1 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中[sage] 投稿日:2008/06/18(水) 17:46:08.79 ID:mEl9Nkzf0
ガチャ(部室のドアが開く)
みくる「お、遅れてすみませ〜ん…もう皆さん揃ってるんですね。」
ハルヒ「…」
キョン「…」
長門「…」
古泉「…」
みくる「あ、あの…」
ハルヒ「さて皆、今日はもう終わりよ!」
みくる「!?」
2 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中[sage] 投稿日:2008/06/18(水) 17:48:58.15 ID:mEl9Nkzf0
ハルヒ「街の探索をするグループを決めるわよ!」
それぞれがくじを引く。
古泉「僕は印付のようですね。」
長門「…印付。」
ハルヒ「私もね!」
キョン「俺は無印だ。」
みくる「わ、私も無印です〜」
キョン「ちっ」
みくる「…」
4 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中[sage] 投稿日:2008/06/18(水) 17:54:40.13 ID:mEl9Nkzf0
キョン「…」
みくる「あ、あのキョン君…」
キョン「…」
みくる「あのぉ…」
キョン「…何スか?」
みくる「(ビクッ)…えっと、お話ししたい事が…。」
キョン「…手短にして下さい。」
〜〜〜〜〜〜〜
みくる「…というわけで、私は未来から来ました。」
キョン「そうスか。」
みくる「…そ、そうなんです。」
キョン「もういいスね。戻ります。」
みくる「…」
5 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中[sage] 投稿日:2008/06/18(水) 18:00:39.51 ID:mEl9Nkzf0
ハルヒ「おっそ〜い!!」
キョン「すまんすまん。」
みくる「ごめんなさい〜…」
ハルヒ「デートのつもりになってんじゃないの?」
キョン「あんな女とか?w」
ハルヒ「まあ、ありえないわねww」
古泉「聞こえますよwwww」
長門「ユニーク」
みくる「…」
6 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中[sage] 投稿日:2008/06/18(水) 18:09:02.49 ID:mEl9Nkzf0
ハルヒ「午後の探索をするわよ!」
キョン「また全員でくじ引きか?」
ハルヒ「いいえ、それだと『さっきみたい』になると困るわね。」
古泉「全くですね。」
ハルヒ「まずはみくるちゃん以外の皆でくじを引いて!」
みくる「?」
みくる以外のそれぞれがくじを引く。
キョン「俺と長門、ハルヒと古泉に分かれたな。」
ハルヒ「代表がジャンケンして、負けた方にみくるちゃんを加えるわ。」
みくる「!?」
ハルヒがキョンに負ける。
キョン「よしっ」
長門「歓喜」
ハルヒ「やっちゃったわ…」
古泉「困ったものです。」
みくる「…」
7 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中[sage] 投稿日:2008/06/18(水) 18:14:18.48 ID:mEl9Nkzf0
ハルヒ「ねぇ古泉くん、何か不思議なものは見つからないかしら?」
古泉「そうですね、なかなか難しいようです。」
ハルヒ「どこかに面白いものが落ちてないかしらね…」
古泉「牛と見間違えそうになる女性ならいますがw」チラッ
ハルヒ「ちょw聞こえるわよww」チラッ
みくる「…」
12 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中[sage] 投稿日:2008/06/18(水) 19:01:56.15 ID:mEl9Nkzf0
みくるのクラスにて。
女生徒A「鶴屋さ〜ん、お昼食べよう〜」
鶴屋「了解っさ!」
女生徒B「なんだか机が広く使える感じがするねw」
女生徒A「一つの机だと3人が限界かもね〜w」
鶴屋「あり?そういえばいつもより少ないね!」
女生徒B「え〜?今までも3人だったよ〜w」
鶴屋「あっは!間違えちった!」
みくる「…」
13 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中[sage] 投稿日:2008/06/18(水) 19:07:02.07 ID:mEl9Nkzf0
鶴屋「これ、先生がみくるに渡せってさ!」
みくる「あ、はい〜…ありがt」
鶴屋「それじゃ!」
みくる「…え、あ、はい…」
鶴屋「…ちっ」
みくる「!?」
その後、離れた所から聞こえる会話
女生徒A「えー?先生にプリント渡すの頼まれたの?」
鶴屋「そうなんだよ!とんだ災難なのっさ!」
女生徒B「あはは!ホントにあの牛女ってムカつくよね〜」
女生徒A「二人とも聞こえるよw」
鶴屋「別にいいにょろwww」
女生徒B「wっうぇww」
みくる「…くすん」
15 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中[] 投稿日:2008/06/18(水) 19:15:42.81 ID:mEl9Nkzf0
みくる(はぁ…どうしてかな…)
みくる(少し前から、皆が私に冷たい…何故…)
みくる(私…気付かないうちに、周りの人にひどい事してたのかな…)
みくる(でも挫けちゃダメ…ちゃんと涼宮さんの観察をしないと…)
みくる(そうよね…私は重要な任務を与えられ、未来から来たんだから…)
気付かぬうちに、瞳に溢れていた涙。
慌ててメイド服の袖で拭い、これから来るであろうSOS団の団員のために
お茶の用意に取り掛かる。
まだ誰も来ていない部室で、春とはいえまだ肌寒い空気を肺に吸い込む。
もう少しで終わる辛かった今日を振り返りながら、
肺の空気をゆっくり吐き出そうとした瞬間に、ドアは開いた。
17 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中[sage] 投稿日:2008/06/18(水) 19:22:53.58 ID:mEl9Nkzf0
みくる「あ…キョン君に古泉君…。」
古泉「…ん、ああ。いらしたんですか。」
キョン「ちょっと荷物を取りに来ただけです。」
みくる「…え?」
古泉「さぁキョン君、涼宮さん達が待ってます。急ぎましょう。」
キョン「おう、よしお前はこれを持ってくれ。」
古泉「分かりました。」
みくる「…あ、あの…っ!」
キョン「…」
古泉「…何でしょう?」
みくる「ど、どうして…最近皆さん、私に冷たいんですか…?」
キョン「…そうなんスか?俺らはそんなつもりないですけど。」
みくる「でも…」
古泉「やれやれ、お疲れのようですね。しかし被害妄想は止めた方が良いですよ。」
みくる「…」
キョン「おい、行くぞ。」
古泉「はい。…朝比奈さん、今日は我々は別のところで活動しますので。」
みくる「え…わ、分かりました。」
19 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中[sage] 投稿日:2008/06/18(水) 19:32:07.32 ID:mEl9Nkzf0
二人が去った部室には、メイド服を着たみくると、
使う者のいない湯飲み茶碗が残った。
みくるはおもむろにそのうちの一つを取り、茶を注ぎ、ゆっくりと口につける。
温かい茶とは対照的に冷たい部室。
先ほど彼らが来る前よりも、さらに空気が冷えたように感じられた。
みくる「寂しい…」
無意識に出たその言葉が合図だったかのように、みくるの瞳から再び涙が溢れる。
先ほど一度は収まった涙が、今度は堰を切ったように零れた。
もはや本人の意思で止める事も出来ない。
袖で拭う事もしなかった。
部室の様子は涙で霞み、同様に頭の中もうっすらと霧がかかったようだった。
25 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中[sage] 投稿日:2008/06/18(水) 19:45:31.17 ID:mEl9Nkzf0
後片付けをし、制服に着替えなおしたみくるは帰り道にいた。
その途中にある喫茶店を外から眺めると、
なんと、そこでは見慣れたSOS団の面々が楽しそうに話をしていた。
みくる「…」
少し驚きはしたが、もはや何も感じない。
これが当たり前のように思えた。
みくる「私が悪いから、仲間はずれにされるんですよね…」
もう涙は枯れ尽きていたが、心の痛みは止まらなかった。
28 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中[sage] 投稿日:2008/06/18(水) 19:55:54.17 ID:mEl9Nkzf0
次の日、ここ数日と同じく教室内で孤立していたみくるは、
終礼の前の身支度をしていた。
その時机の中から落ちたメモに気付く。
『今日の部活は17時から。それまでは部室に入らない事。涼宮』
みくる「…?」
不思議に思いつつも、17時まで何処で時間を潰そうか考え始める。
終礼が終わると、いつも仲の良かった鶴屋たちのグループは
すぐに教室を出て行ってしまった。
今日も彼女達は一言も会話してくれなかった。
35 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中[sage] 投稿日:2008/06/18(水) 20:02:56.53 ID:mEl9Nkzf0
静かに落ち着ける場所として、みくるは図書室を選んだ。
読みたいと思いつつも、SOS団の活動のために時間を取られ、
なかなか手を出せなかった本もあったからだ。
その本に出てくる少女は、何となく自分に似ているようだった。
内気で人と上手く話す事が出来ない。
運動が苦手で、いつもドジなことをしている。
何事にも頑張って努力をするが、それでも失敗が多い。
そんな少女だが、彼女の周囲にはどんな時も優しい友達がいる。
辛い時も、悲しい時も、皆が励ましてくれるから大丈夫。
前に進む時、そっと振り向けば友達の笑顔がある。
惜しみない優しさを与えてくれる。
みくる「少し前までは、私にもこんな友達がいたのに…」
本の中の少女と自分との違いは、今はとても大きなものだった。
36 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中[sage] 投稿日:2008/06/18(水) 20:14:37.42 ID:mEl9Nkzf0
もう少しで17時になるので、みくるは図書室を出た。
まだ本は読み終えていないが、読み続けても辛くなるだけだと思った。
廊下を歩き、部室に向かう。
旧校舎にある部室は図書室からはやや遠いが、
途中で廊下の窓から見えるところにある。
ここから中の様子まで分かるとは思えないが、何となく部室の方に目をやると、
不思議なことに部室のカーテンは完全に閉められていた。
みくる「部室の窓にカーテンなんてあったかな…」
キョトンとしながらつぶやき、無意識に歩を早めた。
39 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中[sage] 投稿日:2008/06/18(水) 20:21:13.31 ID:mEl9Nkzf0
部室の前にたどり着くと、ドアの前に鶴屋が立っていた。
鶴屋「やっ!来たね〜みくる!」
ニヤニヤと笑いながら鶴屋が声をかける。
みくる「つ、鶴屋さん?どうしてこんなところに?」
鶴屋「えっへへ〜!まぁ細かい事は気にしな〜い!」
みくる「え、えっとぉ…」
鶴屋「さぁさ!早く部室に入って入って!皆が待ってるよぉ〜!」
みくる「皆…?」
40 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中[sage] 投稿日:2008/06/18(水) 20:22:07.02 ID:mEl9Nkzf0
少し不安に駆られつつも、鶴屋に背中を押されたみくるはドアノブに手をかける。
その時、中から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
キョン「本当にこのまま上手くいくのか?」
古泉「大丈夫です。彼女の性格なら、何の警戒も無く入ってくるはずです。」
キョン「そうか…よし、手はず通りにな。」
古泉「はい。」
みくる(…?)
はっきりとは聞こえなかったが、何かを相談しているようだった。
刹那の逡巡も空しく、鶴屋の強引さに負けたみくるは
成す術もなくドアノブを握る手に力を込めた。
49 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中[sage] 投稿日:2008/06/18(水) 20:27:40.42 ID:mEl9Nkzf0
パンッ!パパパッパンッ!
みくる「きゃっ!」
鶴屋に押されながら部室の中に入ったみくるを最初に迎えたものは、
大きなクラッカーの音だった。
全員「誕生日おめでとう〜!!」
みくる「!?」
鶴屋「あっはは!驚かせてゴメンよ、みくる!」
ハルヒ「みくるちゃん、あなたを驚かせるために、今まで内緒にしてたの。」
キョン「余興のつもりで、皆で素っ気無い態度にしてたのですが…許してください!」
古泉「やれやれ、あなたは冷たすぎでしたね〜」
キョン「おまっ…!?」
長門「ワロス」
みくる「…っ!」
52 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中[sage] 投稿日:2008/06/18(水) 20:35:27.72 ID:mEl9Nkzf0
女生徒A「教室でも冷たくしちゃってゴメンね〜!」
女生徒B「鶴屋さんにキツく言われててね!」
鶴屋「いや〜!ハルにゃんに計画を聞かされた時は楽しかったけど、実際に冷たくす
るのは辛かった!」
みくる「…」
ハルヒ「さぁ、ローソクに火をつけるわよ!」
特大のショートケーキに立てられた17本のローソクに火が灯る。
キョン「よし、電気消すぞ〜」
誰もがみくるが喜んでいると思った。
俯いた彼女の姿は、感動のあまり泣いているのだと思われていた。
ところが、電気を消そうとしたキョンの指を止め、
その場の空気を凍りつかせたのは、他ならぬみくるの一言だった。
みくる「…ふざけないで。」
59 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中[sage] 投稿日:2008/06/18(水) 20:44:18.96 ID:mEl9Nkzf0
みくる「…私を馬鹿にしてるんですか?」
みくるはこれまでの辛さから解放された安堵感から、
次第に強い憤りを感じるようになっていた。
余興だとしても、あまりにも残酷だった。
ただ冷たくするだけではない、彼らは自分をひどく傷つけたのだ。
自然と怒りの篭った瞳を見せ付けられ、
賑やかだった室内の空気は一変した。
ハルヒ「み、みくるちゃん、そんな怖い顔しないでよ!」
鶴屋「そーだよっ!ちょっとやり過ぎたとは思ったけどさっ!」
キョン「皆は、朝比奈さんを喜ばせようとs」
みくる「うるさいっ!!」
62 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中[sage] 投稿日:2008/06/18(水) 20:49:09.56 ID:mEl9Nkzf0
彼女はまだ若くして、時空を超えた重要な任務をこなさねばならない。
決して面には出さないが、重責に耐える心の苦痛はとても大きい。
その上ここ数日の仲間達からの嫌がらせは、あまりにも過酷だった。
彼らが実際に何を意図したかは関係ない。
もはや彼女の心労は限界に達した。
これまでの仕打ちとは打って変わって、笑顔で迎えようとする彼らは、
自分を嘲笑っているようにしか見えない。
彼女は狂気と化した。
68 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中[sage] 投稿日:2008/06/18(水) 20:55:39.24 ID:mEl9Nkzf0
みくるには、自らが所属する未来の組織から
唯一与えられている武器がある。
ただし緊急時の自己防衛や、観察対象であるハルヒの警護など、
その用途は限られていた。
だが、今の彼女にその制約は意味を為さない。
ひたすら耐えてきた彼女の心は硬かったが、
同時に脆くもあったのだ。
怒りに我を忘れた彼女は、ついにその武器を使ってしまった。
突然煌く閃光が、部室内の全ての者を襲う。
あまりにも明るく、そして想像を絶する熱さを伴う…
その武器とは…
…「みくる☆ビーム」
71 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中[sage] 投稿日:2008/06/18(水) 20:58:41.13 ID:mEl9Nkzf0
みくるが我に返ると、そこにはいつもと違う部室があった。
床に倒れ意識を失っていた彼女は、
半身を起こすと周囲を見渡した。
派手に装飾された壁面。
美味しそうな料理がいくつも並ぶ机。
すでに火の消えたローソクが立つ大きなケーキ。
足元には、鳴らされたクラッカーから飛び出した
色とりどりのテープが散っている。
そして、そこには彼女以外に誰もいなかった。
75 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中[sage] 投稿日:2008/06/18(水) 21:07:40.35 ID:mEl9Nkzf0
照射された攻撃対象のみを選別的に消滅させる。
それが「みくる☆ビーム」の力だ。
我を失ったみくるは、怒りに任せこれを使ってしまった。
自分を祝おうとしてくれた友人たちに。
確かに彼らの「余興」は度が過ぎていたと思う。
今でもあの残酷な仕打ちを思い出すと、胸が苦しくなる。
しかし何も殺す…存在を抹消する必要は無かった。
冷静になった彼女は愕然とした。
自分の犯した取り返しのつかない罪を目の当たりにし、
次に自らに対して恐怖を覚えた。
みくる「うっ…ふえぇ……ぅうぁっ…」
嗚咽を漏らしながら、双眸から落ちる雫で床を濡らした。
84 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中[sage] 投稿日:2008/06/18(水) 21:16:47.47 ID:mEl9Nkzf0
関係のないところで蓄積していたストレスを、
彼らに全てぶつけてしまった。
何度後悔しても、彼らは蘇らない。
時空移動で過去に戻り、自らを止めようとも考えたが、
自分が誰にも止められなかったということは、
何らかの理由でそれが不可能になるということだ。
いつの間にか外は完全に暗くなり、時計の針は19時を回っていた。
気を失っていた時間は思いのほか長かったようだ。
部活が終わって帰宅する生徒も残り少なく、
そろそろ巡回の警備員が旧校舎にも回ってくる。
ゆっくりと立ち上がったみくるは、ひとまず学校を出る事にした。
93 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中[sage] 投稿日:2008/06/18(水) 21:23:33.51 ID:mEl9Nkzf0
部室をそのままにして、逃げるように学校を出たみくるは、
帰り道の途中にある公園にいた。
ベンチに腰掛けた身体は力なく垂れ、
俯いたままの顔は生気を失っているかのようで、
その瞳には光が宿っていない。
…と、そこへ近づいてくる人影があった。
すぐ近くに来るまで気付かなかったみくるは、
顔を上げてその姿を目にし、言葉を失った。
長門「あなたの犯した罪は重い。」
みくる「……っ!」
97 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中[sage] 投稿日:2008/06/18(水) 21:32:51.23 ID:mEl9Nkzf0
みくる「い、生きて…いたのですか…」
安堵とも恐怖ともとれる複雑な気持ちを抱きながら、みくるは呟いた。
長門「私はあなたの攻撃によって、一度は消滅した。」
みくる「ど、どういう…」
長門「あなたは知っているはず。私は情報統合思念体によって作られた存在。」
みくる「…つまり、再度造り直してもらったのですか…?」
長門「そう。」
長門「しかし情報統合思念体によって情報の再構築が可能なのは、彼らによって作り出された私のみ。」
みくる「…」
長門「SOS団の他の団員と、あなたの級友たちは蘇らない。」
みくる「私は…っ」
声を出そうとしたみくるの喉元を、
その小ささからは想像も出来ない力で
長門の手が掴み、彼女は小さく囁いた。
長門「彼も…」
104 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中[sage] 投稿日:2008/06/18(水) 21:43:22.66 ID:mEl9Nkzf0
苦しそうに顔を歪めながらも、みくるは長門の声を聞いていた。
長門「涼宮ハルヒの存在が消滅したことにより、情報爆発の発生も確認されなくなった。」
みくるの喉を掴んだまま、長門は淡々と言葉を紡ぐ。
長門「自律進化の可能性を失った情報統合思念体は、もはやこの惑星に興味がない。」
透き通るように澄んだ声で、ひたすら話し続ける。
長門「私もまた、涼宮ハルヒに関する最終確認を終えれば、存在の情報結合を解除される。」
ようやく手を離され、苦しさから解放されたみくるは、
息を切らしながら訊ねる。
みくる「…私を…っ殺すの……っですか…っ?」
長門「インターフェースとして造られた私は、人間の殺害を許可されていない。ただ…」
みくる「ただ…?」
長門「あなたが犯した罪の重さ、そしてあなた自身が失ったものの大きさを、忘れさせない。」
109 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中[sage] 投稿日:2008/06/18(水) 21:52:28.19 ID:mEl9Nkzf0
突然、長門の手がみくるの額に当てられ、そのままベンチに押し倒した。
長門「あなたの記憶の情報因子を操作する。」
みくる「…っ!?」
長門「あなたは忘れる事は出来ない。毎日、夢の中で彼らと出会う。」
それだけ言うと長門は手を放し、すぐに踵を返した。
みくる「わ、私…っ何を…っ」
脳に直接加えられた操作のショックで、みくるは驚いた表情のまま動けない。
長門はそれを無視して歩いて行き、やがて公園の暗闇に溶けていった。
111 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中[sage] 投稿日:2008/06/18(水) 22:01:55.53 ID:mEl9Nkzf0
―1年後。
ハルヒの存在の消滅により、時空間に大きな歪みが生じたため
みくるは未来に帰る事も出来なかった。
この時間平面に永住するしかなくなったみくるは、
これまで通っていた高校を辞め、遠く離れた地で働いていた。
未来の組織からの資金供給も不可能になり、
身寄りのない彼女は独りで生きていくしかなかったのだ。
絶望の中、それでも彼女は自ら死のうとは考えなかった。
最後まで苦しみながら生きることが、償いだと思った。
今でも、あの時の長門が言った通り、
毎日の夢の中で彼らと出会う。
毎日変わらない状況で、変わらない表情の彼らと出会い、
そして目が覚めた時に彼らを消した自分を認識する。
116 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中[sage] 投稿日:2008/06/18(水) 22:10:24.83 ID:mEl9Nkzf0
あくまで任務として送っていた、日常。
ありふれたものとして考えていた、日常。
しかし、その日常の中には、自分が求める全ての幸せが詰まっていた。
もう後戻りが出来ないところまで来て、今更その事に気付いたのだ。
あの頃の自分がいかに幸せであったか。
そして、それを自ら壊した自分がいかに愚かであったか。
みくる「寂しい…」
光の差す事のない心で苦しみながら、
本当に純粋な気持ちを、彼女は呟いた。
終
121 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中[sage] 投稿日:2008/06/18(水) 22:13:15.90 ID:mEl9Nkzf0
とんでもない繋がりでしたが、最初からだいたい考えてました。
せっかくレスしてくれたのに反応せずに続けるのは悪いと思ってたのですが、
むしろ余計なことをしてしまいました。すみません。
今回が初投稿でしたが、もっと良いものを書けるように頑張ります。
読んでくれた方々、ありがとうございました。ノシ