226 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/09(水) 04:49:10.21 ID:o8acNG7Y0
「広死苑」 高良みゆき
みゆき「それでは、お先に失礼いたしますね……」
つかさ「あ、ゆきちゃんばいば〜い」
かがみ「あら、みゆき。なんだかちょっと元気ないんじゃない?」
こなた「え、なに? みゆきさん悩み事?」
みゆき「いえ、特にそういうわけでは……」
かがみ「ふうん、そう。何かあったら言ってね。相談にのるからさ」
みゆき「はい。ありがとうございます」
みゆき「はぁ……」
みゆき(昔は、物を覚えるのがあんなに楽しかったのに……
最近はインターネットの普及で、どんな知識でも調べればすぐに
分かってしまうのですから、なんだか覚えがいが感じられません……
誰も知らない、まったく新しい知識を得る方法はないものでしょうか……)
みゆき(あら、廊下に本が落ちていますが、誰かの落し物でしょうか?)
みゆき「これは……広死苑?」
227 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/09(水) 04:50:14.61 ID:o8acNG7Y0
みゆき(何が書いてあるのでしょう……少し、拝見させていただきます
これは……人名でしょうか。それに日付と……死因?
もしかして、今までに亡くなった方の情報が載った辞書、なのでしょうか?)
私はその本を鞄にしまい、家に持ち帰ってじっくりと読んでみました。
するとやはりそれが、世界中の色んな方々の、亡くなられた日時や状況を
事細かに書き記した辞書であることが分かりました。
歴史上の偉人や、ニュースでその死が報じられた事件の被害者、
私も葬儀に参列した親戚まで、ありとあらゆる人の死が広死苑に載っています。
228 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/09(水) 04:52:05.08 ID:o8acNG7Y0
みゆき(この辞書は一体、なんなのでしょう……?)
もしかして、これから死ぬ人の情報なんかも載っているのでは……
気になりますけど、自分や身近な人の名前を探すのは気が引けます)
アナウンサー「――今もなお、幼児と保母八人を人質にこの保育園に」
みゆき(あら、ニュース。立てこもり事件のようですね……)
アナウンサー「――警視庁は犯人を音原田九郎、無職42歳と断定」
みゆき(音原田九郎さん……すみません、調べさせていただきます)
みゆき(……やはり存命中の方までは、さすがに載ってないですね)
アナウンサー「――あっ、人質が出てきました」
みゆき(? なんだか広死苑のページに、新しいお名前が……音原田、九郎?)
アナウンサー「――今情報が入りました!!犯人は保育園内で死亡!!」
みゆき(たったいま亡くなった方のお名前が、広死苑に!?)
みゆき(この辞書、新しく誰かが亡くなる度に更新されるのですね)
229 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/09(水) 04:53:22.05 ID:o8acNG7Y0
私はこの日から、広死苑を夢中になって読みふけりました。
どんな辞書をひいても載っていない、インターネットでどれだけ検索しても出てこない、
そんな情報がこの広死苑にはたくさん書いてあるのです。
歴史の教科書に載っている人が史実と異なる亡くなり方をしていたり、
今もニュースで存命が報じられている要人が既に亡くなられていたり。
そうしたものを見つけるたびに、私は飛び上がらんばかりに嬉しくなりました。
231 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/09(水) 04:55:48.78 ID:o8acNG7Y0
みゆき「――それで、史実ではそこで亡くなったことになっているんですけど、
実際にはそうではなく、その後に大陸の方に渡ってその地で命を落とされているんですよ」
つかさ「へ、へぇ……そうなんだぁ」
こなた「むぅ…………」
みゆき「はい♪ それから、かのケネディ大統領暗殺事件の犯人とされながらも
その真相を疑問視されていたリー・ハーヴェイ・オズワルドですが、やはり――」
つかさ「ど、どんだけ〜」
かがみ「………………」
かがみ「ねぇこなた。最近のみゆき、どう思う?」
こなた「うーん。あれはちょっと、流石の私もヒクというか……」
かがみ「前みたいに落ち込むことがなくなったのはいいけど、変よね」
私は、友人達からどう思われているのかも気付かず、すっかりはしゃいでいました。
そんなある日のことです。
232 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/09(水) 04:58:19.50 ID:o8acNG7Y0
かがみ「おっす、こなたおはよう」
こなた「あ、うん……おはよ」
つかさ「どしたの、こなちゃん」
かがみ「元気ないわね。何かあったの?」
こなた「まあ、ちょっと、ね」
みゆき「あ、そういえば今日は、泉さんのお母様の命日でしたね。そのためでしょうか」
こなた「!」
かがみ「え、そうなの?」
みゆき「はい。泉さんのお母様、泉かなたさんは、今から――」
こなた「ちょっ、ちょっと、みゆきさん!」
みゆき「……はい?」
こなた「どうして今日がお母さんの死んだ日だって、知ってるの?」
233 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/09(水) 04:59:39.51 ID:o8acNG7Y0
こなた「私いままで、お母さんの命日なんて、言ったことないよね?」
みゆき「え、あの……」
かがみ「そうね。私は初耳だわ」
つかさ「私も……」
こなた「ねえ、どうして? どうして知ってるの?」
みゆき「私は、その……」
こなた「いくらみゆきさんが物知りだからって、限度があるよ。どうやって調べたの?」
かがみ「最近のみゆき、なんだか変だったものね。どんな手段を使ったのか……」
つかさ「ゆきちゃん、こわい……」
みゆき「ちがうんです! 私は、私は……」
こなた「信じられないよ、みゆきさん……」
みゆき「……わかりました、お話いたします。放課後、私の家に来ていただけますか」
234 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/09(水) 05:00:48.83 ID:o8acNG7Y0
みゆき「全て、この辞書に載っていたんです……」
こなた「広死苑?」
つかさ「うわ〜、なにかいっぱい書いてある」
かがみ「えぇ? 人の名前と……死因? うわっ、なにこれ!」
みゆき「ご理解いただけましたでしょうか」
かがみ「みゆき……あんたほんといったい、どうしちゃったの?」
みゆき「え?」
こなた「こんなの作るなんて、正気じゃないよ……みゆきさん、おかしいよ」
みゆき「違います、これは私が作ったものではなく、拾ったものなんです!」
かがみ「そんなわけないでしょ。どこの世界にこんな悪趣味な辞書があるのよ」
みゆき「ですが、実際にあるのですから……」
こなた「嘘つかないでよ! こんなの信じられるわけないよ!」
235 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/09(水) 05:02:16.74 ID:o8acNG7Y0
みゆき「…………では、信じさせてあげましょうか?」
かがみ「みゆき!」
つかさ「ゆ、ゆきちゃん。ナイフなんて持ったら危ないよ」
みゆき「その広死苑は、人が新しく亡くなる度に、その方の情報も書き加えられていくのです」
かがみ「そんなこと……」
みゆき「それを見れば、信じざるをえないでしょう……私の言ったことっ」
こなた「!!」
つかさ「ゆ、ゆきちゃん!」
かがみ「みゆき、あんた自分の首を切るなんて……なんてこと」
みゆき「さあ、はやく引いてください…………広死苑。
私の……高良みゆきの名前が加えられる……場所を…………
それを見れば……みんな、私の言ったこと……を………………」
236 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/09(水) 05:03:32.95 ID:o8acNG7Y0
つかさ「ゆきちゃん……」
こなた「みゆきさん、何か悩み事でもあったのかな……私、気付いてあげられなかった」
かがみ「私もよ。みゆき、自分で抱え込んじゃうとこ、あるからね」
こなた「……ねぇ、かがみ。みゆきさんの言ったこと、本当だったのかな?」
かがみ「あんたね、いくらなんでもマンガとかアニメの見すぎよ。そんなことあるわけないでしょ」
こなた「それはそうだけど」
かがみ「まあ、本当か嘘か、今となってはもう分からないけどね」
こなた「うん……そうだね」
かがみ「この本、みゆきの血で真っ赤になって、もう何も読めなくなっちゃったからね」
世にも
奇妙な
らき☆すた
238 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/09(水) 05:06:47.06 ID:o8acNG7Y0
白石「情報化社会ということがもう何年も前から言われていますが」
白石「そう言われ続けるにつれ、情報が非常に安いものに感じられてきませんか」
白石「気をつけてください。情報というのは時として、とても高い代償を必要とするのです」
白石「次に奇妙な世界へ足を踏み入れるのはあなたかもしれません」
やっべ、短くまとめられたと思ったのに
いざ投下してみたら異常に長ぇ……