57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/05(土) 00:46:32.73 ID:TZ9aaVVeO
「ふふふ……死神があなた達を迎えに来たんですよ」
俺の前に立って笑い続けている古泉の右手には、銀色に輝く刃があった。
もう目の焦点も合っておらず、ただ俺の方に顔を向けて、目を見開いて笑っていた。
俺の腕にハルヒがしがみつき、今まで見た事もない程怯えている。
59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/05(土) 00:54:49.63 ID:TZ9aaVVeO
「な、なんなの……? なんなのよ……こ、古泉君、目を覚ましてよ……」
「っふふ、眠っているのが自分だと何故気付かないのです? ふふふ……」
心底おかしそうな、歪んだ、邪悪な笑顔は、いつもの古泉とは似ても似つかなかった。
やがて喉の奥から漏れるような笑い声が止まると、
「あなたは本当に馬鹿ですね」
突然俺達を睨みつけ、強く言い放った。
憎しみに溢れて、ああ、本気の人間はこんな表情をするんだな。
そう思った。
60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/05(土) 01:04:48.82 ID:TZ9aaVVeO
雲一つ無い天に宝石が輝いているようだ。建物と建物の間に満月が輝いている。
その丁度真下に古泉が居る。
悔しい程様になっているが、何せ右手にナイフだ。しかも視線は俺に向けられているだと?
冗談じゃない、と前の俺は思っていただろう。実はそうでは無かったのだ。
「僕は……」
ぽつりと呟く。
「僕は、涼宮さんが好きです。長門さんも、朝比奈さんも、あなたも。みんな大好きです」
今までナイフを持って俺達を追いかけ、路地裏の行き止まりまで誘導し追い詰めた奴が今更何を言うか。
62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/05(土) 01:11:55.19 ID:TZ9aaVVeO
「でも……気付いてしまったんです」
足音が近付く。目の前にナイフの先端が突き付けられた。
「殺さなければ、永遠になってしまう、と」
建物の部屋の電気が一つ消えた。
ヤバい。
「言い残す事はありませんか?」
空気に溶けるような声は、残酷な宣言に思えた。
63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/05(土) 01:22:53.76 ID:TZ9aaVVeO
ハルヒは唾を飲み、俺の腕に入れていた力もいつの間にか抜けている。
だが、何故だか落ち着いた気分だった。
古泉は俺達を好きだった。しかしこれは仕方がない事なんだ。
そう思うと、感情は海に沈んでいくような、そんな気分だった。
「なあ、古泉。ちょっと喋る時間をくれないか、良かったら返事も」
「いくらでも」
きっとこの状況から反撃は無理だと相手も思っているんだろう。
64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/05(土) 01:30:57.66 ID:TZ9aaVVeO
「楽しかったよな」
「ええ、すごく」
やってる事に対し、表情と声は凄く柔らかかった。
「なあ、ナイフで思い出したんだが、孤島の話考えるの大変だったろ」
「まあ、ね、でもミステリーは好きですから」
「なんか参考にしたりしたのか?」
「やっぱり今まで読んだ本に影響されましたよ」
目を瞑ったらさぞ普通の雑談のように思えるだろう。だがもう2時は越えてる。流石に眠い。
「なあ」
「はい」
「敬語をやめてみないか」
少し沈黙が流れ、暫くして。
「うん」
65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/05(土) 01:41:38.29 ID:TZ9aaVVeO
「これから人を殺す人間には全然見えないな」
「早く殺したいんだけど」
「やっぱり、敬語は作ってたのか」
「一応……」
「ハルヒが望んでたのか?」
ナイフが無ければ和やかな雰囲気に、ハルヒが割り込んでくる。
「あたし……? どういう事よ、永遠とかなんとか」
「言っちまうか?」
「どうせ、僕達は終わりだからね。死ぬのはあなたと僕と涼宮さんだけで十分だし、長門さんは殺せそうにないし」
自嘲気味だった。
「涼宮さん、僕は永遠は嫌なんです」
それから古泉は、ハルヒに延々と宇宙や未来の事を話し続ける。
ああ、色々あったな。朝比奈さんは留年し、色々ループして、未来と通信出来ないと騒ぎになり、
SOS団に都合の悪い行動を取った人間は事故死、団を解散させる話が出た時には地震が起きて。
ハルヒの行動はエスカレートして、ハルヒ以外、俺達だけの記憶があるまま学校は1年に逆戻りした。
未来から来た朝比奈さんは来なくなった。
67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/05(土) 01:50:45.43 ID:TZ9aaVVeO
ぼんやり思い返していると、ハルヒが突然大声を上げた。
「嘘よ!!」
古泉の蔑んだ目がハルヒを捕らえている。
「あたしはそんな自己中な事はしないわ、あたしは、あたしは、嘘でしょ」
明らかに動揺し、頭を両手で掻いている。
ああ、言ったのか。
「僕の世界が終わってくれるなら世界なんてどうだって構わない」
「そんな、そんな、あんたみたいなデタラメな事言うなんて、超能力者なんて、
みくるちゃんは、有希は、有希はどこから、あんたも……」
訳が解らない。
そうだろう、当たり前だ。
「あたしが神なら、あたしは……」
突然、空は灰色になり、逆に明るくなった。
68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/05(土) 01:57:35.90 ID:TZ9aaVVeO
「もう終わりか」
「やるしかないな」
俺と古泉の考えは一致した。
殺せ。
まるで害虫を殺すかのように、古泉はハルヒの心臓に最後の感情を突き立てた。
「ぐっ……!!」
瞬間、また世界は変わった。
69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/05(土) 02:08:48.86 ID:TZ9aaVVeO
元の世界だ。
月は元通り輝いている。
ハルヒはあっけなく死んだ。
調子に乗りすぎてしまったのかもな。ハルヒは。
これなら最初から殺しておいても良かったのかもしれない。
古泉の笑顔の矛先が俺に向かう。
また俺の中の世界が変わり、数分も立たない内に古泉と出会った。
そこにはハルヒも長門も朝倉も喜緑さんも居た。
結局ヒューマノイドインターフェースは一瞬で不必要になるって事か。
朝比奈さんが居ないのは残念だが、俺はこれでもいいかな、なんて思った。
なあ、次はどこの世界なんだろうな? 古泉。
涼宮ハルヒの厨病、完
70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/05(土) 02:09:33.59 ID:TZ9aaVVeO
すいませんでした
お休みなさい