ハルヒ「キョンに殴れたわ…」


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19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 13:33:30.44 ID:ydn58D5tO

古泉「いきなり涼宮さんを殴るなんて一体どういうつもりですか!」

キョン「あ……いや」

古泉「いや、じゃありません! あなたはこの世界を崩壊させるつもりですか!」

この会話で理解してくれたとは思うが、俺はついさっきハルヒを殴った。
いまでも右手にはハルヒを殴った感触が残っている。
ハルヒは泣きじゃくり部室を出て行った。
朝比奈さんと長門はハルヒを追い掛けて行き、古泉はこうして怒鳴っている、と言う訳だ。

ふむ、しかし……。

古泉「何をボケっとしているんですか!」

キョン「ああ、お前がこんなに感情を露わにしているのが珍しくてな」

古泉「……っ!」

ゴッという音が部室に響き、俺は床に倒れた。

はは、古泉に殴られるなんてな。朝の俺に教えてやりたいぜ。

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 13:41:57.18 ID:ydn58D5tO

古泉「……すいません、大丈夫ですか」

キョン「あんな勢いで殴られて大丈夫な奴はなかなかいないな」

古泉「…………すいません」

俺を殴った事により古泉は冷静になったようだ。
むしろ、大変な事をしてしまったという感じでおろおろしている。

キョン「ああ、気にするな。殴られて当然の事をしたんだからな」

古泉「しかし……」

古泉は謝罪の言葉を繰り返す。
だが、俺はそれを聞き流し先ほどの事を思い出していた。

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 13:52:28.65 ID:ydn58D5tO

古泉「ふむ……」

古泉、どうやってもそれは詰みだ。諦めろ。
そんな事は口に出さず、俺は唸っている古泉から朝比奈さんへ視線を移す。
朝比奈さんは椅子に座りうとうとしている。勿論メイド服で。
ああ、癒されるねえ。

古泉「ううむ」

キョン「古泉」

古泉「はい」

キョン「諦めろ」

古泉「……そうします」

そう言って古泉が将棋を片付け始めた時だった。

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 14:01:28.35 ID:ydn58D5tO

ドゴォォォォォ!!!!!!という音をたてドアを開けてハルヒが部室に入ってきた。

みくる「ひっ!?」

ハルヒ「みんな集まってるわね! 感心感心!」

キョン「おい、ハルヒ……どうやったらドアを開けるだけでそんな音が出るんだよ」

ハルヒ「何よ、知らないわよそんなの。勝手に出るんだから仕方ないでしょ」

はあ、やれやれ。普段の俺ならそれで終わる筈だった。
だが、今回は何故か違った。

頭がぼうっとし、気付いたらハルヒが床に倒れていた。

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 14:06:58.03 ID:ydn58D5tO

みくる「す、涼宮さん?」

長門「………………」

おろおろしている朝比奈さん。
あの長門でさえ目を見開きこちらを見ている。

ハルヒ「…………っ!」

ハルヒは立ち上がると、涙も拭わず部室を出て行った。

みくる「あっ」

朝比奈さんと長門はハルヒを追いかけ走って行った。

古泉「あなたは!」

古泉に壁に叩きつけられる。

古泉「あなたは今何をしたか分かっているのですか!」

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 14:12:23.12 ID:ydn58D5tO

古泉は声を荒げ怒鳴り続ける。
そんな古泉を見ながら、俺は事態をようやく把握し始めた。

キョン「……ああ……」

そうか。
さっきハルヒが倒れていたのは。
ハルヒが泣いていたのは。


この右手の痛みは。

俺がハルヒを殴ったというのか。

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 14:24:21.08 ID:ydn58D5tO

俺は古泉に殴られた頬に手を当てる。

しかし何故だ。
俺自身ハルヒを殴る理由が見当たらない。
ハルヒが理不尽なのは今に始まった事ではない。
しかも今回はまだハルヒは滅茶苦茶な事を言っていなかったというのに。
それにハルヒを殴ったと思われる瞬間、俺は意識が無かった。
かっとなって殴ったというなら、意識が無いことなど有り得ない。

古泉「あの……本当に大丈夫ですか?」

キョン「ああ。……なあ、古泉」

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 14:33:37.49 ID:ydn58D5tO

俺は古泉にさっきの事を説明する。

キョン「……って訳だ。俺自身、一体何故こうなったのかわからない」

古泉「………………」

古泉は黙っている。
無理もない。こんな話、ただの言い訳と思われても仕方がないからな。

キョン「……すまん。何言ってるんだろうな、俺」

古泉「信じますよ」

キョン「え?」

古泉「あなたがあの程度で人に手を挙げる人間だとは到底思えませんからね」

キョン「古泉……」

古泉「先程は僕自身、かっとなってしまっていたので冷静な判断が出来ませんでした。申し訳ありません」

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 14:42:18.37 ID:ydn58D5tO

古泉「それにしても、一体あなたに何が起こったのでしょうか」

キョン「わからん。いきなり頭がぼうっとして、気付いたらハルヒが倒れてたんだ」

古泉がふむ、と顎に手を当て考えるポーズをする。

古泉「念の為に聞いておきますが、あなたは多重人格者ではありませんよね?」

キョン「違う……と思うが」

今日みたいな事があった後だ。無いとは言い切れないかもしれん。

長門「彼は多重人格者では無い」

キョン「長門!」

古泉「長門さん?」

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 14:49:00.86 ID:ydn58D5tO

長門はゆっくりと部室に入ってくると、俺達の前で立ち止まった。

古泉「長門さん、涼宮さんはどうしたのですか?」

長門「問題ない。朝比奈みくるが手当てをしている」

古泉「そうですか……」

キョン「なあ、長門」

長門「あなたが聞きたい事は分かっている」

長門はそう言うと、そのガラス玉のような眼で俺を見つめる。

長門「あなたはあの瞬間、天蓋領域に操られていた」

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 15:05:10.67 ID:ydn58D5tO

キョン「は……?」

古泉「な……」

天蓋領域っていうと、九曜とかいうと奴の親玉か。
しかし、古泉によるとこの部室は宇宙人未来人超能力者の力でカオスな事になってるんだろう?
だとしたらいくら宇宙人とはいえ……。

長門「天蓋領域の力は未知数」

長門「我々情報統合思念体でも未だに完全な解析は出来ていない」

そんな……。それじゃあ俺はどうしたらいいんだ。

古泉「安心して下さい」

キョン「古泉?」

古泉「原因が分かった以上、同じ事はこれ以上繰り返させませんよ」

長門「情報統合思念体としても、涼宮ハルヒに悪影響を与える事を望んでいない」

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 21:26:21.89 ID:ydn58D5tO

キョンがハルヒ殴ったらハルヒが泣きました

スレタイは突っ込んだら負けです

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 21:35:16.82 ID:ydn58D5tO

キョン「それで長門、これからどうすればいいんだ?」

古泉「そうですよ、実際あなた方情報統合思念体も……」

そこまで言って古泉は口をつぐんだ。
まあ長門にあんなに睨まれたら、なあ。

長門「それについては問題無い」

長門「以前も今回も不意をつかれただけ」

古泉「なるほど」

長門「それに今回は天蓋領域に対する手段もある」

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 21:39:18.19 ID:ydn58D5tO

言い忘れてたけど昼間やってた同じ名前のスレの続き
ちなみに俺は前スレの>>1ではない


あらすじ

ハルヒが物凄い音を出して部室に入りました
キョンは頭がぼうっとして、気付いたらハルヒが倒れてました
長門が言うにはキョンは天蓋領域に操られてハルヒを殴ったようです

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 21:48:10.68 ID:ydn58D5tO

古泉「手段、ですか」

長門「そう」

キョン「それはどんな手段なんだ?」

長門「…………」

なんだ?
いつもなら俺が理解するのを諦めるような説明をするって言うのに。

古泉「長門さん?」

キョン「長門?」

長門「その手段とは……」

長門は俺を見つめ、はっきりと言った。

長門「あなた」

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 21:57:58.44 ID:ydn58D5tO

長門「以前の雪山の時とは違い、今回天蓋領域は我々と同じようにインターフェースを使用している」

古泉「ええ、たしか周防九曜、だったかと」

長門「そう」

キョン「なあ、それでどうして俺が天蓋なんたらに対する手段になるんだよ」

長門「彼女が今所属している団体は、あなたの友人の佐々木と呼ばれる人物のもの」

古泉「なるほど」

古泉「つまり、インターフェースを直接狙わずに相手のトップを叩く、と。確かに彼ならあまり警戒もされなごふう」

古泉は長門に回し蹴りをくらって吹っ飛んでいた。
まあ長門がやらなければ俺が同じことをしていたハズだからな。

キョン「なあ、長門」

長門「大丈夫。先程の古泉一樹の言ったような事では決してない」

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 22:07:30.57 ID:ydn58D5tO

俺は今、佐々木達の事を待っている。
長門の作戦を実行するためだ。


長門『今回、天蓋領域はインターフェースを使用し涼宮ハルヒの監視を行っている』

長門『そのためにあなたの友人の団体に所属している訳だが、その際にイレギュラーが発生していることを確認した』

キョン『イレギュラー?』

長門『そう。彼女は何故か佐々木と呼ばれる人物に逆らう事が出来ない』


つまり長門の作戦とは、

「佐々木さんに頼んで九曜に嫌がらせを辞めてもらおう作戦」

だそうだ。


………………先生に言いつける小学生か。

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 22:13:02.80 ID:ydn58D5tO

佐々木「やあキョン」

頭の中で作戦を繰り返していると、いつの間にか佐々木が来ていた。
ふむ、もうこんな時間だったか。

キョン「よう、佐々木」

佐々木「今日はどうしたんだい? 是非とも逢いたい、なんて君らしくもない」

そう言って佐々木はくつくつと笑う。
全然変わっていないな。

佐々木「……キョン?」

キョン「ああ、すまな……」

ん? あれ?

キョン「なあ、佐々木」

佐々木「なんだい?」

キョン「周防は一緒じゃないのか?」

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 22:19:19.76 ID:ydn58D5tO

俺がそう言うと、佐々木は笑顔を曇らせた。

佐々木「九曜さん、かい?」

キョン「? ああ、そうだが」

佐々木「そうか、キョンは九曜さんの事が……」

一体佐々木は何をぶつぶつ言っているんだ?
俺は確かに昨日の電話で伝えていたはずだがな。

佐々木「へ?」

キョン「だから昨日、お前ら二人に言いたい事があるって言っただろう?」

佐々木「そういえば……」

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 22:25:59.42 ID:ydn58D5tO

佐々木「でも、その話は九曜さんもいないと駄目なのかい?」

キョン「ん……いや、まあお前も知ってるだろう? 宇宙人的な話なんだが」

佐々木「……なんだ」

佐々木は明らかにほっとした表情をしている。
一体何だっていうんだ?

佐々木「それじゃ九曜さんを呼ぶよ」

ああ、頼む、そう言おうとした時だった。

九曜「──その──必要は──ないわ──」

キョン「ぬおわあああ!」

佐々木「あら、九曜さん」

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 22:31:25.16 ID:ydn58D5tO

佐々木「ほらキョン。九曜さんが来たよ」

九曜「──来た──」

キョン「お、おう。すまないな」

しかし心臓に悪いな。

佐々木「それで、一体なんの用なんだい?」

ああ、そうだった。すっかり忘れていたぜ。
だが、その前に少し確認しておかないとな。

キョン「なあ、佐々木」

佐々木「なんだい?」

キョン「あー、なんだ。九曜も宇宙人なんだよな?」

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 22:39:53.66 ID:ydn58D5tO

佐々木「そうだよ。ね、九曜さん」

九曜「──そう──」

キョン「それじゃ、やっぱりなんか特殊な能力が」

佐々木「無いよ」

へ?
今なんと?

佐々木「そのような特殊な力は無いよ」

九曜「──佐々木さんに──言われた──おかしな力は──使っちゃダメ──って──」

佐々木「だってそうだろう? そんな物をほいほい使うとどうやっても歪みをフォローしきれなくなる」

キョン「それは、そうだが……」

佐々木「君が疑うのも無理は無い。でも、彼女は絶対に宇宙人的能力は使わない」

九曜「──勿論──私のお父さんも──」

一瞬、お父さんが誰だか解らなかったが、それが天蓋領域の事だと理解するのに時間はかからなかった。

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 22:57:33.55 ID:ydn58D5tO

おい長門、一体どういう事なんだ。
もう訳が解らない。

佐々木「キョン? どうしたんだい?」

キョン「あ、ああ……」

佐々木「君の用事とはさっきの事で終わりなのかい?」

キョン「あ……いや……」

佐々木「…………何かあったのかい?」

俺は気付いたら佐々木にこの間部室であった事を話していた。

佐々木「……なるほど」

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 23:07:02.41 ID:ydn58D5tO

佐々木は携帯を取り出すと、電話をかける。

佐々木「もしもし、橘さん。少し調べて欲しい事があるんだ」

俺は、というと何故か九曜に見つめられていた。
うう、偏見かもしれんが、長門の瞳に比べて何か苦手だ。

九曜「──あなたの──瞳は──やっぱり──綺麗──」

キョン「そ、そうか」

キョン「なあ、本当に……」

九曜「──やってない──」

話が違うぞ長門。
なんだこれは。こいつらが嘘をついているようには見えない。
でも長門が嘘をつくなんて……。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 23:13:49.95 ID:ydn58D5tO

佐々木「キョン」

キョン「なんだ?」

佐々木「単刀直入に聞くよ。君は涼宮さんの事が好きかい?」

キョン「な!?」

佐々木「いいから答えてくれ。君は涼宮さんに好意を抱いているのかい?」

佐々木の目は本気だ。
昔から佐々木はこういう冗談は好きではない事も知っている。
……ちゃんと答えないといけないな。

キョン「……ああ、俺はハルヒが好きだ」

佐々木「……やっぱり」

九曜「────?」

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 23:36:28.07 ID:ydn58D5tO

佐々木「本当に好きなのかい?」

キョン「ああ」

佐々木「一体どのあたりが?」

キョン「な……」

こいつ……いくらなんでも

佐々木「答えられる訳が無いんだ。それは操作された物なんだから」

キョン「え……?」

佐々木「さっき橘さんに調べて貰って解ったんだ」


佐々木「涼宮さんは自分の力について気付いている」

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 23:45:45.65 ID:ydn58D5tO

キョン「は? ちょっと待て、いくらなんでも……」

佐々木「この数週間、彼女の周りで不可解な事が連続している」

佐々木「ひとつひとつは他愛のないものでも、それがある法則を持っている事に気付けば不自然な部分が見えてくる」

キョン「……佐々木?」

佐々木「もう一度聞くよ、キョン。君は涼宮さんの事が好きなのかい?」

……俺は、ハルヒの事が、好き?
何故?
解らない。
ハルヒの何処が好き?
解らない。
そもそもどうして……。

佐々木「キョン。涼宮さんはこの数週間、少しずつ君の心を改竄していたんだよ」

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/06(日) 23:58:02.61 ID:ydn58D5tO

なんだそれ。
それじゃあ、この気持ちは偽物で。
ハルヒの事が好きなわけではなくて。

佐々木「ちなみに涼宮さんはまだ完全に力をコントロールしている訳ではないみたいだ」

佐々木が何か言っている。
でも、そんなの知った事ではない。

ああ、そうだ。長門。
長門なら。

佐々木「ちなみに、SOS団のメンバーも同様だよ」

…………。

佐々木「元々、涼宮さんの為に集まったメンバーだ。涼宮さんの力を受け入れやすい」

…………………………。

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/07(月) 00:02:27.44 ID:iR1DmkLOO

頭がぐらぐらする。
気分が悪い。
今すぐにでも倒れてしまいそうだ。

キョン「ぐ……」

佐々木「キョン!?」

九曜「──大丈夫──?」

キョン「頭……が……」

佐々木「キョン、しっかり! キョン!」


意識を失う前に見たのは、珍しく焦った表情の佐々木だった。

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/07(月) 00:13:04.20 ID:iR1DmkLOO

キョン「……う」

目が覚めた俺は、見慣れない部屋に居る事に驚いた。
どこだ、ここは。
それに……俺はなんで寝てたんだ?

カチャ、と控えめな音がしてドアが開くと、佐々木が入ってきた。

キョン「おはよう、佐々木」

佐々木「……! キョン、起きていたのかい」

キョン「ついさっきな」

佐々木「キョン、気分はどうだい?」

キョン「へ?」

佐々木「君は僕と話しているときに倒れたんだ。覚えていないのかい?」

そう……言われてみれば……そんな気も……。

キョン「すまないな、佐々木」

佐々木「別に構わないよキョン。意識を失った君を運ぶのは苦労したがね」

そう言ってくつくつ笑う佐々木は、俺の知っている佐々木で。
俺は何故か安心した。

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/07(月) 00:19:27.25 ID:iR1DmkLOO

キョン「ちなみにここは……」

佐々木「ああ、僕の部屋だ」

なんですと? そ、それじゃ、この布団は佐々木の……。
俺はほんの少し深呼吸しようとし、

佐々木「そんなおかしな顔をしないでくれよ。いくら僕でも少し傷つく」
佐々木の言葉で我にかえった。
……そんな顔していたのか?

キョン「あ、い、いや、これは……」

佐々木「ふふ、冗談だよ。ここは家の客間だよ」

…………ですよねー。

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/07(月) 00:28:19.06 ID:iR1DmkLOO

キョン「そう言えば、今何時なんだ?」

佐々木「そうだね」

俺は佐々木から時間を聞いて驚いた。
やばい。もう帰らないと母上に怒られてしまう。

キョン「今日はすまなかったな、佐々木」

佐々木「もう大丈夫なのかい、キョン」

キョン「ああ、もうすっかり大丈夫だ」

俺は布団から起き上がると帰り支度をする。

…………ああ、もう大丈夫だ。俺はもうハルヒの改竄になど負けはしない。
佐々木達が言うには、今のハルヒの改竄なら意識を強く持つ事ではねのけられるらしい。

キョン「本当に今日はすまなかったな」

佐々木「別に構わないよ。今日は久々に君に会えて嬉しかった」

キョン「ああ、俺も楽しかったよ。またな」


佐々木「…………………………鈍感」

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/07(月) 00:37:11.08 ID:iR1DmkLOO

もうそろそろで家だ、というところで俺は不自然に停まっている車に気づいた。
ドアが開き、出てきたのは古泉だった。

古泉「どうでしたか?」

キョン「どう、とは?」

古泉「今日の事ですよ。上手くいったのですか?」

キョン「お前ら機関の情報収集能力ならもう分かってるんじゃないのか?」

古泉「それが……敵対組織の抵抗が激しく、今回はさっぱり」

ほう、あの橘とかいう誘拐犯、なかなかやるもんだな。

長門「古泉一樹、彼から離れて」

古泉「長門さん?」

俺は声のする方へ振り返ると、そこにはいつ来ていたのか長門がいた。
明らかにこちらを警戒する目で睨んでいる。
まあ俺も変わらないがな。

古泉「一体……?」

長門「彼は既に天蓋領域に洗脳されている」

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/07(月) 00:43:58.66 ID:iR1DmkLOO

古泉「なっ!?」

おいおい、お前がそれを言うのか。
お前だってハルヒの影響を受けてるだろうが。

古泉「一体どういう事なのですか!?」

キョン「よく聞け、古泉! ハルヒは自分の力に気付いて」

長門「当該対象を危険と認識。これより情報操作を開始する」

古泉「長門さん!?」

キョン「く……そ……」

古泉「……なんで……僕まで……」

長門「安心して欲しい。今回は記憶を改変するだけ」

長門「余計な事は知らない方がよい」

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/07(月) 00:49:35.54 ID:iR1DmkLOO

喜緑「長門さん」

長門「そちらはどうだった」

喜緑「いえ、それが、天蓋領域は情報操作を使わないかわりに、ほかの誰も彼らやその周りに対して情報操作出来ないフィールドを展開しているみたいで……」

長門「……役立たず」

喜緑「ちょ、それ酷くないですか?」

長門「その程度のフィールド、朝倉涼子ならすぐに解析したはず」

喜緑「な……」

長門「大したこともできず、存在感もない……これなら眉毛の方がマシ」

喜緑「うわーん!」

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/07(月) 00:54:01.65 ID:iR1DmkLOO

古泉「よし、飛車取りましたよ!」

キョン「そうか、ほれ王手」

俺はいつものように古泉と将棋をしている。
しかし、こいつはいつになったら大局的に物を見られるようになるのかね。

みくる「はい、お茶です」

キョン「ありがとうございます」

俺は朝比奈さんに渡されたお茶をすする。
ふう、落ち着く。

キョン「美味しいです」

みくる「ふふ、ありがと」

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/07(月) 00:57:46.15 ID:iR1DmkLOO

古泉がうんうん唸っていると、ドアから爆音がした。
なかなか表現しにくい音だが、敢えて表すならば……。


ドッグォォオオンクルンプスプスといった感じか。

キョン「なあ、ハルヒ」

ハルヒ「何よキョン」

キョン「どうやったらドアを開けるだけでそんな音が出せるんだ」

ハルヒ「知らないわよ」

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/07(月) 01:06:18.89 ID:iR1DmkLOO

俺はそのハルヒの言葉を聞くと、何故か頭がぼうっとした。

なんだ? 前にもこんな事が在ったような……。


意識が突然はっきりし、俺は何故か椅子から立ち上がっていることに気づいた。
前を見ると、ハルヒが何か残念そうな、それか何かがうまく行かなくて驚いたような、そんな表情でこちらを見ていた。

ハルヒ「何よ、キョン」

キョン「あ……ああ、なんでもない」

ハルヒ「……本当に?」

キョン「ああ」

っかしーわねとかなんとか言いながらハルヒは自分の席へと向かう。

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/07(月) 01:11:51.33 ID:iR1DmkLOO

俺は、と言うと、突然鳴りだした携帯に出るため部室を出ようとしていた。

なんだ、どうした長門。
そこをどいてもらわないとここを出られないんだが。

長門「……………………そう」

ああもう、仕方がないな。

キョン「長門、文句言うなよ」

そう言って俺は長門を抱き上げ、いつもの指定席に連れて行った。

ハルヒ「な、な、ななななな…………」

うし、急いで電話に……。

ハルヒ「こんのエロキョンがー!」

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/07(月) 01:16:49.55 ID:iR1DmkLOO

ハルヒのドロップキックを華麗にかわした俺は、急いで部室から出る。

みくる「きゃぁぁ、しゅじゅみやしゃん大丈夫でしゅかあ」

ハルヒ「ちょ、みくるちゃん、大丈夫だから落ち着いて!」

古泉「うわ、朝比奈さん、ポットから手を離あづうううう!!」

みくる「きゃぁぁ! 古泉くーん!!」

長門「いいから落ち着いて」

…………オーケー、俺は何も聞いちゃいない。
そうだ、電話に出ないと。

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/07(月) 01:21:16.36 ID:iR1DmkLOO

電話は佐々木からだった。

キョン「おう、どうした?」

佐々木「やあ、キョン。ちょっと昨日の事でね」

昨日……なんかあったか?
ん? んー……思い出した。

キョン「佐々木、今日だ」

佐々木「え?」

キョン「今日もあったんだ、意識がなくなるのが」

佐々木「やっぱり。でも君は今回涼宮さんをなぐってはいないんだろう?」

キョン「ん、ああ」

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/07(月) 01:27:09.44 ID:iR1DmkLOO

そういえば今日は昨日よりは早く覚醒したような。

佐々木「昨日言っておいたろう? 意志を強く持てば涼宮さんの力ははねのけられる、と」

キョン「ああ、だがそれじゃ長門に消された記憶が戻った事がよくわからん」

佐々木「まあ、それは後で説明するよ。それより、今は君の症状の説明をしよう」

キョン「頼む」

佐々木「あー、これは嘘でも冗談でも無い。それは大丈夫かい?」

キョン「ああ、俺はお前を信じる」

佐々木「ありがとう」

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/07(月) 01:31:49.19 ID:iR1DmkLOO

佐々木「キョン、落ち着いて聞いてくれよ」

キョン「ああ」

佐々木「君の症状はやはり涼宮さんのせいらしい」

やっぱり。
今日のハルヒのあの表情を思い出すとそうとしか考えられんな。
しかし、それなら何故俺は前にハルヒを殴ったりしたんだ?

佐々木「それは……」


佐々木「涼宮さんは、いわゆる……ま、」

キョン「ま?」

佐々木「マゾ、と呼ばれる性癖の持ち主らしい」

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/07(月) 01:38:56.29 ID:iR1DmkLOO

おいおい、なんだそりゃ。
ハルヒのやつ、俺の心をいじくったあげく、そんな下らない事の為に俺を……。

佐々木「そ、それでね、キョン」

俺はそれまでと違う意味で頭が痛くなってきた。
身近にいる人間が変態だなんて……。

佐々木「君が長門さんの情報操作から回復した理由なんだけど」

この辺りで俺はもう佐々木の言葉を聞いていなかった。
だから、次の言葉を聞き逃しても仕方がないだろう?


佐々木「実は、昨日君が寝てる時に、君の唇にちょっとしたおまじないを……」


終わり

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2008/07/07(月) 01:42:39.63 ID:iR1DmkLOO

まあ佐々木にもほんの少しだけ神様的な力が残ってたって事で

昼間はすいませんでした
今回初めて自分でハルヒ系のスレ立てましたよ
前スレ>>1には悪いけどスレタイそのまんまで
まさか立つとは……


朝倉は俺の嫁
パイナポゥでした



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