹野へ資金援助したり、
   あと、緊急時は園崎家が用心棒となるそうです」

48 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/29(金) 00:26:30.11 ID:RPVzknXN0

圭一「そんな…園崎家は鷹野がひどい事をやってるのを知ってるんですか!?」

大石「ええ。園崎も鷹野三四の計画に一枚かんでいるようでしてね。
   それと園崎は能力者による武力支配をたくらんでいる節がありましてね
   鷹野に能力者の研究をさせるため莫大な資金を提供しているのも掴みました」

魅音が鷹野さんの味方?うそだろ…

大石「とにかく、山狗率いる鷹野だけでも手強いのに、
   そこに園崎家にまで出てきてもらっちゃあ面倒です。
ですから絶対魅音さんには今回のことは黙っていてくださいね」

圭一「…わかりました」

49 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/29(金) 00:28:42.59 ID:RPVzknXN0

大石「さて、そろそろ時間ですね。鷹野達を攻めるタイミングはこちらで計りますので
   私が連絡をいれるまではおとなしくしててくださいよぉ?
   くれぐれも一人で討ち入りとかはダメですよ。特に前原さん?」

圭一「わかってます」

大石「よろしい。今同志を集めているんでね、
   楽しみにしててください。んっふっふっふ」

入江「私のほうも仲間になってくれそうな人が一人いるので、
   機会をみて話してみます」

圭一「それじゃあ失礼します」

俺達三人は隔離室を後にした。

52 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/29(金) 00:30:28.10 ID:RPVzknXN0

雛見沢への帰り道、俺達は今日聞いた色々なことが信じられなくて
皆押し黙っている。そんなとき梨花ちゃんから合図を受け取った。

レナ「圭一くんに梨花ちゃん、じゃあね。また明日」

梨花「レナ、さよならなのです」

圭一「おう!また明日なレナ……行ったか。
   それで、なんか用かい梨花ちゃん」

梨花「圭一と今から二人っきりの内緒話なのです、にぱー」

圭一「もう内緒話は勘弁してほしいんだけどなぁ…わかったよ」

梨花「それじゃあここではなんなので神社へ行きましょう」


レナと別れると俺達二人は古手神社へと向かった。

54 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/29(金) 00:32:52.23 ID:RPVzknXN0

夕方の神社はとても涼しく居心地がいい場所だった。
しばらく涼んでいると、ふいに梨花ちゃんが話し出した。


梨花「ボクは、綿流し祭の数日後、殺されます」

圭一「……え?」


梨花ちゃんが、殺される?

55 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/29(金) 00:35:05.62 ID:RPVzknXN0

梨花「ボクはいつも必ず…祭りの数日後に殺されるのです」

圭一「必ずって、どういうことだ?未来が、わかるとか?」

梨花「ボクは死ぬ直前に"60日だけ時間を戻す"能力で
   二ヶ月前に遡っているんです。
   そしてボクを殺す奴を見つけるまでこの二ヶ月を繰り返すつもりです」

圭一「それ、ホントなのか…?」

梨花「はい。ボクは今回で20回繰り返しています。
   …ですがまだ犯人はわかりません。手がかりすら」

56 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/29(金) 00:36:24.67 ID:RPVzknXN0

梨花「でも、今日大石達に話を聞いて、一人思い当たったんです」


圭一「…もしかして、鷹野さん?なんでだ」

梨花「はい。もしかしたらボクを実験の材料にするために…
   ぼくのような時間を操る能力は非常に珍しいと入江は言っていました。」

圭一「そうか。たしかに、梨花ちゃんみたいな能力は初めて聞いた。
   …それは十分考えられる」

梨花「はい…今回で鷹野を捕らえて、
   この繰り返しの日々を終わらせたいのです」

58 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/29(金) 00:38:06.78 ID:RPVzknXN0

圭一「…そうだな。鷹野さんをとっちめて、
   沙都子を返してもらって、そしてまたいつもの俺達に戻るんだ」

梨花「はい!」

圭一「そんじゃ!梨花ちゃんのためにも鷹野攻略は頑張らないとな!」


梨花「…圭一が雛見沢に来てくれなかったら、
   ボクはこれからずっと繰り返しの日々を生きていたかもしれません…
   ありがとう、圭一」


圭一「ん?なんか言ったかい」

梨花「なんでもないのです、にぱー☆」

60 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/29(金) 00:40:32.23 ID:RPVzknXN0

TIPS−園崎家と鷹野


魅音「お、鷹野さんいらっしゃい!暑い中ごくろうさんだねぇ」

鷹野「こんにちわ魅音ちゃん。
   あいかわらず大きいお家ねぇ…お邪魔するわね」

魅音「はいよ。じゃあ沁子さん、案内よろしくね」

沁子「かしこまりました。さ、ご案内します」

61 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/29(金) 00:41:46.52 ID:RPVzknXN0

鷹野が案内された先は、園崎家が本家で話し合いをするための部屋だった。
もちろん能力により外部に情報がもれることはないよう配慮されている。
部屋にはすでに園崎家党首、お魎が待っていた。


鷹野「あらあらお魎さん、今日もお変わりなくお元気そうで」

お魎「けっけっけ、まんだ気力だきゃ若いもんにゃ負けんわ」


しばらく鷹野、お魎ふたりで談笑していると魅音が駆け足でやってきた。


魅音「遅れちゃってごめんなさい!」

鷹野「いいのよ。…それじゃあ早速報告させてもらいますわ」

62 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/29(金) 00:43:37.28 ID:RPVzknXN0

鷹野、お魎そして魅音の三人が集まったところで、鷹野は報告を始めた。


鷹野「まず、先日L4を発症したと思しき患者は無事、私達が保護しました。
   その患者の叔父と思われる男性も保護しましたが重症です」

魅音「そうですか。それで、これから二人は?」

鷹野「できればサンプルとして研究したいわねぇ。
   L4患者はめったに現れないのよね」

魅音「鷹野さん」

鷹野「冗談よ。山狗から東京に連絡したわ」

63 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/29(金) 00:44:23.22 ID:RPVzknXN0

魅音「そうですか…」

お魎「よくやったわい。
   そのまんま放置しとったら大変なことんになっとった」

鷹野「ありがとうございます」


鷹野「それと…これは内輪のことなのですが、
   最近入江所長がなにやら不審な動きをしているようなんです」

魅音「不審な動きといいますと?」

65 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/29(金) 00:47:17.64 ID:RPVzknXN0

鷹野「診療所内の私の私室に無断で入ったり、
   最近では地下の研究所へ研究が終わった後に
   一人で頻繁に足を運んでいるようで」

魅音「へぇ…あの入江先生がねぇ」

鷹野「ええ。入江先生のことだし、
   単なる知的好奇心だと思うけどねぇ」


魅音「…そういえば、前に警察署に入江先生の車が停まっていたけど、
   あれはなんだったんだろう」

鷹野「本当?変ねぇ。入江先生が警察のお世話になることなんて
   無いと思うのだけれど」


お魎「…用心しといたほうがええみたいやなぁ…」

66 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/29(金) 00:49:33.66 ID:RPVzknXN0

その後鷹野からの報告は終わりしばらく三人はとりとめのない話をしていた。

お魎「お…。お茶のうなってまったで魅音、たのむ」

魅音「はいよ、お茶ね。ちょいまってて」

魅音は空になった急須を手にして部屋を出て行く。

鷹野「ほんとに魅音ちゃんは良い子ねぇ。かいがいしいわ」

お魎「なにいっとんね、まだまだガキやわ」

67 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/29(金) 00:52:07.51 ID:RPVzknXN0

鷹野「あんなに良い子だと、
   あの子の友達達に沙都子ちゃんのことを話しちゃわないかしら」

お魎「ああ、それなら心配いらん。
   わしのスタンドでちゃーんと"書き込んでおいた"」

鷹野「あらあら実の孫に?」

お魎「あいつがしゃべっちゃいけんことは喋れんようにな」

鷹野「あらあら、お魎さんったら」

お魎「けっけっけっけ」


TIPS−終

69 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/29(金) 00:53:12.00 ID:RPVzknXN0

TIPS-富竹の調査


富竹は以前の竜宮レナと見知らぬ女との戦いの時の、
レナの能力の調査にゴミ捨て場へ来ていた。

もしレナの能力がL3もしくはL4になっているとしたら
至急東京へ連絡しなければならないからだ。
そのために鷹野から山狗の調査員を借りてきた。

富竹「それじゃ、よろしく頼むよ」

雲雀3「了解です。場所はどの辺りですか」

富竹「えーっと、ここらへんだったな」

雲雀3「わかりました。富竹二佐は離れていてください」

70 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/29(金) 00:54:16.40 ID:RPVzknXN0

そう言うと彼はフッ、とスタンドを出現させた。
全身をラバースーツのようなもので覆っていて、
額にデジタルの時計のようなカウンターを持ったスタンドだ。

額のカウンターがカシャカシャと動き出す。不意にスタンドは動き出した。
そのスタンドはだんだん姿を変え、竜宮レナそっくりになった。

さらに額のカウンターはビデオデッキのデジタル表示のように動き
それに伴って竜宮レナそっくりのスタンドが、
ちょうどビデオの巻き戻しをみているかのように次々と変化していく。


富竹「いやぁ、いつみても君のスタンドはすごいねぇ。
   "過去の出来事をリプレイできる"スタンドかぁ」

72 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/29(金) 00:56:42.68 ID:RPVzknXN0

雲雀3「私のムーディー・ブルースをお褒めいただいて光栄です」

富竹「え?む、むーでぃ…、もしかして…このスタンドの名前かい?」

雲雀3「ええ。最近部隊で自分のスタンドに名前を付けるのが流行ってるんですよ。
   それで私のスタンドはムーディー・ブルースです。
   …よろしければ富竹二佐のスタンドにも私が名前をつけましょうか?」

富竹「い、いやぁ僕はいいかな!」

73 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/29(金) 00:59:51.72 ID:RPVzknXN0

雲雀3「そんな遠慮なさらず。
   私の名前のセンスは他の隊員からも評価されているんですよ」

富竹「…じゃあ僕のスタンドはどんな名前がいいかな」

雲雀3「そうですねぇ…二佐のスタンドの能力を考慮して…
   セックス・ピストルズ、なんてどうです?」

富竹「セッ!?そりゃあいくらなんでも卑猥すぎないかい。
   もうちょっと他の…」

74 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/29(金) 01:00:59.74 ID:RPVzknXN0

雲雀3「そうですか?自分はとてもいい名前だと思いますが…
   あ、"巻き戻し"が終わりました」

富竹「ああ、ここだ。レナちゃんが氷で滑ったところを女が氷弾を飛ばして、
   避けられないはずだったのにいつの間にかレナちゃんは
   女の目の前のところにいたんだ」

雲雀3「それじゃあここからスローで再生します」

75 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/29(金) 01:03:28.94 ID:RPVzknXN0

レナに"氷の爪"弾があたる直前からスロー再生される。
レナは迫る氷の爪に身じろぎもしない。そして次の瞬間、

富竹「…これでも見えないのか」

一瞬のうちにレナは女の目の前と思しき場所まで移動していた。
スロー再生でもレナが移動している瞬間は見えなかった。


富竹「もっとスローにできるかい?」

雲雀3「限界までスローで再生してみますか」

富竹「ああ、頼むよ」

77 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/29(金) 01:06:00.05 ID:RPVzknXN0

雲雀3「ダメです。今のがムーディー・ブルースの最もスローな再生速度でしたが…」

富竹「ダメか…。どう見てもレナちゃんがその場で消えて、
   女の目の前に現れているようにしか…
   ん、待てよ…そうか、テレポート能力か」

雲雀3「いえ、私もそう思ったんですけど…
   二佐、これを見てください」

富竹「ここは、レナちゃんが切り伏せられる直前の
   二度目の瞬間移動をおこなったところ…
   そうか、このときは消えたと同時に包丁で女を刺していたんだ」

78 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/29(金) 01:08:08.82 ID:RPVzknXN0

雲雀3「見てください。包丁を刺す動きすらありません。
竜宮レナが消え、現れた瞬間に既に包丁を女の背中に差し込んでいます」

富竹「これは…たしかにテレポートでは説明できないか…」

雲雀3「ええ、刺すシーンが全く無いなんておかしいです」

富竹「ふーむ…テレポートではないか…」

雲雀3「それに、これはスタンドを使っている私だからわかるんですが…」

79 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/29(金) 01:10:20.27 ID:RPVzknXN0

富竹「ん、なんだい?」

雲雀3「この、例えばさっきの転倒した場所から女の目の前に移動するところですが、
   転倒した場所から、女の前までの地点にいた時間が存在しないんです」

富竹「時間が…存在しない」

雲雀3「はい。つまり、この少女のスタンドの能力は…」

80 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/29(金) 01:11:39.15 ID:RPVzknXN0

富竹「まさか、時間を止める、とでも?」

雲雀3「はい。とても珍しい時間系の能力者です。
   それも時間をとめている間自分だけ動いている。これはすごい能力ですよ」


富竹「これは…とりあえず東京に連絡しておこう」

雲雀3「名前は、ザ・ワールドなんてどうでしょう」

富竹「…」


TIPS−終

81 名前: ◆7LsipGI0Aw [] 投稿日:2008/08/29(金) 01:12:41.85 ID:RPVzknXN0

古手梨花の決意・終

ここまで見てくださった方、支援してくださった方。
ほんとうにありがとうございました。あなたが神か



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