1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/31(土) 13:43:17.48 ID:xOOpsLrd0
戦艦長門(長)「長門です」
長「今日もアメリカの人達の船を砲撃する仕事が始まります」
長「戦うために海に出るのはまだちょっと怖いけど」
長「大日本帝国の皆さんのためにがんばりますので、どうか応援してください」
見ての通りエロはない。
3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/31(土) 13:45:17.28 ID:xOOpsLrd0
長「晴れ渡った空の下、わたしは乗員さん達と共に戦場へと出航しました」
長「波に揺られて進みます」
長「ゆらゆらゆー」
長「ほっこり幸せ気分です」
長「………」
長「はっ!」
長「寝てませんよ」
長「………ホントダヨ」
4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/31(土) 13:46:44.42 ID:xOOpsLrd0
長「周りはポカポカお昼寝日和ですが、眠るわけにはいきません」
長「当たり前です。わたしが眠ると大変です」
長「操縦………は乗員さんがやってくれます」
長「敵影………は乗員さんが見つけてくれます」
長「武器………の点検は当然乗員さんの仕事です」
長「………」
長「おやすみなさい」
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/31(土) 13:49:07.98 ID:xOOpsLrd0
長「起きたら夜でした」
長「昼夜逆転です。生活リズムの乱れです」
長「このままだとわたし、ニートになってしまうかもしれません」
長「明日からは規則正しい生活をしようと夜空の星に誓います」
長「………」
長「すごく綺麗な星空です」
長「昼夜逆転もいいものですね、はい」
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/31(土) 13:52:32.12 ID:xOOpsLrd0
長「戦場に着きました」
長「もう戦闘は始まっているらしく、あちこちで爆発音が響いています」
長「怖いです。心と体の震えが止まりません」
長「体の方はただのエンジンの振動ですけど」
長「乗員さんが落ち着くように3回ほどわたしの体を叩きました」
長「鳴り響く金属音。そんなわたしを生み出した音を聞いているうちに、心の震えは止まりました」
長「止まったのなら、後は進むだけです」
長「がんばりましょう」
長「長門です」
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/31(土) 13:55:31.82 ID:xOOpsLrd0
長「わたしの砲撃が敵の船に当たりました」
長「爆発です」
長「でも別に芸術だとは思えません」
長「でもでも、乗員の人がよくやったと褒めてくれるのは嬉しいです」
長「だからがんばります」
長「爆発です」
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/31(土) 13:58:14.40 ID:xOOpsLrd0
長「今、敵の砲撃がわたしのすぐ近くを飛んで行きました」
長「ちょっとずれたら当たっていたと思います」
長「額を冷や汗が流れ落ちます」
長「額なんてありませんけど」
長「汗も出せませんけど」
長「まあ、そんな気分なんです」
長「爆発するところでした」
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/31(土) 14:03:02.77 ID:xOOpsLrd0
長「港に帰ってきました」
長「乗員の皆さんがわたしの体を綺麗にしてくれます」
長「思わず『ふいー』などというオヤジくさい溜息を吐いてしまいます」
長「吐けないですけど」
長「今日沈めた船の数を皆さんとても嬉しそうに話しています」
長「聞いているわたしも嬉しくなってきます」
長「みんな、いい人達です」
長「明日もがんばりましょう」
長「長門でした」
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/31(土) 15:16:22.43 ID:xOOpsLrd0
長「わたしの友達が魚雷にやられました」
長「敵を全て追い返した後で、沈んでいく友達を見送ります」
長「乗員の方は皆敬礼をしています」
長「手がないわたしには敬礼は出来ません」
長「それでも何かしたいと思いました」
長「主砲を一発、空に向けて撃ちました」
長「砲弾は、どこかも分からないどこかへ、飛んでいってしまいました」
22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/31(土) 15:17:42.28 ID:xOOpsLrd0
長「わたしは港に帰ってきました」
長「でも、友達はもう帰ってきません」
長「不思議な感覚です」
長「とても嫌な感覚です」
長「寝ましょう」
長「明日も幸せでありますように」
長「明日は、幸せであれますように」
23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/31(土) 15:19:21.74 ID:xOOpsLrd0
長「敵攻撃機の爆撃が当たりました」
長「沈むほどの事はありませんが、少しだけ体が破壊されました」
長「痛いです」
長「嘘です。わたしに痛覚神経はありません」
長「わたしの体の破壊された場所で、乗員の方が血を流して死んでいました」
長「不思議な感覚です」
長「とても嫌な感覚です」
長「もしかしたら、これが痛いという事なのでしょうか?」
長「………痛いです」
長「………すごく、痛いです」
24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/31(土) 15:22:23.96 ID:xOOpsLrd0
長「港に帰って、考えました」
長「砲撃を受けると、人は死にます」
長「痛かったです」
長「アメリカの人達も、痛かったですか?」
長「分かりません」
長「………分かりません」
長「戦艦のわたしには、分かりません」
26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/31(土) 15:24:56.10 ID:xOOpsLrd0
長「わたしの壊れた体を港の人達が修理してくれました」
長「いい人達です」
長「優しい人達です」
長「なのに、どうして戦争なんてするんでしょうか?」
長「あんな『痛い事』をどうして続けられるんでしょうか?」
長「知りたいです」
長「教えてください」
27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/31(土) 15:27:39.88 ID:xOOpsLrd0
長「長門です」
長「今日もアメリカの人達の船を砲撃する仕事が始まります」
長「本当はこんな仕事、もう続けたくありません」
長「わたしはニートになりたいです」
長「でも、砲撃しないとわたしの内部にいる人が死んでしまいます」
長「みんな、優しい人達です」
長「だから、がんばります」
長「がんばらないといけません」
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/31(土) 15:29:01.32 ID:xOOpsLrd0
長「砲撃します」
長「当たりました」
長「爆発です」
長「ごめんなさい」
長「ごめんなさい」
長「ごめんなさい」
30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/31(土) 15:31:17.68 ID:xOOpsLrd0
長「爆撃を受けました」
長「わたしの体が壊れました」
長「中の乗員の方が死にました」
長「死んで、しまいました」
長「ごめんなさい」
長「ごめんなさい」
長「ごめんなさい」
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/31(土) 15:34:22.01 ID:xOOpsLrd0
長「日本が負けました」
長「戦争に、負けました」
長「もう、戦わずにすみます」
長「もう、痛くなる事はないと思います」
長「嬉しいです」
長「負けた事とかはどうでも良くて」
長「今はただ、嬉しいです」
34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/31(土) 15:36:53.64 ID:xOOpsLrd0
長「戦争中、爆撃で壊れた箇所がたくさんあります」
長「早く直さないと、わたしは完璧に壊れてしまうでしょう」
長「でも、戦争はもう終わりました」
長「だからわたしも、もう終わるべきなんでしょう」
長「許されるなら、どうかこの港で………」
長「このまま………」
35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/31(土) 15:39:03.17 ID:xOOpsLrd0
長「乗員の方達と最後のお別れをします」
長「『直してやれなくてゴメンな』と言われました」
長「『上手く操縦してやれなくてゴメンな』と泣かれました」
長「皆さん、いい人達ばかりです」
長「生き残ってくれて、ありがとうございます」
長「これからもがんばって、生きてください」
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/31(土) 15:42:39.53 ID:xOOpsLrd0
長「乗員の方達はいなくなりました」
長「わたしはもう、朽ちて沈むだけです」
長「願わくば、この港に沈みたいです」
長「これくらいの希望なら、なんとか叶わないでしょうか?」
長「この程度の幸せなら、望んでもいいでしょうか?」
長「お願いします」
長「ごめんなさい」
長「お願いします」
39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/31(土) 15:45:26.35 ID:xOOpsLrd0
長「アメリカの人達が、大勢でわたしに乗り込んできました」
長「どうやら出航するようです」
長「あの真暗な海の底が、わたしの最期の場所みたいです」
長「わたしはここで、朽ちて果てたいけど」
長「でも、我侭は言えません」
長「望みは、叶いませんでした」
長「それだけの事です」
長「出航します」
長「長門です」
44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/31(土) 15:51:09.98 ID:xOOpsLrd0
長「どうやらわたしは新型爆弾の実験に使われるようです」
長「アメリカの人達がそう言っていました」
長「その中に、わたしの砲撃で死んだ人の友人がいました」
長「『こいつを動かしてると思うと反吐が出る』と言っていました」
長「痛いです」
長「でも、がんばります」
長「わたしは、殺しました」
長「いっぱい、いっぱい、殺しました」
長「償いになるかどうかは分からないけど」
長「でも、だから、せめて、がんばります」
長「がんばります」
45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/31(土) 15:53:58.36 ID:xOOpsLrd0
長「実験場につきました」
長「アメリカの人達も、わたしの中から出て行きました」
長「周りには、わたしと同じ船がたくさんあったけど」
長「だけど、わたしは、一人になりました」
長「正確には、一隻ですけれど」
長「もう、どうでもいい事ですよね」
46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/31(土) 15:58:29.18 ID:xOOpsLrd0
長「実験が始まりました」
長「1発目です」
長「いきなり、爆発するところでした」
長「熱いです」
長「体が内側から融けていく感じがします」
長「でも、がんばります」
長「わたしには、それしかできませんから」
長「あ、2発目がくるようです」
長「がんば………」
長「………」
長「………」
48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/31(土) 16:02:37.87 ID:xOOpsLrd0
長「夜です」
長「わたしはもう、ボロボロです」
長「おそらくもう、朝日を見る事はないでしょう」
長「すごく綺麗な星空です」
長「こんな綺麗な星空の下なのに、どうして戦争なんかが起こるのでしょうか?」
長「彼等は、何を間違えたのでしょうか?」
長「わたしは、何を間違えたのでしょうか?」
長「もし、生まれ変われるのならば」
長「今度は戦艦なんかじゃなくて」
長「武器なんか載せないで、幸せな笑顔をたくさん乗せて」
長「幸せな、笑顔と共に」ボキッ
49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/31(土) 16:04:08.15 ID:xOOpsLrd0
長「………あ」メリメリッ
長「どうやら、もうダメみたいです」
長「がんばったけど、ダメみたいです」
長「長門です」
長「長門でした」
長「さよなら」
長「ごめんなさい」
………
………ぽちゃん
51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/31(土) 16:15:09.07 ID:xOOpsLrd0
長門「………ん」ぱちっ
キョン「おう、やっと起きたか、長門」
長門(………今のは、夢? ………あ)
キョン「しかし、お前が部室で寝てるってのも珍しいな。まあ、いい事だと思うけどな」
キョン「普通の日常が一番だ。ナポレオンも辞書には載せなかったようだが、きっとそう思っていたに違いない」
長門「情報生命体の存在していた痕跡が残っている」
キョン「………高速か? いやむしろ光速か? どちらにせよ、一気に普通から遠ざかりやがったな」
長門「痕跡だけ。もういない」
キョン「そか、なら音速あたりにまけておくとして、だ。その情報生命体とやらは、ほっといて大丈夫なものなのか」
長門「大丈夫。もう消滅した」
キョン「ん、まあお前がそう言うなら大丈夫だろうな」
キョン「………で、結局そいつは暇空気100%なこの部室で、一体何をしていたんだ」
長門「自己の消滅と引き換えにその存在情報を触媒として、並行世界の一個体の感覚情報を領域内の別の一個体に伝達していた」
キョン「ニホンゴデオネガイシマス」
52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/31(土) 16:16:30.25 ID:xOOpsLrd0
長門「………ようするに」
長門「わたしは、夢を見ていた、そういう事」
キョン「そか。ちなみにどんな夢だったんだ」
長門「………」
長門「………よく分からない」
長門「でも、優しい夢だったと思う」
キョン「………そっか」
長門「だから」
長門「覚えていようと、わたしは、そう思う」
キョン「そっか」
長門「そう」
長門「長門です」
長門「長門でした」
長門「さようなら」
長門「ありがとう」
54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/31(土) 16:18:23.53 ID:xOOpsLrd0
その日の帰り道
長門「………あ」
キョン「何だ? いきなり立ち止まって」
長門「見える?」
キョン「………お前の視線の先には、幸せそうに笑っている家族連れしかいないようだが」
キョン「まさか、あのハッピー光線絶賛放出中なファミリーが実は情報生命体だ、なんて言いだすんじゃないだろうな」
長門「違う。彼女達は間違いなく一般人」
長門「………少なくとも、この世界では」
キョン「帰り道の信号のように引っかかりまくる、余計な付け足し台詞をどうもありがとう」
55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/31(土) 16:20:03.67 ID:xOOpsLrd0
長門「幸せそう?」
キョン「え、誰がだ」
長門「彼女達は、幸せそう?」
キョン「ああ、あの家族連れか」
キョン「よく知らんが、幸せなんじゃないか」
キョン「笑ってるしな」
長門「………そう」
長門「なら」
長門「これはきっと、幸せな結末」
新ジャンル「幸せな長門」 〜終〜
59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/31(土) 16:25:42.95 ID:xOOpsLrd0
終わります。
支援・保守に感謝。
引き続き 新ジャンル「わたしの殺し屋さん」 をお楽しみください。
………嘘ですが。