1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/24(木) 19:23:25.10 ID:G8YZ42ZY0
長門『メールの練習をしたい』
キョン「届いてるぞっと」
メールを打っている間に、またメールが届く。
長門『届いてる?』
キョン「あー届いてるって」
送信ボタンを押す。
さすが長門だ。もうメールを打つのに慣れたのか。
長門から即座に返信が返って来る。
長門『届いて良かった』
授業中にも携帯がブルブルとなっていた。
電源を切るのを忘れていたらしい。こっそりと覗いてみる。
また長門からだ。
長門『さっきの最後のメールは届いてる?』
キョン「・・・」
3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/24(木) 19:25:45.81 ID:G8YZ42ZY0
何だか俺が返信しないと長門はずっとメールを送ってくる予感がする。
これは後で部室でよく教えておかないとな。
休み時間になってメールを返す。
キョン「届いてるぞっと」
昼休み部室に行くと長門がいた。
本の代わりに携帯をいじっているという世にも珍しい姿であった。
長門「この携帯電話には写真を撮るという機能もついている」
キョン「今の携帯じゃ当たり前だな。お前にも撮りたいものがあるのか」
長門「あなた」
キョン「俺か?俺でいいなら好きなだけ撮っていいぞ」
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/24(木) 19:27:53.83 ID:G8YZ42ZY0
長門は黙って携帯を俺に向けるとチャララーンという音を連発させて何枚か写真を撮った。
キョン「満足か」
長門「またいずれ撮るかもしれない」
キョン「今度は別の被写体にでもしろよ。俺も照れくさいからな」
長門「了解した」
放課後も長門は携帯をチラチラと見ていたが、そんな長門の様子を珍しそうにハルヒが見ていた。
家に帰ると、長門から着信が入っていた。
7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/24(木) 19:29:49.88 ID:G8YZ42ZY0
キョン「もしもし」
長門「何度かかけた」
キョン「そ、そうなのか。気付かなかったよ」
長門「長文のメールの練習もしたいので、今夜は何度かメールを送ることになると思う」
キョン「ああ。俺メール返すの遅いから返すの遅くても気にしなくていいぞ」
長門「了解した」
電話を切るとすぐにメールが届く。
長門『テスト』
添付画像が送付されている。
いつも通りの無表情な長門の正面の顔写真が入っていた。
長門『写真の添付は成功している?』
キョン『成功だ。間違いなく届いてる』
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/24(木) 19:33:21.69 ID:G8YZ42ZY0
長門『良かった。また何か送ってみる。画像の容量に制限かないか調べる必要もある。
またファイルが添付されているメールの受信というものをしたことがないので、
あなたも何かファイルを添付させて送ってほしい』
キョン『分かったよ』
妹がたまたま部屋に入ってきたので、一枚写真を撮ると、それを添付して長門に送信する。
長門からは特に返信らしい返信はなかったが、
その後、夜遅くまで何度も長門からは顔写真が送られてきた。
途中で返信するのが面倒になった俺は携帯を放置したまま眠りについた。
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/24(木) 19:34:44.06 ID:G8YZ42ZY0
翌日、教室でハルヒが話しかけてきた。
ハルヒ「有希が携帯買うなんてね。意外だったわよ」
キョン「まあ持ってないよりは便利だろうな」
ハルヒ「でさ、私の見間違えかもしれないけど、壁紙があんたの写真だったわよ」
なぜか俺を直視しようとせずに窓の外を見ながらハルヒはそう言った。
キョン「そういや俺の写真撮ってな。他に壁紙にする写真がないんじゃないのか」
ハルヒ「ふーん」
なぜか急に不機嫌になったハルヒを無視して俺は谷口たちのところへ行った。
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/24(木) 19:37:15.32 ID:G8YZ42ZY0
放課後、ハルヒは部室に入ってくるなりすぐに長門の手から携帯を取り上げた。
ハルヒ「有希!携帯買ったのね。どう?使い方とか分かる?」
長門「問題ない。順調に使い方を学習している」
ハルヒ「受信メールチェック!」
キョン「おいおいやめとけよ。長門のプライバシーだ。そこから先は俺が許さん」
長門「別に構わない」
ハルヒ「有希がいいって言ってるんだからいいじゃない」
キョン「ダメだ。携帯を勝手に見るとか、マナー違反もいいところだぞ。長門も怒れ」
長門「……」
18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/24(木) 19:39:14.03 ID:G8YZ42ZY0
ハルヒ「それにしても何で壁紙がキョンなのよ」
まだ俺の写真が壁紙だったのか。
長門「壁紙の設定の変更方法については、まだ完全に把握していない」
ハルヒ「じゃあ私が変えてあげるわ」
長門「いい」
珍しい長門の拒否だった。
ハルヒも目を大きく開いて長門を見つめる。
古泉は意味ありげにニヤニヤと笑っている。
ハルヒ「ふーん。まあいいわ。有希がそれでいいんならね。
あら、受信メール全部キョンだけじゃない!あんたどんだけ有希にメールしてんのよ。
内容までは見ないでおくから感謝しなさい。ただし有希に変なメール送ってたら承知しないわよ」
キョン「あーそれは長門が練習台に俺の携帯を使ってるんだ。
まだメールとかの送り方がいまいち分かってないみたいでな、長門」
長門「そう」
23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/24(木) 19:42:50.06 ID:G8YZ42ZY0
ハルヒ「別に私に送ってくれてもいいわよ。古泉くんとかでも」
古泉「僕の方は、いつでも大丈夫ですよ」
長門「いい」
そろそろハルヒを止める頃だなと判断し、俺はハルヒから長門の携帯を取り上げた。
ハルヒ「あーもう!つまんない。もっと見せてよ」
キョン「ダメと言ったらダメだ。長門、今後携帯は他人に見せたらダメだぞ」
長門「了解した」
翌日、部室で長門はもう携帯はいじっていなかった。
いつも通り本を読んでいる。ハルヒに奪われる危険性を考慮しているのだろう。
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/24(木) 19:45:36.10 ID:G8YZ42ZY0
ハルヒ「遅れてごめーん」
イライラした顔をしながらハルヒはいつもの団長席に座ると、
ジロジロと長門を見つめている。
ハルヒ「あーそうだ、キョン、教室に忘れ物したから取りに行ってよ」
キョン「自分で行けよ」
ハルヒ「私は忙しいの!早く取ってきて!私の机の上にあるノートね。
あんたは雑用係りなんだから、これくらい当然よ」
キョン「はいはい」
こういうときは言い争っても無駄だ。
仕方なく俺は部室を離れた。
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/24(木) 19:47:37.40 ID:G8YZ42ZY0
部室内
ハルヒ「邪魔者は消えたわ。ねえ有希」
長門「何」
ハルヒ「携帯見せてよ」
長門「……」
ハルヒ「いいじゃない。キョンの言うことなんて気にしなくていいのよ。
団員たるもの、隠し事はなしよ」
長門「……」
ハルヒ「力づくで奪いたくはないんだけど」
長門「……」
ハルヒ「早く渡しなさいよ」
長門「了解した」
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/24(木) 19:49:03.94 ID:G8YZ42ZY0
ハルヒ「最初から素直に渡せばいいのよ。
あれ、まだ壁紙キョンなんだ。へ〜。有希ってキョンの写真ばっか保存してるじゃない」
長門「……」
ハルヒ「キョンってこういう返信もするんだ。
あ、キョンには私が受信メールとか内容見てるの言ったらダメよ」
長門「分かった」
ハルヒ「あ!」
長門「?」
ハルヒ「ごめん有希!写真全部消えちゃったわ!これ最新携帯だからいまいち使い方分からないのよね、
お詫びに私がとびっきりの風景を写真に撮ってくるから、それ壁紙に設定してあげるわね」
長門「……」
51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/24(木) 19:51:50.48 ID:G8YZ42ZY0
部室に戻ると、ハルヒはいなかった。長門だけが本を読んでいたが、
いつもと様子が違った。
ひどく元気がないように見える。
キョン「どうかしたか?長門」
長門「何も」
明らかに無理をしている感がある。
キョン「ウソはやめろ。何かあったんだな」
長門「涼宮ハルヒにあなたの写真を全て削除された。壁紙も変更すると言って携帯を取り上げられた」
キョン「またあいつ勝手なことを……」
長門「この件について、私は悲しいと感じた」
キョン「まあ、写真なんていつでも撮りなおせるからな。
しかも俺の写真なんて何の価値もないだろ」
長門「価値はある。私にとって」
キョン「そう言ってもらえると嬉しいが……」
長門は液体ヘリウムのような目で俺を見つめている。
その目が今にも泣きそうに見えるのは気のせいだろう。
63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/24(木) 19:56:25.12 ID:G8YZ42ZY0
キョン「それに、もっと他にも面白い写真とかあるだろ。
ハルヒの奴が今撮りに行ってる写真とかなかなか凄いのが撮れるかもしれんぞ。
あいつはそういう才能にかけてはずば抜けてるからな」
長門「それでは意味はない」
キョン「そうなのか?」
長門「私が自分の意思で撮った、あの瞬間の写真、というのに意味がある」
キョン「よく意味は分からんが。まあ思い出を残そうっていう意味でも
人は写真を撮りたがるもんだからな」
長門「思い出という意味でもあの写真には意味があった」
長門はもう本を読むのを完全にやめている。
77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/24(木) 19:59:12.17 ID:G8YZ42ZY0
長門「昨日、送った写真……どうしてる?」
キョン「ああー長門の写真な。あれテストで送ったんだろ?
保存はしてないけどちゃんと届いてるよ。
いつものお前の顔だった」
長門「そう……」
キョン「ハルヒに見つかるとうるさそうだから全部消しちまったがいいか?
お前にも迷惑かかるしな。厄介なことになる予感がするんだ」
長門「消さなくていい」
キョン「いや、消した方がいい。あいつ俺の携帯も取り上げようとすることあるからな」
俺としても、長門の写真を消すのには抵抗を感じたが、
最近俺の携帯を事あるごとに取り上げようとするハルヒの奴の行動を考えると、
無難な選択だと思われた。
俺は長門の目の前で携帯から写真を消していった。
長門「……」
長門は突然立ち上がると、本を床に落として、
そのまま部室からいなくなった。
90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/24(木) 20:03:58.97 ID:G8YZ42ZY0
キョン「な、何だあいつ……」
その後ハルヒが戻ってきた。
ハルヒ「あれ?有希は?」
キョン「さあ。帰っちまった」
ハルヒ「まあいいわ。携帯、有希に返しといて。
最高の写真が撮れたから、きっと有希も喜ぶに違いないわ」
キョン「俺から携帯返すのか?」
ハルヒ「いいじゃないそんくらい」
キョン「分かったよ」
その後ハルヒは用事があると言って部室を出て行った。
入れ替わりに朝比奈さんが入ってきた。
96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/24(木) 20:08:04.68 ID:G8YZ42ZY0
みくる「あれ?長門さんはいないんですか?」
キョン「ええ。何か珍しく体調が悪そうでしたよ」
みくる「何かあったんですか?」
俺は事の顛末を朝比奈さんに語った。
話し終えると、朝比奈さんは珍しく恐ろしい顔で俺をにらみつけた。
みくる「ううう……キョンくんのこと正直見損ないました……」
キョン「な、何ですとー?!」
みくる「最低です……」
キョン「ちょっと心外ですよ」
みくる「本気で言ってるんだとしたらもっと最低です」
古泉がそこに入ってきた。
古泉「どうかされましたか」
みくる「ううう……キョンくんがry」
古泉「これは酷い……」
105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/24(木) 20:12:28.29 ID:G8YZ42ZY0
みくる「とにかく長門さん家にすぐに行ってあげてください」
キョン「分かりましたよ……」
俺も朝比奈さんにだけは嫌われたくないからな。
古泉まで俺を深刻な顔をして睨みつけている。
古泉「一分でも早く行くことですね。
また世界の改変なんて事態になったら、これはあなたの責任ですよ。
今度ばかりは僕も助けられません」
キョン「分かった!分かったから!それじゃあちょっと行って来る」
何で俺が二人に責められるんだ?
疑問符だらけのまま俺は長門のマンションを目指した。
110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/24(木) 20:17:50.75 ID:G8YZ42ZY0
長門のマンションに到着する。
キョン「長門、いるかー?」
返事はない。
だが、中に長門がいるというのは何となく感覚で分かる。
キョン「携帯、返しに来たんだが」
中からは何の反応もない。
長門が居留守をしているんだろうか。
???「長門さんなら、今寝込んでいますわ」
振り返ると、喜緑さんが立っていた。
確か、この人は長門のお仲間のインターフェースではないか。
嫌な予感がする。
115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/24(木) 20:19:57.97 ID:G8YZ42ZY0
喜緑さん「うふふ。長門さんは、また例のエラーの蓄積が悪化してます。
何とか自制しようとしているので今は寝込んでしまっている状態です」
キョン「そ、そうなんですか」
喜緑さん「お話を聞く限りですと、どう考えてもあなたがエラーの元になっているようです」
キョン「違うんですよ。あいつの言うエラーってのは単なる感情のことなんです」
どうせこの人も長門と同じインターフェースだ。
人間の感情についてどこまで理解しているのか怪しいものである。
喜緑さん「法則性もあるんですよ。我々も長門さんのエラーについては、
関心を持っておりますので。例えばあなたが涼宮さんや朝比奈みくるさんと
必要以上に接触されているときなど、長門さんは小さなエラーが溜まるのです」
121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/24(木) 20:23:10.96 ID:G8YZ42ZY0
キョン「それはまるで……」
喜緑さん「有機生命体の嫉妬の感情というものに非常に近いと思われます。
私には残念ながらその辺りの細かい人間の感情は理解できませんが」
キョン「長門が嫉妬ですか」
喜緑さん「ただ、今回の場合については、私には原因不明です。
嫉妬ではないらしいですわ。直接ご本人の口から聞くのがよろしいかと。
このドアでしたら、もう既に開けておきましたから。できれば原因の特定までして頂きたいのですが」
キョン「分かりました。俺なんかで原因が分かれば」
喜緑さん「長門さんが暴走しそうになったらすぐに呼んで下さい。ここにいますので」
キョン「悪いですね。それでは行って来ます」
ドアは開かれた。
128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/24(木) 20:28:02.90 ID:G8YZ42ZY0
俺は恐る恐る中へ入ると、すぐに長門を見つけた。
長門はコタツの横で横になっていた。
見ようによっては倒れているようにも見える。
キョン「な、長門?」
長門「……」
ゆっくり近付く。
エラーでいきなり襲いかかって来られたらたまらないからな。
まあ、最悪喜緑さんがいるから大丈夫とは思うが。
キョン「おーい長門さーん?」
長門「何」
起きているのか。
すぐに長門はムクリと起き上がった。
何だか俺を睨みつけているように見えた。
136 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/24(木) 20:32:16.02 ID:G8YZ42ZY0
キョン「えーと、携帯を返しに来た」
長門「携帯?」
キョン「ほら、ハルヒに奪われてただろ」
長門「……」
キョン「な、何か不機嫌じゃないか?さっき喜緑さんからお前がエラーの蓄積で寝込んでいるって
聞いたんだが」
長門「危なかった。さっきの私は混乱状態にあった」
キョン「じゃあ、今は落ち着いてるんだな」
長門「……」
キョン「やっぱりおかしいな。
朝比奈さんに怒られたんだ。さっきは悪かったよ」
長門「……」
キョン「いや、いくら何でもお前の前でお前の写真消すってのはどうかと思ってな。
俺がバカだった」
144 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/24(木) 20:37:35.10 ID:G8YZ42ZY0
長門「本心?」
キョン「も、もちろんだ!」
朝比奈さんに言われたことを俺の言葉に言い換えてるだけなんだがな。
だが、言っているうちに何となく俺も本心から謝りたい気分になってきた。
キョン「もし、俺の写真でよければまたいくらでも撮っていいんだぞ」
長門「もういい」
キョン「いいって何が?」
長門「壁紙は涼宮ハルヒが選んだ画像が使われることになる」
キョン「あー。何か結構自信作が撮れたとか言ってたな」
長門「私としては涼宮ハルヒが撮った写真を壁紙にすることに対しては拒否したいという気持ちがある。
だが、涼宮ハルヒは私が私の意志で選んだ写真を壁紙にすることを拒否する」
キョン「何でそんなにハルヒを気にするんだ。
お前は自分が好きなようにすればいい!自分の意思ってのをお前は優先すべきなんだ」
152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/24(木) 20:45:14.64 ID:G8YZ42ZY0
長門「私がきっかけで閉鎖空間が発生するという事態もありうる」
キョン「考え過ぎだろう。そんなにハルヒが選んだ壁紙が嫌なら、
今から一緒に俺と何か撮ればいいんじゃないか。
ここのマンションの風景とかさ」
長門「出来れば、被写体はあなたが好ましい」
キョン「それは……ダメだ」
長門「なぜ」
キョン「いや、何となくな。ハルヒに見つかるとあれだ。面倒だ。
あと俺の携帯にお前の写真があるってのもまずい」
そこまで言うと、長門は再び床に倒れこんでしまった。
キョン「な、長門!」
長門「エラー……エラー……」
164 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/24(木) 20:50:37.26 ID:G8YZ42ZY0
後ろに人を気配を感じ、俺は振り向いた。
喜緑さん「どうやら、長門さんは自らをシャットダウンしてしまったようです。
休止状態に入りました。これ以上動いていると、想定外の行動をとると判断されたのでしょう。
困りました。どうやら、私もあなたも手に負えないようです。
ここは一つもっと敏感な方をお呼びして頂きたいのですが」
キョン「とりあえず朝比奈さんを呼んでみます」
俺は朝比奈さんに電話をかけた。
朝比奈さんはものの数分でやって来た。
話を聞いた朝比奈さんは俺に手痛い平手打ちを一発かました。
キョン「い、痛いです……」
みくる「最悪な行動をしましたね。キョンくん」
キョン「そ、そうらしいです」
みくる「つくづく見損ないました。はっきり私の口から言わないといけないんですか。
長門さんの気持ちを」
キョン「長門の気持ち?」
174 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/24(木) 20:56:29.72 ID:G8YZ42ZY0
みくる「もう!鈍感過ぎます!」
もう一発平手打ちだ。
痛い。何よりもグサリとくる一発だ。
みくる「真剣になって下さい。
いいですか、長門さんはキョンくんの写真を携帯に保存しておきたかったんです。
そして、キョンくんにも自分の写真を送って、同じように保存しておいてほしかったんです」
キョン「それはまさか、長門は……」
みくる「皆まで言わなくていいです。長門さんが起きたら、今度こそ本当に謝って下さい。
この際、涼宮さんのことは何にも考えないでいいです」
キョン「分かりました」
朝比奈さんはマンションの外で待つと言って出て行った。
喜緑さんは再びドアの前に待機。
俺は長門が目を覚ますのを待っている。
181 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/24(木) 21:00:06.38 ID:G8YZ42ZY0
冷静になって考えるとつくづく自分が愚かだったことが思い出される。
俺のことをSOS団の中で一番守ってくれているのは常に長門だった。
そいつのことを俺は……
キョン「長門、起きてくれ!」
長門は時折苦しそうな表情を見せるが、徐々に顔色も元に戻っていった。
キョン「目、覚めたか?」
長門「……」
キョン「今度ばっかりは俺が悪い。全面的に、俺が悪かった」
長門「私はあなたの携帯から消された」
キョン「いや、メモリとかは消してないぞ?」
長門「消去される、というのは存在を否定されるのと同義。
私はあなたにとって、存在しなくてもよい存在」
キョン「先走らないでくれ。俺はお前が存在しないなんて認めないし、
お前がいなきゃやっていけない」
長門「情報操作をすれば、私はあなたの記憶からも消えることが可能。
あなたが望むのなら実行する」
188 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/24(木) 21:07:05.39 ID:G8YZ42ZY0
キョン「話を聞いてくれ!」
長門「拒否する。あなたの話は朝比奈みくるによって作られた台本である可能性が高い。
何より、私は存在を否定された。あなたにとって迷惑な存在」
こりゃあ深刻なエラーかもしれん。
全く聞く耳をもってくれない。
長門「あなたの最優先事項は涼宮ハルヒ。あなたの意思を尊重する」
キョン「長門!」
俺は長門を抱き締めた。
ようやく長門のマシンガントークが止まった。
長門「これも朝比奈みくるの指示?」
キョン「違う!朝比奈さんは全く関係ない。全部俺の意思だ」
長門「そう」
194 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/24(木) 21:10:51.38 ID:G8YZ42ZY0
キョン「ようやく落ち着いてきたか」
心なしか長門の体が小刻みに震えてるように感じる。
キョン「これを見てくれ」
長門「それは……」
俺の携帯だった。
壁紙は長門の写真である。
キョン「お前の写真ってのも珍しいしさ、正直嬉しかった。
だから壁紙にしてたんだよ。ただ、恥ずかしいからついつい写真を保存してないとか言ってしまったり
消去したりしてしまった」
長門「そう……」
キョン「悪かった。お前の気持ちも分からずに最低だったな俺は」
長門「いい」
204 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/24(木) 21:16:23.38 ID:G8YZ42ZY0
キョン「良かったらまた俺の写真撮ってくれないか。ハルヒが怒ったら今度は俺が止める。
それで閉鎖空間が出来たら、古泉が何とかする。ハルヒのことは何も気にせず、
自分のしたいようにするんだ」
長門「それでは、あなたをもう一度撮影する。許可を」
キョン「俺でよかったらいくらでも撮ってくれ」
長門「一緒の写真も」
長門が俺の横にピタリとくっ付いて写真を撮る。
長門にしては積極的だな。
長門「これは誰にも消させない。プロテクトを施した」
キョン「本当今日は悪かった」
長門「もういい。写真も撮れた。感謝する」
長門はいつもの表情に戻っていた。
213 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/24(木) 21:21:38.10 ID:G8YZ42ZY0
長門「あなたの気持ちを知りたい」
キョン「俺の気持ちか?」
長門「私は、おそらくあなたが好きと思われる」
キョン「答えるまでもない。俺も好きだ」
長門「本当?」
キョン「本当だ。今回のことで自分が誰が好きなのかってのがよく分かったよ」
長門「私は嬉しいと感じている」
キョン「ああ。俺も嬉しいよ。それじゃ今日はこれで帰るけど、
もう大丈夫だな?」
長門「問題ない」
キョン「よし。それじゃあ今度図書館にでも行くか」
長門「了解した」
223 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/24(木) 21:30:53.99 ID:G8YZ42ZY0
マンションを出ると朝比奈さんが待っていた。
みくる「どうでした?」
キョン「大丈夫です。長門はエラーも解消されてる風に見えましたよ」
みくる「よかった」
キョン「朝比奈さんのおかげす」
みくる「ううん。でも、女の子のことは女の子に聞くのが一番ですよ」
キョン「今後の課題は、ハルヒと隠れて長門と付き合っていくってことですが」
みくる「ええ!そこまでいっちゃったんですか」
キョン「いけませんかね?でも、俺も自分の本心にはウソはつきたくなかったんで」
みくる「いえ、歓迎します」
その日はそこで朝比奈さんとは別れた。
232 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/24(木) 21:34:04.16 ID:G8YZ42ZY0
家に帰ると古泉から電話があった。
古泉「どうでしたか。長門さんは」
キョン「ああ。かわいかったぞ」
古泉「でしょうね。羨ましいですよ。それで、長門さんと今後は付き合われていくということでよろしいでしょうか?」
キョン「そうなるな。ハルヒには隠しておいたがいいだろう」
古泉「涼宮さんは、他人の恋路は邪魔をしないという認識をもっておられます。
それに賭けるとしましても、当分は隠すほうがよろしいかと。
仮に発覚して、閉鎖空間が出現しても、僕が何とかしますよ」
キョン「頼りになるな」
古泉「頼りにしてください。本音としましては、長門さんにはもっと自重してほしかったんですがね」
キョン「そういうことがエラーに繋がるんだ。あいつはあいつのしたいようにさせればいい」
古泉「まあ、あなたには逆らいませんよ」
電話は切れた。
239 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/24(木) 21:39:43.82 ID:G8YZ42ZY0
長門のマンション
長門「今日は迷惑をかけてすまなかった」
喜緑さん「お気になさらずに。元々、私は事後処理担当ですから」
長門「彼とは今後、恋人という関係になっていくものと思われる」
喜緑さん「有機生命体と恋に落ちる、というのも自律進化の閉塞状況に歯止めをかけるきっかけとなるかもしれませんね」
長門「分からない」
喜緑さん「おや、会長からお電話ですわ。もしもし。
その資料でしたら、生徒会室に入って右側の棚の上から三番目の引き出しの中です」
長門「……」
喜緑さん「会長、誰かとご一緒ですか?女性の声がしたように思われるのですが。
いえ、違うのならいいんです」
長門「会長氏は、なかなか優秀な顔立ちをしていると思われる」
喜緑さん「非常にモテる方なんですよ。女性が常に周囲から離れませんから、
最近私もそういう光景を目にするとエラーが溜まりまして、困ります」
長門「……」
244 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/24(木) 21:42:53.10 ID:G8YZ42ZY0
古泉との電話を終えると長門からメールが届いていた。
長門『今日は感謝する』
添付されているファイルを開くと、俺と長門が二人で写っている写真だった。
やれやれ、明日からの問題よりも今俺が考えることは、
長門だけが写っている写真と、この写真、どっちを壁紙にするかってのらしい。
迷うことなく俺は二人で写っている写真を選んだ。
257 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/24(木) 21:49:25.62 ID:G8YZ42ZY0
翌日以降、
長門は携帯を学校に持ってこないという手段に出たため、
ハルヒは長門の携帯がどうなったのか見れずにいる。
ハルヒがいないときは俺と長門は肩を寄せ合って座ったりしている。
朝比奈さんは苦笑を浮かべながらそんな俺たちにお茶を入れてくれる。
古泉は廊下でハルヒが来ないかを見張る担当となって久しい。
今のところ閉鎖空間は発生もせず、ハルヒにも発覚することなく
俺たちの関係は続いている。
長門「幸せ」
キョン「俺もだ」
完