長門「猫拾った」


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5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 13:14:51.25 ID:6Jsj1Ac90

長門が俺の家にきた理由は些細なことだった。

今日は誰の目にもはっきりわかるくらい天気が悪く今にも雨が降り出しそうだったので、

今回は長門の家にも俺の家にも寄らないでお互い自分の家にまっすぐ帰ろう、

ということになったのだ。長門はとても残念そうにしていたな。

この表情の変化は俺にしかわからんだろう。長門の表情読み取り検定なるものがあれば

ぶっち切りの成績を収める自信がある。

本当のところは、長門が雨でずぶぬれになって

風邪を引いてしまうのでは、と心配になったからだ。

・・・まぁ長門が病気になるところなど想像できんが。

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 13:18:19.91 ID:6Jsj1Ac90

というわけで、一人で帰ってきた次第である。

案の定、俺が玄関を跨いだ途端、激しく雨が降ってきた。

急いで部屋に逃げ込み一息つくと

「あ!キョン君お帰り〜」

我が妹のお出ましだ。

「おう、ただいま」

「おかーさーん、キョン君帰ってきたー!」

「そう?キョン、お風呂沸いてるから先に入りなさい」

母親にもあだ名で呼ばれるとはこれ如何に。すでにあきらめているが。

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 13:22:36.14 ID:6Jsj1Ac90

一言返事をし、風呂場へ向かおうとしたところで、

玄関のチャイムが鳴った。

ピンポーン。

「あら誰かしら?ちょっと出てくれる?」

「あいよー」

玄関のドアを開けてみると、雨が降っているにもかかわらず傘をささずに

白いかたまりを抱えた長門が立っていた。言わなくてもわかるだろうが、

全身びしょ濡れである。そんな長門の開口一番が、

「猫拾った」

である。

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 13:26:53.19 ID:6Jsj1Ac90

「ぷいにゅ」

不思議な鳴き声の猫だ。喋るシャミセンと比べても色々負けないかもしれない。

とりあえず家の中に入れ、先に風呂に入るようにうながした。

母親には話はつけた。やたらとニヤニヤされたが。

俺が猫らしき物を受け取ろうとしたら、

「この猫は泥で汚れている。一緒に入る」

なんともウラヤマシイ奴め、なんて微塵も思っちゃいないぞ。

「あなたも一緒に入る?」

いや、いい。こらそこ、なんてもったいないことをとか言うな。

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 13:32:19.81 ID:6Jsj1Ac90

「それより、寒くないのか。早く行ってこいよ。」

「大丈夫。私もこの子も、体温が奪われないような処置を施している」

「そうか」

具体的に聞いても、俺にはさっぱり解りそうになかったので、返事だけしておいた。

それを察したのか、一つ頷くと迷わず真っ直ぐ風呂場に向かった。

やはり何度も来ているからか、我が家にも慣れてきているようだ。

それにしても長門が猫を拾ってくるとは。

あいつにも人間らしい心が芽生えてきたのかね。

「あれ、ユキちゃんお風呂入るの?じゃあわたしも入る〜!」

ぽんぽんぽーん

こら、脱いだ物を散らかすんじゃありません。

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 13:37:40.12 ID:6Jsj1Ac90

しばらく時間をつぶすため、面白みのないテレビ番組を見ていると、

ばたばたばた

どたどたどた

「こらー!待て!もちもち!」

おいしそうな名前だ。そして妹よ、裸で走りまわるのはやめなさい。

「捕まえた!さぁ、乾かしましょうね〜」

「ぷいにゅ〜〜〜〜!!!」

悲痛な叫びを上げ、あわれもちもちはとらわれの身となり、妹に連れさらわれてしまった。

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 13:41:57.72 ID:6Jsj1Ac90

それと入れ替わるように、俺の貸してやった服を着た長門が出てきた。

「もういいのか?」

「・・・こく」

「じゃあ、俺も入ってくるかな」

くい・・・

立ち上がろうとしたら、袖を引かれ止められた。どうした?

「後で、二人で話がしたい」

「大事な話か?わかった」

側で母親と妹がニヤニヤしていたが無視しよう。

入浴の準備をし、風呂場に向かった。

そこにはこれでもかと言うくらい白い毛が散乱していた。

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 13:44:13.26 ID:6Jsj1Ac90

「は〜いもちもち、ドライヤーで乾かしますよ〜」

ぶおーーー

「びくっ」

すささ・・・・・・

「こ〜ら、逃げないの!」

・・・・・・じー

「ん〜?」

ぶおー

「びくんっ」

すささ・・・・・・

・・・・・・じー

「・・・・・・変なの?」

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 13:47:39.47 ID:6Jsj1Ac90

・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・

「はぁ〜い、できました!」

「にゅ!」

「おーい」

「あ!キョン君!どうしたの?」

「ちょっとそいつ借りていいか?」

「そいつってもちもちのこと?」

「あぁ」

「いいよ!じゃあその間にシャミセンと遊んでる〜!」

「悪いな」

「うん!あっそうだ!キョン君、ユキちゃんと二人きりだからってにゃんにゃんしちゃだめだよ?」

「・・・・・・」

ぐりぐりぐりぐり

「痛い痛い痛いっ!頭割れちゃう!!!」

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 13:52:03.35 ID:6Jsj1Ac90

「はぁ・・・」

まったく、最近の小学生はませてやがる。それとも母親の入れ知恵か。

しかし、話とはなんだろう。長門から言ってくるのだから大事な話に違いない。

その長門には、部屋で待ってもらっている。

一応ノックしておこうか。

こんこん・・・

・・・返事がない、ただのしかばねのようだ。

じゃなくて、これは入っていいってことか?

がちゃ・・・

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 13:56:53.93 ID:6Jsj1Ac90

「くんくん・・・・・・すーはーすーはー・・・・・・」

「・・・・・・長門」

「はっ!!!」

・・・・・・待ちきれないのか?

「こくこく」

ふぅ・・・・・・まったく、可愛らしいじゃないか。

そりゃそうか、本来なら今日はおあずけのはずだったからな。

「またあとでな」

今すぐに願いは叶えてやりたいが、先に話を聞いてみたい。

大事な話かもしれんからな。

「・・・・・・こく」

少し残念そうだが、あとで堪能させてやるから待ってくれ。

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 14:02:13.38 ID:6Jsj1Ac90

「それで、話ってなんだ?」

長門は俺の前に座ると、俺の抱えている猫を見て話し始めた。

「その猫はこの星の生命体ではない」

・・・なんだって?

「正確にはこの星の生まれではない。体の構造自体は地球の猫科の動物とほぼ一緒」

唐突に驚くことを言いやがる。

ということは、こいつは宇宙人、もとい、宇宙猫ってことか。

確かに地球のそれと比べてやたらでかい気がするが。

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 14:05:11.24 ID:6Jsj1Ac90

長門にエラー溜まるピンチ
キョンのにおいでエラーが減った
なんだかんだでキョンと一緒に寝ることに

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 14:07:20.07 ID:6Jsj1Ac90

「そしてその猫は、飼われている」

にゃんと。

ということはつまり、おまえらの他に宇宙人がいて、こいつは飼い猫で、

その宇宙人と一緒にこの星に来たってことか。

「簡潔に言うとそういうこと」

なるほど。たしかによく見ると首輪がわりのリボンもつけているし、

ささやかなおしゃれとして帽子もかぶっている。

リボンは妹がやったのか?

まぁ、たとえこの猫が人並みの知能を持っていたとしても、

あの肉球では器用な真似はできないだろう。

誰かがつけてやったことは、想像に難くない。

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 14:12:31.62 ID:6Jsj1Ac90

そしてもうひとつ気になることがある。

この猫を見ていると、杞憂に思われるが、用心に越したことはない。

「その宇宙人は害があるのか?」

「ない。外見も身体能力も、地球の人間と変わらない。武器も所持していない」

そうか、なら一安心だな。

しかし、それならどうするんだ、この猫。

「明日、飼い主に返すのが得策。明後日にはこの星を離れる」

なるほど。それなら早急に返さなくては。

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 14:19:11.95 ID:6Jsj1Ac90

しかしいつの間に地球に来ていたんだ?

宇宙人襲来なんてニュース、報じられたりしなかったから知らなかった。

「気づけない仕組みにされてしまっている」

そうなのか?しかし一体誰が・・・・・・

「・・・・・・あなたは覚えてない?」

「え?何が?」

「一週間ほど前の涼宮ハルヒが発言していたこと」

「ハルヒが?」

「こく・・・・・・」

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 14:25:26.89 ID:6Jsj1Ac90

・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・

「あ〜あ、最近オモシロそうなことがないわねぇ〜。」

「そんなにごろごろ転がっていたら、逆に面白味がないだろう」

「そんなにって言うほど遭遇してないじゃない。

でももしかしたら、案外身近なところにあって、見えないように隠してあったりして!!!

実はすでに他の星に移住できる技術がこの町の地下に整っていて、

すでに誰かが他の星に向かっていたりして!!!

地球出身の火星人とかいたりしそうじゃない?」

「何処の秘密結社だ。そうしたらかなり大掛かりになるだろう。

この町の誰かに気づかれないなんておかしいと思わないか」

「何よ!夢がないわね!そう思っただけじゃない!!!」
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・


27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 14:32:21.06 ID:6Jsj1Ac90

・・・・・・確かにそんなこと言っていたな。

っていうことは今この町の地下には・・・・・

「町ではなく県全体。全体面積の約四分の三に研究施設、および、巨大宇宙船発射台などがこの県の地下にある」

おいおい、冗談だろ・・・。発射台の入り口なんて何処にあったんだよ!?

「県立北高等学校のプールの地下」

どこのサンダー○―ドだ。しかもうちの学校とは、

まったくデタラメな設定だな。(←これはハルヒに、そして作者への言葉だ)

じゃあ、宇宙人(地球人か?)は存在すると仮定して、

いつの間に地球に来てたんだ?

「いまから約七十八時間前に、地球に到着した」

三日も前から来ていたのか。

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 14:36:03.67 ID:6Jsj1Ac90

「この猫も、私自身が二日前からこのあたりで

シャミセンと一緒にいるところを目撃している」

へぇ、違う星の猫でも、猫同士ならコミュニケーションはとれるんだな。

「ちなみに宇宙人の方はどうなんだ?」

「言語は一緒。日本語で会話できる」

ほぅ、それは興味深い。会話できるなら一度話してみたいものだ。

「・・・・・・」

突然、長門が黙りこくってしまった。

「・・・どうした、長門?」

「・・・何でもない」

そんな顔して言われても説得力ないぞ。

一体どうしたって言うんだ?話して見ろよ。

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 14:39:27.19 ID:6Jsj1Ac90

「・・・その二人を、あなたに会わせたくない」

二人も来ているのか。しかし、会わせたくないってどういうことだ?

「二人とも、女性」

ほぅ、それで?

「・・・・・・」

・・・あの、長門さん。あんまり怖い顔で睨まないでくれませんか。

それだけで俺、死んでしまいそうなのですが。

ほら、もちもちもビビってるぞ。

「・・・鈍感」

「えっ?」

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 14:43:30.77 ID:6Jsj1Ac90

「今日はもう就寝した方がいい」

「あ、ああ。じゃあ明かり消すぞ」

「・・・・・・こく」

当然のように俺の布団に入ってくる長門に内心苦笑しながらも、

俺自身も慣れてしまったからなのか、まったく違和感があるとは思わない。

「・・・・・・ぽんぽん」

いつまで経ってもベッドに向かわない俺にしびれを切らして、

長門は自分の横のスペースを叩いている。

「ああ、すまん」

明かりを消して、ベッドに潜り込む。

長門をいつも通りに抱きしめて、ふと違和感に襲われた。

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 14:47:38.11 ID:6Jsj1Ac90

お前、こんなに毛深かったっけ?

「ぷいにゅ」

どうやら俺が抱きしめたのは長門ではないらしい。

この猫はお腹の辺りがもちもちぽんぽんだな。

あぁ、だから妹はもちもちと呼んでいたのか。

いつの間にか俺と長門の間に潜り込んでしまっていたようだ。

もちもちをどかそうと持ち上げようとしたら、長門に阻まれた。

「どうした?」

「このままでいい」

「いいのか?」

「いい」

そうか、長門がいいならそれがいいだろう。

しかし、いいのか?自分で言うのも恥ずかしいのだが、

これだと俺のこと抱きしめられないんじゃ・・・・・・

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 14:53:04.34 ID:6Jsj1Ac90

「今日はこれでいい」

そんな嬉しそうな顔して言われたらもちもちを引きはがすわけにもいかんな。

「あなたもこの子を抱きしめて」

俺も?

「こく」

わかった・・・・・・これでいいか?

「こくこく」

「それじゃあおやすみ」

俺はいつも通り、おやすみのキスをしてやった。

もちもちはすでに寝息を立てて眠っている。よほど疲れていたのだろう。

さて、俺も寝るとしますか。

「・・・私と彼の、赤ちゃん」

何か言ったか、長門?

「何でもない」

そうか。

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 14:58:18.43 ID:6Jsj1Ac90

翌日

今日は土曜日。

いつもならSOS団による不思議探索があるのだが、

団長直々に休みが言い渡された。

何でも今日と明日かけて、家族で行くところがあるらしい。

つまり、SOS団団員は二日間の暇が出来たわけだ。

俺も団員の一人だから、例には漏れない。

都合がいい。

今日は長門と一緒にもちもちを飼い主に返しに行くことになっている。

早いに越したことはないが、のんびり行こうではないか。

ちなみに今は長門を含め、みんなで朝食を摂っている。

長門はすでに食べ終わり、もちもちにスプーンでご飯を食べさせている。

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 15:03:54.26 ID:6Jsj1Ac90

「あ〜ん」

「んあ、ぱく」

同じビデオを何回も繰り返し見ているかのように、

わずかな違いのない動きでご飯をあげている。

どことなく楽しそうに見えるのは気のせいだろうか。

不意に、長門がこちらを見てスプーンを差し出してきた。

「あ〜ん」

何の真似だ?

「お父さんも食べる?」

誰がお父さんだ。こらそこの母娘。こっちを見てニヤニヤするんじゃない。

お父さん怒るぞ。

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 15:09:21.80 ID:6Jsj1Ac90

昨晩とはうって変わって、空には雲一つない青空が広がっている。

時折吹く、昨日の雨の湿気を含んだそよ風が気持ちいい。

出歩くにはちょうどいい陽気だ。

ハルヒではないが、何かが起こりそうな予感がするね。

さて、どこに向かえばいいんだ?

「○○町と言うところ」

何だ、電車で二駅行けばすぐのところじゃないか。

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 15:09:45.53 ID:6Jsj1Ac90

少し寄り道してからでも大丈夫そうだが。

じゃあ駅前で少し何か見てまわるか?

「こく」

わかった、じゃあ行くか。

・・・ん?何でスポーツバッグを持っているかって?

電車に乗るときはこの中にもちもちを入れておくんだよ。

普通の猫用の籠じゃあ、小さすぎて入らないからな。

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 15:16:17.66 ID:6Jsj1Ac90

目的の駅に着いたところで、もちもちをバッグから出してやった。

「ぷい・・・ふにゅ〜・・・」

かなり疲れた顔をしている。すまんなもちもち。

しかし、驚いたね。二駅くらいだから家の最寄り駅と同じくらいの

田舎っぷりを想像していたのだが、商店街があったりしてなかなか栄えていた。

いつもSOS団が集合している場所に比べれば多少見劣りするが、

それでも暇つぶしなどをするには十分な場所だ。

「少し歩くか、長門」

「待って」

「ん?」

す・・・

「・・・手、繋ぐか?」

「こくこく」

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 15:21:15.87 ID:6Jsj1Ac90

しばらく歩いていると、ひとつの店を見つけた。

中を覗いてみると、洋服を取り扱っている店のようだ。

しかし、何だか違和感があるように思える。

ちゃんと大人サイズの服は揃えてあるのだが、

赤ちゃんでも着られないくらい小さい服があったりする。なんだあれ?

「何かお探しですか?」

突然横から声をかけられた。どうやら店員さんのようだ。

「ああ、いえ。ちょっと気になっただけで。あのやたら小さい服は何ですか?」

「あれは小型犬が着る服ですね。ちなみにこれはダックスフンド用です」

なるほど、確かに胴の部分が長い。

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 15:23:14.94 ID:6Jsj1Ac90

つまりここは、ペットとその飼い主が一緒にファッションを楽しめる店のようだ。

最近はペットに洋服を着せているのを見かけるが、俺はどうかと思うね。

店内をよく見ると、帽子やその他のアクセサリーも取り扱っているようだ。

「入ってみるか?」

「こく」

「ほら、行くぞ」

「にゅ!」

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 15:29:18.32 ID:6Jsj1Ac90

「おやおや?あれはキョン君と長門しゃんではないでしゅか!

こんなところで見つけるなんて、運命のお導きかもしれましぇんね!」

「あれ?みくるちゃんだ!やっほー!」

「あらあら、キョン君の妹しゃんではないでしゅか。

こんなところで何しているのでしゅか?」

「今ね、お母さんに頼まれてキョン君とユキちゃんをスネークしてたの!」

「そうでしゅか!ならわたしも一緒に任務を遂行してもいいでしゅか?」

「うん、いいよ!」

「やりました!心強い味方でしゅ!」

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 15:34:32.54 ID:6Jsj1Ac90

「みくるちゃん、あの二人ここに来てから手繋いでいちゃいちゃしてるんだよ!」

「どれどれ・・・ホントだ!これはいけませんね!

あら、お店に入っていくようですよ」

「追いかけなくちゃ!!!みくるちゃん、これ着て!!!」

「何でしゅか、この全身タイツは?」

「ステルス迷彩服だよ!!!お母さんが作ってくれたんだよ!!!

わたしもこれを着てるの!!!」

「なるほど、だから妹しゃんは何だか霞んでみえたのでしゅね!!!」

「よーし、匍匐(ほふく)全身で追跡だー!」

「おー!」

ずりずりずりずり・・・

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 17:53:15.51 ID:6Jsj1Ac90

中はとてつもなく広かった。ここまで広いと軽く迷子になってしまうし、

全て見てまわってたいら日が暮れてしまうだろう。

それに俺には先立つものがない。こいつを送り届けて

少し散歩するだけのつもりでいたからな。

服を買う余裕は・・・ないな。

仕方なく、俺たちは小物のコーナーに向かった。

それにしてもすごいな。

このエリアだけでも目移りするほどの品揃えだ。

ちゃんとした大人のジュエリーから、小学生の小遣いでも買える値段の

ちょっとしたバッジまで売っている。

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 17:59:08.27 ID:6Jsj1Ac90

今の俺の甲斐性ではたいしたものは買えないが・・・

長門、欲しいものあるか?

「・・・・・これ」

「ん?どれだ?」

長門が指差す先には、小指の先ほどの大きさの

鳥の羽を模したシルバーのバッジだ。

これなら俺でも買えるな。

「三つ」

「こいつと俺と長門でおそろいにするか?」

「こく」

「よし待ってろ。」

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 18:04:28.71 ID:6Jsj1Ac90

店員さんに頼んで、ショーケースからバッジを取り出してもらった。

「このままつけていきますか?」

まぁ別にかまわないだろう、このままつけていくか?

「つけていく」

「では、こちらは保管するための袋です」

小さな柔らかい袋を渡されて、いざ会計を払おうとしたら

「お代は結構ですよ」

「はい?」

「彼女にいいところ見せてあげてください」

「いやそんな・・・悪いですよ!」

「いいからいいから、ありがとうございました〜」

66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 18:08:24.50 ID:6Jsj1Ac90

背中を押されて、追い出される形で店を出た。

俺たち、何か悪いことしたのかね。

しかもお金を払わないまま店を出てしまった。

何だか罪悪感でいっぱいなのですが。

「どうしたの?」

「・・・・・・いやぁ・・・・・・何でもない」

「?」

「にゅ?」

68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 18:14:32.98 ID:6Jsj1Ac90

「・・・いきましたね」

ピ、ポ、ピ、パ・・・プルルルルルル・・・プルルルルル・・・

『はい、もしもし古泉です。森さんですか?』

「あ、古泉?今店出たわよ。発信器も取り付けておいた」

『そうですか、では、引き続き尾行します』

「あんまり邪魔しちゃだめよ?愛しい長門さんを獲られちゃったからって」

『ぼ、僕はそんなつもりはありません!からかわないで下さい!失礼します!』

ぷつ・・・

「はぁ・・・わかりやす」

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 18:17:55.14 ID:6Jsj1Ac90

ずいぶんとおしゃれな喫茶店に来てしまったが、

マスターはとても砕けた感じのいい人だった。

動物連れということ伝えるとを、外の席ならかまわないと、丁重に案内された。

メニューを見てみると、写真が載せられていてどれもとてもおいしそうだ。

値段もなかなか手頃、いいセンスだ。

・・・・・・こほん。さて、何食べる?

「これとこれとこれ」

あいよ。じゃあ俺はこれにするか。あともちもちにこれだな。

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 18:21:26.03 ID:6Jsj1Ac90

「すいませーん」

「はーい、今行きまーす!」

バイトのコらしき人がきて、ポケットからメモ帳を取り出した。

「はい、何にしますか?」

俺は希望の物を一通り注文した。

「はい、わかりました!マスター、お願いします!」

「はいよ〜」

「少々お待ち下さい」

一つお辞儀をすると、店内に戻っていった。

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 18:24:25.53 ID:6Jsj1Ac90

「それにしても」

「?」

「二人きりでこうしてると何だかデートみたいだな」

「デート・・・」

「あれ、いやだったか。なら忘れてくれ」

「いやではない。むしろ嬉しい」

「ふふ、そうか」

なでなで・・・

「//////」

74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 18:27:43.53 ID:6Jsj1Ac90

「おまたせしましたー!」

うお!はやっ!まだ五分も経ってないぞ!?

「へへへ、ウチは早い、安い、旨いがモットーですからね!」

どこの居酒屋だよ。

「あとこれ、私からのサービス!!!ごゆっくり〜!」

そう言って目の前に置かれたのはオレンジジュースだ。

オレンジジュース自体は何の変哲もないものだ。

しかし、そこにささっているストローが問題だ。

ジュースから一本飛び出してハートを描いて出口が二つ。

使い方は容易に想像することができるな。

はて、これはどんな羞恥プレイだ?

「//////」

こら長門、赤くなるな。俺も恥ずかしくなるだろ。

「・・・ぷ〜いにゅ〜」

79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 19:22:19.00 ID:6Jsj1Ac90

ただいま戻りました!!!


ばり!がつがつ!ごりごり!ばくばくばくん!ごごごごごごご・・・・
ぱくぱくぱくぱくぱくぱくぱくぱくぱく、ごきゅごきゅごきゅごきゅ・・・・

「・・・朝比奈さん、ずいぶんワイルドに召し上がるのですね。

妹さんももっと落ち着いて食べてください」

「ふぁふぃふぉいっふぇふんふぇふふぁ。

ふぁふぁふぁふぇっふぁふぁふぁんふぉふぁふぁふぇふふぉ!」
(何を言ってるんでしゅか。腹が減っては何とやらでしゅよ!)

「ふぉふふぁふぉふぃっふぁん。ふぃっふぁんふぁふぁふぇふぁいふぉ?」
(そうだよいっちゃん。いっちゃんは食べないの?)

「僕はもうお腹いっぱい食べました。ここは僕のおごりですので、

遠慮なく食べてください」

80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 19:29:02.76 ID:6Jsj1Ac90

「(ごくん)そうでしゅか、なら失礼して、ってあぁ!

妹しゃん見てくだしゃい!二人は同時にあのストローで飲むみたいでしゅよ!」

「(ごっくん)ホントだ〜、片方ずつで飲めばいいのに〜。

二人ともかわいいな〜、見てるこっちがハズカシ〜///」

「古泉君、ちゃんとビデオに収めてましゅか!?」

「ええ、ちゃんと撮ってますよ」

(・・・しかし何でしょうこの胸の痛みは。

こんな切ない気持ちは・・・特に初めてではないですね。

ギャグってこうするんですかわかりません)

89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 20:41:02.81 ID:6Jsj1Ac90

皆さん、保守ありがとうございます。これから大急ぎで書いていきますね!!!


会計をすませ俺たちは店を後にした。

さて、腹ごしらえも終わったし、目的を果たそうではないか長門さん。

「・・・・・・」

あれ、なぜ突然不機嫌になるんですか?俺なんかまずいこと言ったか?

「別に」

あぁ、えっと、どうしよう。謝罪するべきなのか?でも何を謝ればいいんだ?

90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 20:45:41.54 ID:6Jsj1Ac90

しどろもどろになりながら、何とか長門のご機嫌取りしていると

突然後ろから声がした。

「あぁ!アリア社長見つけた!!!」

「あら、どこ?」

振り向くとそこには、お見目麗しい女性が二人もいるではありませんか。

しかしはて。彼女たちは『社長』と呼んでいた。

俺の目からは該当する人物は見当たらないのだが。

「ぷいにゅー!」

一声あげるともちもちは彼女たちに向かって走り出した。

そして助走をつけたところから飛び上がると。片方の女性の胸に飛び込んだ

こらもちもち。何をする気だ。

91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 20:50:35.62 ID:6Jsj1Ac90

「べろん」

容赦なく顔を舐めだしたではないか!何という粗相を!

俺は謝ろうとしたが、彼女の一言で動けなくなった。

「もう社長ったら、勝手にどっか行ったらダメじゃないですかぁ」

はい?社長?もちもちが?代表取締役?Why?

俺は考えがまとまらず混乱してしまった。

・・・まぁいい、とりあえず落ち着こう。素数は数える必要はない。

この二人が、長門の言っていた飼い主なのか?

「あなた達が見つけてくれたんですか?どうもありがとうございます!」

そう言うと彼女は深々とお辞儀をした。どうやら飼い主らしい。

92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 20:54:21.39 ID:6Jsj1Ac90

「いや、俺は何もしていません。長門が保護してたんですよ」

「長門さんて言うんですか?私は『水無 灯里』」といいます。灯里って呼んでください。

そしてこちらが・・・」

「アリシア・フローレンスです」

桃色の髪の女性―――灯里さんに紹介されたブロンドのロングヘアーの女性が

ぺこりとお辞儀をした。

一応社交辞令として俺も挨拶せねば。

「えっと、俺は」

「キョン」

「あれ?」

ちょっと長門さん?

「彼はキョン」

おーい、何すんだー。

「みんなにはそう呼ばれている」

「キョンさんですか?よろしくお願いします!」

93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 20:57:51.44 ID:6Jsj1Ac90

・・・・・・はぁ、キョンで覚えられてしまった。

誰かが俺のことを本名で呼んでくれる日は来るのかね?

そして長門、なぜ怒っているのかくらい教えてくれたっていいんじゃないか?

「・・・・・・」

「・・・あの〜、ちょっといいですか」

ああ、すいません。どうしました?

「アリア社長を見つけてくれたお礼をさせてください!」

お礼ですか?

「はい!さっきおしゃれな喫茶店見つけたのでそこで!」

そう言って俺の手を引っ張っていく。多少強引だが、厚意に甘えるとしようか。

「行こう、長門」

そう言って手を差し出すと、

「・・・こく」

長門は俺の手をしっかり握りしめた。

94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 21:00:38.61 ID:6Jsj1Ac90

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「おい、なんだあのアマ」

「なんでキョン君の手を握ってるの?」

「ロングもみあげの分際で気安くさわんなよ」

「お仕置きしないとね」

がちゃ・・・
しゃきーん・・・

「ふ、二人とも落ち着いてください!そんな物騒なものしまってください!」

「「ちっ・・・」」

(逆刃刀とRPG−7・・・一体どこから出したんですか!?)

95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 21:04:36.68 ID:6Jsj1Ac90

「あら、さっきのお二人さん。ウチの料理気に入ってくれたのかい?」

そこはさっき昼食を摂った喫茶店だった。

「あれ?ここ来たことあるんですか?」

ええ、さっき長門と二人で。

「あ〜、そうですか〜。料理すごくおいしいから

びっくりさせようと思ってたのに・・・お腹いっぱいですよね?」

お腹はすいてませんが、ここは紅茶もコーヒーもとってもおいしいですからね。

お願いできますか?

そう言うと、ぱぁっと花が咲いたように笑顔になった。

「はい!」

96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 21:08:20.51 ID:6Jsj1Ac90

「おやおや、さっきから嬉しいこと言ってくれるね〜。

よし!ケーキのサービス付けちゃいますよ!マスターが」

「俺かよ!」

テンポよく厨房からつっこみが飛んでくる。

「まぁ、俺だって褒められて嬉しくない訳ないからな。

嬢ちゃんに免じて、ケーキくらいサービスしてやろう」

「よっ、マスター太っ腹!!!」

ホントにどこの居酒屋だよ。このノリ。

席に着くと、俺は二人に会ったら聞いてみようと思っていたことを聞いてみた。

「あの、失礼を承知でお聞きしたいのですが・・・」

「はい、何でしょう?」

「あなた達は宇宙人ですか?」

97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 21:10:17.64 ID:6Jsj1Ac90

・・・・・・長い沈黙。

まずかったか?

そりゃあね、このお二人はどう見たって人間ですよ?

タコさんウインナーじゃないですよ?

でも、誰にだってちょっぴりの好奇心ってあるじゃん?

長門にああいう説明されたらわくわくしちゃう訳よ。

聞いてみてみたかったのよ、実際。

しかし二人は、俺の考えていた常識的な反応ではなく。

98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 21:12:39.72 ID:6Jsj1Ac90

「くくく・・・くすくす」

「あらあら、うふふ」

笑い出したのだ。

なんで笑い出した?まずかったか?どうする、俺?ライフカードなんて無いぞ?

「あ、気分を悪くされたのなら謝ります」

いえいえ、どちらかというと俺の方がたわけたことを言ってしまった訳で、

謝るのは俺の方ですよ。

「それで質問の答えなんですけど・・・」

・・・ごく

99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 21:16:40.52 ID:6Jsj1Ac90

「答えは、はいといいえです」

「・・・はい?」

「私は元々、地球出身なんですよ。水先案内人(ウンディーネ)になりたくてアクアに移

り住んだんです。ウンディーネと言うのは簡単に言えば観光客専門のゴンドラ漕ぎの

ことです。私はまだ半人前で、アリシアさんの下で修行しているんです。

今ここにいるのは里帰りみたいなものですね。

あ、ちなみにアクアは火星のことです」

その後、アクアの今の環境、文化、国の情勢、彼女たちの仕事や身近なことまで

色々と話をした。

だが、にわかに信じられないな。聞き慣れない言葉も出てくるし。

100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 21:19:59.36 ID:6Jsj1Ac90

「彼女たちの言っていることは本当」

へぇ、そうなのか?

「これもすべて涼宮ハルヒによる情報変革の結果」

何だと?じゃあハルヒは自分の空想で、星をまるまる一個造り替えちまったってことか?

「そう」

途方もない。地球にはちっちゃい島国の県の地下で済ませいてるのに、

一歩宇宙に出れば星一つ変えちまうとは・・・

古泉の言葉を借りるわけではないが、本当に神だな。

101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 21:25:09.59 ID:6Jsj1Ac90

「ところで、なんでもちもちのこと『社長』って呼んでるんだ?これも風習の一つなのか?」

「もちもちって呼んでるんですか?かわいいですね!

そのことはですね、まずアリア社長の瞳をよく見てください」

俺の前にもちもちが差し出された。よく見てみよう。

「・・・すごく・・・大きいです」

「そうじゃなくて、瞳の色のことです!!!」

あぁ、そう言うことか。どれどれ。

「深い青ですね」

「そうなんです。私たちウンディーネは青い瞳の猫を『アクアマリンの瞳』と呼んでいて

アクアマリンは昔から海の女神として航海のお守りとされています。

だからウンディーネとして店を営む人たちはみんな青い瞳を持った猫をお店の象徴にして

仕事の安全を祈願するんです」

へぇー、お前守り神だったのか。人は、いや、猫は見かけによらないもんだな。

「にゅ?」

「ちなみにこれは友達の受け売りなんですけどね」

102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 21:29:36.22 ID:6Jsj1Ac90

「まったく、なんなんでしゅかあの女どもは。キョン君と楽しそうに・・・」
ばくばく・・もぐもぐ・・・

「ねえどうするのみくるちゃん?このままだとキョン君取られちゃうんじゃないの?」
ぱくぱく・・・ちゅーちゅー・・・ごくん。

「そのことは、不本意しゅが長門さんに頼るしかないでしゅね。下手に手を出して

ドジ踏むのはよろしくないでしゅ。ここは様子見といきましょう」

びきびき・・・ぱきん・・・

「うう・・・キョンく〜ん・・・」

103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 21:33:46.36 ID:6Jsj1Ac90

「はぁ〜あ、どこかにいい女いねぇかな〜」

「ははは、ついに連敗数四桁突破しちゃったね」

「しかしさっきの二人はいい女だったな!あそこまでの美人はそういないぜ!」

「確かにきれいな女性だったね。僕でも惚れ惚れしちゃうよ」

「だろ!?あ〜あ、逃がした魚はデカいぜぇ〜・・・」

「あれ?あそこにいるの古泉君じゃない?」

「あ?男には興味ねぇよ」

「おや?谷口さんと国木田さんではないですか」

「古泉君は一人で何やってるんだい?」

104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 21:36:35.60 ID:6Jsj1Ac90

(一人?あぁそうでした。お二人には見えないのでしたね)

「えぇ、ちょっとあそこにいる人を尾行してまして」

「あ、誰だよ?・・・あれ、キョンじゃねえか」

「本当だ。誰かとい一緒みたいだよ」

「ってキョンと一緒にいるの、俺が逃がしたでっかい魚ではアーリマセンカ」

「長門さんもいるよ」

「あのヤロウ、一体どんな手を使いやがったんだ。学校で聞き出さないといかんな。

それにしても疲れたな、ちょっと椅子借りるぜ」

「あ!そこはダメです!」

「え?」

「ぶみゅ!」

105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 21:38:29.55 ID:6Jsj1Ac90

「あれ?やらかいのが背中に当たるぞ?なんだこれ?」

もにゅ

「ひゃ!この・・・・・・!」

「うお!」

「気安く!」

がちゃ!

「さわるなーーーーー!!!」

かち

ばしゅ・・・・・・どごーん!!!

「あーーーー・・・・・・きらーん」

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・」

「あらら、お星様になっちゃったね」

106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 21:43:17.84 ID:6Jsj1Ac90

「国木田さんは迂闊に座ったりしませんでしたね?」

「え?あ、うん。何かいることは薄々わかってたからね?

声の感じからして、今のは朝比奈さんかな?」

「・・・ほぅ」

「それじゃあ僕は失礼するよ。谷口も助けなきゃいけないからね。またね」

「そうですか、それではまた」

たったったった・・・

「・・・・・・彼はもしかすると結構すごい人なのでは?」

「それより谷口って人の心配しなくていいの?みくるちゃんの武器まともに当たったよ?」

「それは大丈夫でしょう。彼は、一学期は皆勤賞でしたからね」

「そうゆうものなの?」

「そうゆうものです」

「ふーん」

107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 21:47:04.58 ID:6Jsj1Ac90

その後は話も弾んで、俺たちのことや、SOS団のことも話したりした。

彼女の話は半信半疑だったが、正直楽しいな。気分がいい。

それに灯里さんと話していると何だか引き込まれる。

さぞかし他人に好かれるのだろう。そんな印象を受けた。

「灯里ちゃん」

「あ、はい何でしょう。アリシアさん」

「もう日が暮れてきたわ。そろそろ帰りましょう」

微笑みつつそう言う彼女は、後光が眩しい女神に見えた。

腕時計を見てみると、短い針はすでに五時を通り過ぎていた。

108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 21:51:52.12 ID:6Jsj1Ac90

「あ!ごめんなさい、お礼するつもりだったのに私ばっかり楽しんじゃって・・・」

いえいえ気にしないでください。俺も楽しかったですよ。な?長門。

「こくこく」

「そうですかぁ。は〜、よかったぁ〜」

あからさまにほっとして見せている。しかし、まったく嫌味に見えない。

どっかの優男に見せてやりたいね。

110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 22:10:17.94 ID:6Jsj1Ac90

「それでは私たちは帰りますね」

「あ、送っていきますよ」

「え、いいですよぉ。ここから結構歩きますし」

「だったらなおさらです」

男として、目的果たしたらはい、さよならはよくないからな。

最近は物騒でもあるしな。

「じゃあ、お願いします。それでは行きましょう」

「はい。行こう、長門」

「こく」

後ろで爆発音がしたが、たいしたことでは無さそうなので放っておこう。

111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 22:13:09.05 ID:6Jsj1Ac90

すいません!さるさんくらいました!再開します!


・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・


「ここです。今日は本当にありがとうございました」

「こちらこそ、とっても楽しい時間でした。ありがとうございました」

「キョン君、またいつかね」

「はい。もちもちも元気でな」

「ぷいにゅー」

「ほら、長門も挨拶して」

「・・・・・・」

「にゅ?」

113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 22:19:27.78 ID:6Jsj1Ac90

「・・・・・・またね」

なでなで・・・・・・

「ぷいにゅー!」

べろん

「・・・・・・くすぐったい」

「はは、よかったな。もちもちも長門に感謝してるみたいだな」

「こく」

「それじゃあ、お元気で!」

「はい!あ、そうだ長門さん」

「?」

「ちゃんと彼氏は捕まえてないとダメですよ」ひそひそ・・・・・・

「・・・・・・///」

「またね、ユキちゃん」

「・・・・・・またね、灯里」

114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 22:24:07.30 ID:6Jsj1Ac90

「・・・何だか不思議な人たちでしたね」

「そうね、とっても不思議だった。あの人たちはいつも不思議に囲まれてるのかしら」

「あはは、それは大変そうですね。でもそれはそれで楽しそうです」

「うふふ。あら?アリア社長、そのバッジは?」

「ぷい」

「あの方たちから頂いたんですか?」

「うわ〜、かわいいですね!私も欲しいです〜」

115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 22:30:02.75 ID:6Jsj1Ac90

・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・



そんなこんなで色々あったが、無事目的は果たせた。

空もオレンジから紫になり、深い闇をたたえようとしている。早く帰らなくては。

「急ごう、長門」

「こく、こっちが近道」

長門が指差したのは細い路地だった。道わかるか?

「大丈夫」

「そうか、頼りにしてるぞ」

なでなで・・・

「・・・うにゃ」

116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 22:35:16.40 ID:6Jsj1Ac90

「ふぅ・・・これでやっとあの女の魔の手から逃れられるでしゅ」

「でも最後にユキちゃんに何か言ったみたいだよ」

「確かに気にはなりましゅが、それは後で聞いてみましょう」

「うん、じゃあ追いかけよう!あれ?どこいった?」

「あっ!見失ってしまったでしゅ!」

「・・・これはただ見失った訳では無さそうですね」

「どうゆうこと?」

「僕たちの他にも尾行している人たちがいるのですが、

その人たちも、彼らを見失ってしまったようです。

先ほど彼に取り付けた発信器の反応も途絶えました」

「え?じゃあ、消えちゃったってこと?」

「わかりません。とりあえずもう一度探してみましょう。

とにかく、無事でいて欲しいですね」

117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 22:39:47.56 ID:6Jsj1Ac90

俺たちはもうかなりの距離を歩いた気がする。ちょっとバテ気味だが、

空はまだオレンジ色で、日が完全に落ちてないところから、

まだそれほど時間は経ってないのだろう。俺って体力無いのかな。

同じ道ばっかり通っていると思われるのも気のせいだと思いたいね。

不意に長門が立ち止まった。何かを調べているのか、

辺りをキョロキョロと見まわしている。

・・・もしかして、道に迷ったか。

「そうではない」

118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 22:44:59.08 ID:6Jsj1Ac90

じゃあどうしたんだ?急に止まったりして。

「私たちは三十八分十九秒前からこの道をループしている。

A地点に行くとB地点に飛ばされる現象が続いている」

どうやら俺の気のせいではなかったらしい

長門の力じゃどうにもならないのか?

「先ほどから力を行使しているが反応が見られない。

情報統合思念体とも連絡が途絶えた」

・・・これまた盛大な迷子だな。他に方法はありそうか?

「わからない。今、模索している」

じゃあ歩きながら考えよう。突然出られるかもしれない。

「こく」

119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 22:49:47.30 ID:6Jsj1Ac90

あれから何時間歩いたのかね。足が棒になりそうだ。

しかし、日は一向に暮れる気配はない。

もしかして、時間さえもループしているのか。

「時空ごと飛んでいる可能性はある」

なるほど、先ほどから長門は俺が理解できるくらい簡潔な説明ばかりしてくれている。

作者の文章力の無さに感謝だな。

もう一度歩き出そうとしたら、足に生暖かいものが絡みついてきた。

「シャミセン」

家の飼い猫シャミセンがいた。

一声あげると、ついてこいとばかりにしっぽを振ってくる。

なぜだか信じてみたくなった。猫のしっぽにもすがってやる。

情けない話だが、俺自身だんだん不安になってきてるんだ。

「長門、行ってみよう」

「こく」

俺たちはシャミセンの後を追った。

120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 22:54:38.66 ID:6Jsj1Ac90

しばらく歩いているとシャミセンの歩みが止まった。

そこは行き止まりだった。

おいおいまさか、シャミセンまで迷ったのか?

悠々と寝ころんでいるけど大丈夫なのか?

そんな俺の不安を意に介さず、シャミセンはちょっとここで待てと

言っているようだった。

不意に大きな影が伸びた。正面の塀の上に誰かいる。

122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 23:00:45.74 ID:6Jsj1Ac90

目を向けてみる。そこには馬鹿でかい黒猫がいた。

塀から降りても俺より頭二つ分くらいでかいだろう。

首にはスカーフを巻いて、上着も着ている。

その猫は、人間がするように両手を揃えて膝の上に置いて、背筋を伸ばして座っている。

そしてまわりには、奴を取り巻くようにたくさんの猫が思い思いの姿で転がっている。

深い青の瞳で俺を見つめてくる。一体何を考えているのかまったくわからない。

思わず息をのむ、俺が硬直してから一体どれくらい時間が経ったのだろうか。

相手に敵意とか無いのだから、そんなに緊張しなくてもいいんじゃないか。

でも、いきなり飛びかかってきたりするんじゃないか。

あんなのに襲われたらひとたまりもないぞ。

俺はあれやこれやと思考を巡らせていた。

123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 23:04:43.19 ID:6Jsj1Ac90

どう動こうか考えていたとき、黒猫の方が先に動き出してしまった。

右腕をゆっくり持ち上げる。ビームでも出す気か。

しかし黒猫は、俺たちではなく横を指差した。

油断無くその方向に視線を這わせてみると、

「あれ?」

そこには先ほどまで無かった道があった。

「ここって行き止まりだったはずじゃ・・・・・・」

「・・・にゃあ」

シャミセンが立ち上がって黒猫に礼を言うように鳴くと、その道に向かって歩き出した。

「あ、おいシャミセン!」

シャミセンはそそくさと歩いて行ってしまう。

俺たちは急いで追いかけた。もう一度塀の上を見てみると、

そこには馬鹿でかい黒猫も、その取り巻きもいなくなっていた。

180 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/07(月) 17:57:16.55 ID:MfuUJ+Xo0

・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・


「おや?発信器の反応が現れました」

「本当!!?今どこにいるの!?」

「あそこの十字路を右に曲がったところです」

「わかりました!とっとと行くでしゅ!」

「では僕に掴まってください。行きますよ!」

きゅいーん・・・・・・

・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・


182 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/07(月) 18:01:39.86 ID:MfuUJ+Xo0

俺たちは・・・出られたのか?

「こく」

そうか。長かったな。ずいぶん時間が経ったように思えるが。

「あの空間の中にいた時間は、三時間十一分三十二秒」

そんなに経ったのか。

しかし近くの店の時計を見てみると、実際には十分ほどしか経っていない。

つまり、あそこは時間ごとループしていたのか?一体誰がそんなことを・・・

183 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/07(月) 18:08:07.13 ID:MfuUJ+Xo0

「詳細はわからない。おそらく天涯領域と呼ばれるもの仕業」

またあいつらか!?今はどうなんだ?もう何ともないか?

「今は何者にも干渉は受けていない。もう、大丈夫」

そうか、よかった。しかしあの黒猫は何だったんだろうなぁ。

「私にもわからない。ただ、あれはちゃんとした有機生命体だった」

あれくらいでかい生き物なんか、ぞうさんとキリンさんくらいしか知らんぞ。

・・・また不思議に巻き込まれていたのか。

やれやれ。とりあえず帰ろう長門。

「こく」

俺は長門の手を再び掴んで帰路へとついた。

(・・・都合の悪いことはすべてあいつらのせいにしてしまおう)

「ん?何か言ったか?」

「何も」

184 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/07(月) 18:14:36.46 ID:MfuUJ+Xo0

「森さん。今自宅に向かいました」

『わかったわ。それじゃあ例の彼が消えた現場をもう一度調べてみてちょうだい

何かあったら連絡するように』

「わかりました。失礼します」

ぷつ・・・

「とりあえず、キョン君の身に何もなくてよかったでしゅ」

「そうですね。それでは僕は調べることがありますのでこの辺で・・・」

「待ってくだしゃい」
「待っていっちゃん」

「はい?何でしょう?」

「そのビデオ、こちらに渡してもらえましぇんか」

185 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/07(月) 18:18:27.12 ID:MfuUJ+Xo0

「あぁ、これですか?これは機関に渡しますのd」
がちゃ・・・
しゃきーん・・・

「わかりましたすいません後でコピーして持ってきますからごめんなさいその武器を下ろしてくださいごめんなさい」

「・・・・・絶対でしゅよ」
「・・・・・約束だからね」

す・・・

「げほ・・・あんまり物騒なもの向けないでくださいよ。

そんなものどこで手に入れたんですか」

「禁則事項です♪」
「・・・てへ☆」

187 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/07(月) 18:25:02.10 ID:MfuUJ+Xo0

一応今日も長門は俺の家に泊まることになった。

また何が起こるかわからないから、警戒のために泊まっていくそうだ。

だが本当のところはまったく別のところだろう。な、長門。

「・・・いじわる」

はは、すまんな。じゃあ明かり消すぞ。

「こく」

俺は電気を消すと長門と一緒に布団に潜り込んだ。

もちもちと一緒に寝た時間は一晩だけなのに、何だか寂しいな。

「私も、さみしい」

やっぱりな。長門、短い時間だったけどかわいがっていたもんな。

大切なものが離れていくのはつらいものだ。

188 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/07(月) 18:31:54.69 ID:MfuUJ+Xo0

「それでだけではない。来週になれば、彼らは消えてしまう」

何だって?

「情報統合思念体によって火星を探索した結果、今回の涼宮ハルヒの情報変革は

あまりにも大規模で早急だったために、制限時間がついてしまった。

残り時間は今からちょうど四十時間。それが過ぎれば、関わったものの記憶は

全て無くなり、火星も地球の地下も元通りになる」

じゃあ、このまま綺麗さっぱり、何事もなかったように終わっちまうのか?

「そう」

189 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/07(月) 18:38:06.93 ID:MfuUJ+Xo0

・・・・・・俺の記憶もか?

「こく」

・・・・・・お前もか?

「私は覚えていようと思う」

そうか・・・・・・なら俺も覚えていられるように出来るか?

「できる。しかしなぜ?」

「俺はお前と一緒に記憶を共有したいと思っている。

長門ばっかりつらい思いをしてたんじゃたまらないだろう?

俺も一緒に悲しかったこと、つらかったこと、背負ってやる」

「・・・・・・ありがとう」

「・・・・・・明日はまだいるんだろ?会いに行くか?」

「いい、余計にさみしくなってしまう」

190 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/07(月) 18:45:20.13 ID:MfuUJ+Xo0

「そうか、じゃあもう寝よう」

「待って」

「どうした?」

長門が俺の目を見た。俺も見つめ返す。

お互い何も言わず、ゆっくりと唇を重ねた。

さみしさを紛らわせるように、心に空いた空虚な穴を埋めるように。

とても熱く、とても深く、甘酸っぱいのに、ものすごい存在感を受け止めているのに

満たされない。

そんなキスをした。

そうしている内に、俺たちは静かに眠りについた。

・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・


191 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/07(月) 18:52:29.70 ID:MfuUJ+Xo0

翌日

俺は朝早くから長門を家まで送った。

何でも今日はやることがあるらしい。

手伝おうとしたが断られた。俺には出来ないことなのだろうか。

「何かあったらすぐ連絡してくれよ」

そう言って長門と別れ、家に戻った。

部屋で一息つくと突然俺のケータイがなった。

ディスプレイには古泉の文字が表示されている。

192 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/07(月) 18:59:14.00 ID:MfuUJ+Xo0

「こんな朝から何の用だ」

『おはようございます。少し伺いたいことがありまして』

「何だ?」

『単刀直入に聞きます。あなた、昨日○○町で何がありました?』

・・・・・・お前、見てたのか。

「すいません、あなた方を尾行させていただきました」

気分悪いな。何で俺たちを尾行した?

それに昨日のことは全部筒抜けってことか。

『全てではありません。一つ重要なもの思われる部分が抜けています』

一体なんだ。まわりくどく言ってないでさっさと言え。

193 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/07(月) 19:03:58.24 ID:MfuUJ+Xo0

『ごく短時間ですが、あなた方を見失ってしまったことがあったんですよ。

あなたに付けた発信器の反応も消えていました』

・・・あの無限ループの時のことか。

俺はそのときの状況を詳しく話した。ついでに昨日の夜、長門が言っていたことも

古泉に伝えた。

「機関の方でも何かわかったことはあるのか?」

「いえ、ほぼあなたと同じようなことですよ。

無限ループのあった場所も調査してみたのですが

何の痕跡もありませんでした」

194 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/07(月) 19:08:31.01 ID:MfuUJ+Xo0

そうか。しかし手の施しようもないと何も出来ないぞ。どうするんだ?

『放って置いても元に戻るのでしたら、そのままにして置いても大丈夫でしょう。

特別な作業も必要なさそうですからね。

それでは、僕はもう一度調べてみますのでこれにて』

その言葉で、古泉は電話を切った。

不意に長門の顔が思い浮かぶ。

長門、一人になって大丈夫かな・・・

195 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/07(月) 19:13:54.27 ID:MfuUJ+Xo0

「妹しゃん、例の物は持ってきましたか?」

「うん!これだね!ちゃんと古泉君にもらってきたよ!」

「よろしい、それでは視聴覚室を占領してビデオを拝見しましょう」


視聴覚室にて・・・

「学校の中誰もいないね」

「今は創立記念日で、部活も職員もみんな休みなんでしゅ。

まぁそれはいいとして、さっそく観るでしゅ!」

196 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/07(月) 19:19:18.84 ID:MfuUJ+Xo0

がちゃ、ういーん。

「あ!映った!」

「これはお昼ご飯の時のやつでしゅね。あんなストロー使っちゃって

見てるこっちが恥ずかしいd」

「朝比奈みくるは相変わらずの様子」

「・・・・・・」

「自分の行いを反省する様子はまったく見られない」

197 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/07(月) 19:24:37.93 ID:MfuUJ+Xo0

「な、長門しゃん。ここにはキョン君の妹しゃんもいるんでしゅよ?」

「私にはあなた一人しか見えない」

「あれ?妹しゃん!?どこいったんでしゅか!?一人で逃げないでくだs」

「ロードローラー」

「ちょ!そんなもんどっから出したんでしゅか!?」

どすん!!!

「ぐぎゃっ!!!」

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄」

「・・・・・・もう、やめて」

198 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/07(月) 19:28:54.09 ID:MfuUJ+Xo0

「無駄」

ごすん!!!

「・・・・・・」

「あなたがこうなった理由はたった一つ」

「・・・・・・」

「あなたは私を怒らせた」

「・・・ユキちゃん、それキャラ混ざってる」

199 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/07(月) 19:35:46.17 ID:MfuUJ+Xo0

月曜日

放課後になったら部室に行く。何も考えないでも、

足がそこに向かうようになってしまった今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。

ドアの前に立つ。入る前にはノックを忘れない。

こんこん・・・

何も反応がない。こういうのは中に誰もいないか、

長門が一人だけでいるとき。

ドアを開けてみると、どうやら後者のようだ。

「よう、あれからどうだった?」

「問題ない、エラーもそれほど蓄積していない」

「そうか」

そう言うと長門は立ち上がって、俺の方に向かって歩き出した。

200 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/07(月) 19:40:05.44 ID:MfuUJ+Xo0

だき・・・

「・・・・・・」

「・・・何だ?」

努めて優しく聞いた俺の胸に、何も言わずに顔を埋めた。

やっぱり寂しかったんだな。俺は何とか紛らわしてやろうと考えた。

あ、そうだ。

「なぁ、長門」

長門は抱きついたまま俺を見上げてきた。

「なに?」

202 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/07(月) 19:45:48.57 ID:MfuUJ+Xo0

「灯里さんたちに会ったときとか、なんであんなに怒ってたんだ?」

「・・・・・・」

途端に長門の目が険しくなった。えっと、何か悪いことしたか、俺?

「鼻の下、伸ばしすぎ」

「え?」

「今日も泊まりに行っていい?」

「あ、あぁ、いいぞ」

「一つお願いを聞いて欲しい」

「なんだ?」

「私は、あなたを私の許に置いておきたいと思っている」

許って・・・・・・それって愛の・・・・・・

203 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/07(月) 19:52:22.38 ID:MfuUJ+Xo0

「子づくりしましょ」

突飛すぎだ。

「あなたと、合体したい」

ヤヴァイ。これはヤヴァイ。

俺は長門の説得に入ろうとしたら、

ドンッ!!!

「やっほー!みんなー、久しぶりー!!!」

ドアが思いきり開きハルヒが飛び込んできた。俺は高速で長門から離れた。

ハルヒよ、いつもはデリカシーがとか思っていたりするが今回ばかりはGJだ。

204 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/07(月) 20:02:20.00 ID:MfuUJ+Xo0

「あれ?古泉君とみくるちゃんは?」

「古泉は掃除当番で、朝比奈さんは休みだそうだ」

「みくるちゃんが休み?何でよ」

「詳しいことは俺にもわからん」

「何よ、雑用のくせに役立たずね。古泉君ならわかるかしら?」

あまりにも理不尽な物言いだな。

そう言ってやろうとしたとき、

「お呼びですか?涼宮さん」

いつも見るにやにや顔が入ってきた。噂をすれば何とやらだ。

205 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/07(月) 20:08:44.71 ID:MfuUJ+Xo0

「ちょうどいいところに来たわ!古泉君は今日みくるちゃんが休んだ理由知ってる?」

「朝比奈さんですか?朝比奈さんでしたら昨日事故にあったそうで、全治一週間の怪我で

入院しているそうですよ」

「え、入院したの!?何でそれを早く言わないの!!!

それじゃあ今日のSOS団の活動はみくるちゃんのお見舞いに行くわよ!!!

古泉君、入院先わかる?」

「はい、存じ上げております」

「そう!それじゃあしゅっぱーつ!!!」

口早に告げると、さっさと行ってしまった。古泉に道案内してもらわなくていいのか?

206 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/07(月) 20:15:40.09 ID:MfuUJ+Xo0

さて俺も向かうとするか、っとその前に確かめておくか。

「古泉」

「はい、何でしょう」

「お前は昨日何やっていた?」

「昨日ですか?昨日はアルバイトもありませんでしたので、

趣味のバス釣りに行っていました」

お前の趣味って釣りなんだな。

じゃなくて、俺と長門の身に起こったこととか俺が話したことは覚えてないのか?

「昨日何かあったのですか?」

・・・・・・何でもない、深いことじゃないからな。

覚えてないならいいや。

「おや、そう言われると気になりますね、一体何が・・・・・・」

207 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/07(月) 20:20:09.86 ID:MfuUJ+Xo0

「こらー!!!三人とも早くしなさいよー!!!」

「ほら団長様もご立腹だぞ」

「おや、それでは急ぎましょう」

「あぁ。長門、行こうぜ」

「こく」

昨日のことはどうやら俺と長門以外は誰も覚えていないようだな。

208 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/07(月) 20:24:40.80 ID:MfuUJ+Xo0

だがそれでいい、長門と俺が覚えていればいい。

楽しいことだけなら共有してもいいが、今回は他にも色々あったからな。

この思い出は、長門と二人だけで共有したい。していたい。

今回の思い出は俺の中でも長門の中でも愛おしいものになるに違いない。

そう思わないか長門?

「・・・・・・恥ずかしいセリフ禁止」

でもあまりに現実からかけ離れた体験はごめんだけどな。

俺は仲間たちと共に、長門と共に、これからも訪れるであろう

俺たちの日常へと戻っていった。

209 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/07(月) 20:31:48.82 ID:MfuUJ+Xo0











谷口「ちょっと待ったー!!!俺を差し置いて綺麗に終わらせようとするな!!!」

ハルヒ「何よ!!!谷口の分際で文句でもあんの!?」

谷口「大ありだ!なんだ俺のこの扱いは!ひどすぎじゃないのか!?

おかげでイケメンに傷が付いちまったぜ」

ハルヒ「自分でイケメンとか言うな!!!それにあんたなんかまだマシよ!

あたしなんて原作ヒロインなのにほとんど空気よ!!!前回空気だった古泉君でさえ

今回はちょこちょこ出てるのに、これじゃああんまりだわ!!!

国木田からも何か言ってやんなさいよ!!!」

211 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/07(月) 20:38:21.89 ID:MfuUJ+Xo0

国木田「谷口、気にする必要ないじゃない?実は作者はね、

谷口のことが大のお気に入りなんだよ。

前回と前々回は谷口のことが出せなくて悔しかったって嘆いてたし」

谷口「そうなのか?なんだよ〜それならそうと早く言ってくれ。

じゃあ次回は俺様が大勢の女を侍らせて大活躍するわけだな!」

国木田「朝比奈さんと谷口の立場をまるまる入れ替えたいんだって。

谷口をどれだけオモシロオカシクぞんざいに扱えるかが

勝負の鍵だとか言ってたよ?」

谷口「・・・・・・」

ハルヒ「・・・・・・ドンマイ」

谷口「だー!!!もういいさ。どうせ俺はWAWAWAだよ!!!」

213 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/07(月) 20:47:00.00 ID:MfuUJ+Xo0

ハルヒ「それにしても今回エロほとんどなかったわね。この作者のことだから

     じゃんじゃん書くと思ったのに」

古泉「本当は書きたかったようですが、どこに差し入れるか考えて、無理に入れたら話が

    変になってしまったそうで、泣く泣くカットしたそうです」

ハルヒ「あら古泉君いたの?それじゃあ番外編でエロ全開のSSするべきか

     安価でも取って聞いてみればいいんじゃない?」

古泉「本人もそうしたいようですが、安価を出すことを怖がっている節がありまして」

ハルヒ「ビビること無いわよこんなの!じゃああたしが出したげる!」

>>1000

218 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/07(月) 20:59:23.58 ID:MfuUJ+Xo0

谷口「・・・・・・」

国木田「・・・・・・」

古泉「・・・・・・」

ハルヒ「・・・まだかしら」

谷口「おいおい!遠すぎるぜ、もっと近くにしろよ!何だかスレに人いなさそうだしさ」

ハルヒ「うるさいわね。じゃあここにするわよ」

>>225->>230

ハルヒ「これなら文句ないでしょ。複数の意見も聞けるし」

谷口「最初からそうしろよ、それじゃあ待ってみようぜ」

ハルヒ(キョンと同じような物言いだけど、谷口の方がだいぶムカつくわね)

228 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/07(月) 22:15:37.69 ID:MfuUJ+Xo0

ハルヒ「私とキョンのラブストーリー」

谷口「安価に参加すんな。」

229 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/07(月) 22:26:30.68 ID:MfuUJ+Xo0

ハルヒ「全然人来ないわね〜」

谷口「しょうがないだろ。よい子はもう寝てる時間なんだからよ」

ハルヒ「しょうがないわね。作者には一度旅に出てもらって、アマゾンあたりでネタ探ししてもらわないとね」

谷口「ワンパターンにならないように気をつけろよ」

ハルヒ「みなさま、今回の>>1のSSいかがでしたでしょうか」

谷口「あ、締めに入った」

ハルヒ「最後にゲストを交えてお別れを言いたいと思います」

灯里「え、私たちもご一緒してもいいんですか?」

ハルヒ「当然じゃない!アリシアさんにはSOS団の総帥になって

頂きたいくらいだわ!!!」

アリシア「あらあら、それは光栄だわ。」

古泉「それでは次回もまたお会いしましょう」

国木田 ハルヒ 灯里 アリシア 古泉 その他「マッガーレ」

谷口「その他ってなんだあああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ

ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・・・・・・・・」

231 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/07(月) 22:34:00.32 ID:MfuUJ+Xo0

これで本当に終わりです!何か色々と中途半端になってしまい、すいませんでしたm(_ _)m
ってもうあんまり人いないですね(^^;)
昨日から見てくださった皆さん、長い時間保守してくださった皆さん、見守ってくださった皆さん
次どうするかはまだ考えてませんが、ハルヒ関連のスレには色々と参加したいと思っています。またどこでお会いしましょう!
本当にありがとうございました!

232 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/07(月) 22:35:33.96 ID:MfuUJ+Xo0

あと駄文すいませんでしたm(_ _)m



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