13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/03/28(金) 19:35:43.17 ID:3h1AgctfO
静かな空間に、不自然な水音と、俺の叫び声だけが響く。
俺は、もうなりふり構わず叫んでいた。腕が柱に括り付けられ身動きが取れない。
だが、古泉の元へ行きたい一心で暴れ続けていた。
古泉は床に転がったまま泣き喚いている。
その足を、誰とも解らない男が自分の腰へ引き寄せて……
異常な光景だった。
俺にはそれが、ハルヒが引き起こす非現実的な事より日常からかけ離れた物のように見えた。
古泉が暴れる度に、男がその腹を殴りつける。もう数え切れない程の傷が刻まれていた。
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 20:47:44.46 ID:3h1AgctfO
何が起こっていたのかはよく解らない。珍しく古泉と二人だけで下校していたら
いつの間にか変な場所に連れ込まれていた、といったところか。
男の容姿は決して良いとは言えない。故に余計吐き気がする。
先程から頭の中で反響する位に大きな声で喚き続ける古泉の声が痛々しかった。
俺と同じように後ろ手に縛られ、足を広げさせられ、ああ、直視出来ない。
いつもの穏やかな微笑からは想像も出来ない程泣きじゃくり、誰かに助けを求めている。
この場に古泉を助けられそうな奴は、正直居なかった。
思った以上に紐は固く結ばれている。俺が四苦八苦している間にも男は古泉を揺さぶり続ける。
俺の目が覚めた時には、古泉は男に踏み躙られ、助けてと叫び続けていた。
どれだけの時間が経っているんだろうか、腕時計も見る事が出来ない。
男の手元には鞘に入ったナイフがあった。あれで古泉は幾度も傷つけられたんだろう。
あの白い肌に赤が滲んでいる。
許せない、そう思いながらも、ただ見ている事しか出来ない俺自身にもっと激しい怒りが沸く。
72 名前:61[] 投稿日:2008/03/29(土) 00:12:47.02 ID:UWdwz05+0
許せない、そう思いながらも、ただ見ている事しか出来ない俺自身にもっと激しい怒りが沸く。
……駄目だ、このままでは古泉を助けるどころか、この場をずっと離れることができない。
一度冷静になれと脳に無理な指令を送り、乱れて浅くなった呼吸を整えようと試みる。しかし、
当然のように耳には古泉の痛々しい叫び声が入ってくる。頼む、待ってくれ。いま助ける。
カマドウマのときも、サウンドウオームのときも、いつも古泉に助けられたじゃないか。古泉は
『機関』の一員でもあるが、それよりもSOS団の副団長であると言っていたじゃないか。いま俺が
助けないで、誰が助ける?
「必ず、助ける」
ちいさくだが、口に出した。俺の、自分自身への誓いとして。
少しだけ落ち着いた頭で考える。まずは自分の状況を把握しなければならない。
冷静になったことによって、部屋が意外と冷えていることに気付いた。ひとつに縛られている後
ろ手の指先を擦り合わせると、身体も冷えていることが分かった。制服を着たままの俺がこれだけ
冷えてしまっているのなら、裸同然の姿(なぜか靴下だけは履いたままの状態だ)にされている古
泉はもっと寒いだろう。早く助けなければならない理由がまたひとつ増えた。
今まで目の前の古泉しか見ていなかった視線を部屋中に送る。部屋が寒い理由は、あの開いた窓
らしい。カーテンは閉まっているが、外からの風でばさばさと捲れ、本来の役割を果たせずにいる。
そもそも日は出ていないのだから、カーテンを閉めても閉めなくても大して変わりは――。
「っ」
はっとした。日は出ていない。部屋の明かりは蛍光灯だけ。つまり今は夜なのだ。
俺が古泉と共に帰路に着いていたのは、オレンジ色の日が差している夕方だった。
くそ、あのときに攫われたのだとしたら、一体何時間経っている? 家族が心配するだろうだと
か、そんなことは二の次だ。
古泉は待っていたんだ。何らかの方法で眠らされてしまった俺が目を覚ますのを。
そんな風に何か理由が無ければ。強い意志が無ければ。きっととっくに古泉は気を失っていた。
しかし古泉が気を失い、目的通りに使えなくなれば、あの男に捨てられる。そうすれば、次にタ
ーゲットになるのは俺だ。
古泉は俺を守ろうとしていたんだ。
俺に脱出の糸口を見つけさせ、再び“日常”に帰ることを望んでいるんだ。
待ってろよ古泉。ふたりで一緒に、あの日々に戻ろう。
91 名前:61[] 投稿日:2008/03/29(土) 01:48:19.70 ID:UWdwz05+0
僅かにだが動く指先で、腕を縛っているものが何なのかを探る。手触りからして、細身の縄だろ
う。中学のときにムカデ競争で使ったあれみたいなやつだ。
流石に結びかたまでは判断できなかったが、触った感じで解きかたはなんとなくわかる。あとは
指先だけでどうやって解くかだ。
いや、少しでも希望があるのなら、考えるより先にそれに縋るだけだ。
俺は不自由な指先で結び目を引っ掻いた。
俺が縄と格闘していると、突然今までとは明らかに異なる古泉の悲鳴のような叫び声が耳に入っ
た。それと同時に独特の臭いが鼻をつき、思わず顔をしかめ、古泉を好きなように弄んでいる男に目を向けた。
男の表情は恍惚としており、元々褒めることのできない顔が更に気色悪く
歪んでいる。
聴覚、嗅覚、視覚。この三つで判断した。……男はどうやら絶頂を迎えたらしい。
男の放った液体はというと、古泉の傷だらけの背中にかかっている。痛みからか、度を越えた気
持ち悪さからか、古泉は悶えている。
男が一瞬、こちらを見たような気がした。俺は古泉を見ていたから、視界の端に映っただけなの
だが。その視線には、幼い子どもが自分の玩具を他人に自慢しているかのような、そんな感情がこ
もっていたように思えた。
92 名前:61[] 投稿日:2008/03/29(土) 01:48:41.31 ID:UWdwz05+0
ふざけるな。古泉はてめえのもんじゃねえんだぞ。古泉は俺たちSOS団の副団長だ。誰にも渡さな
い。こればっかりはハルヒに同意する。
よく見れば男の足元に白い水溜りがもう幾つかある。俺が眠っていた間にも古泉は同じようなこ
とをされたのかもしれない。もしくは、この男とは別の奴がいて、そいつにやられたのかもしれな
い。ああ、くそ、いい加減にしやがれ。
余計に焦る指を落ち着かせ、もう一度トライする。今度こそ解いて、古泉を助けるんだ。
かりかりと引っ掻く。結び目に爪が引っかかって、そのまま解こうとすると剥がれそうになる。
痛い。けど、そんなのは構わない。古泉はもっと痛くて苦しいんだ。
爪を引っかけた人差し指に、もう片方の手の指を添える。訪れるであろう痛みを予測して、ぐっ
と息を詰める。そして、一気に縄を解きにかかった。
「っ……」
痛みから反射的に逃げようとする人差し指を強引に押さえつけ、爪で縄をひっぱる。初めこそ爪
が剥がれるかと思うほどの激痛が走っていたが、一度緩むとそこからは簡単にするりと抜けた。
やっと開放されたのだ。しかし解けたのは俺の縄だけであり、古泉は未だにこの部屋に縛り付け
られたままだ。あの男が退かない限り、古泉は開放されない。
まだ、終わっていないんだ。“日常”に帰らない限り、終わらないんだ。
223 名前:61[] 投稿日:2008/03/29(土) 17:31:18.73 ID:UWdwz05+0
男が余計な行動を起こさないように、とりあえずはまだ縛られているフリをすることにした。
先程まで俺の自由を奪っていた縄は手中にある。武器はこれのみだが、使い道なら幾つかあると
思う。
どうやってあいつの隙を突くか悩んでいると、うつ伏せにされている古泉が俺の方を向いた。必
死に俺を見つめ、何かを言いたそうにしている。
「……、……」
もう喉が嗄れて声が出にくいのか、男に気付かれないように俺にメッセージを送りたいのか、ぱ
くぱくと口の動きだけで俺に言葉を伝える。その内容に、俺の心が激しく動いた。
「っ……!」
古泉はいま確かにああ言った。
――待ってろよ古泉。絶対に助けるからな。
古泉の、男に対する態度が急変した。ずっと反抗していた古泉が、男に従順になった。
この結果に満足したのか、男はニタニタと気色悪い笑みを浮かべている。残念だが、まだ終わり
じゃないぜ。
男が無抵抗の古泉を抱き上げる。もちろん古泉は本当に奴隷同然の状態になってしまったわけで
はなく、ここを抜け出すためにそう演技しているだけだ。
ようやく俺のターンが回ってきた。何度も助けられた分、今度は俺が助ける番なんだ。
抱き上げられた古泉が部屋から連れ出されようとしている。俺は男を見つめながら、好機を窺う。
男が俺に背を向け、歩き出した。――今だ。
「古泉!」
224 名前:61[] 投稿日:2008/03/29(土) 17:33:16.43 ID:UWdwz05+0
ずっと呼びたくても呼べなかった名前を呼びながら、俺は縄を手に男に突進した。
古泉は俺が名前を呼んだのを合図に、全力で男の腕から抜け出す。
振り返ろうとする男に、だがその隙を与えずに突っ込む。
どさっ、と小気味いいぐらいに勢いよく男が倒れた。そのまま男の背の上に馬乗りになり、首に
縄を巻きつける。
まさか殺すわけにはいかない。確かに俺の中には殺意に近い感情が渦巻いているが、だからと言
って人殺しにはなりたくない。だから、殺すまではいかなくとも、男の自由を奪うために意識を喪
失させることにした。
縄を軽く左右に引き、締め上げる。しばらく抵抗していた男も次第に大人しくなっていき、最後
には動かなくなった。気を失ったらしい。
男の鼻に手を近づけ、まだ息があることを確認すると、首を絞めた縄で今度は両手を縛り上げた。
さっきまで俺がさせられていたように、後ろでひとつに括ってやる。
「よし」
簡単には解けないように、きつく結ぶ。こんだけ厳重に結んどけば、自分では外すことはできな
い筈だ。
「……古泉」
ようやく床に尻をついたままの古泉に手を差し出すことができた。
「悪いな、遅くなって」
足元が覚束ない古泉をどうにか立ち上がらせる。
「いいえ……ありがとうございます。あなたがいなかったら、どうなっていたか……」
掠れた声でお礼の言葉を言われる。だが俺は大したことはしていない。頑張ったのは古泉だ。何
時間もここで陵辱されて、俺が助けるまでずっと待っていたんだ。
「ごめん、古泉。俺がもっと早く起きていれば、そんなに傷つかずに済んだのに……」
古泉の体は、改めて見ると酷かった。いたる場所に傷が刻んであり、血が滲んでいる。しかもそ
の血と先程の男が放った精液が混ざり合い、妙な色になっている。
225 名前:61[] 投稿日:2008/03/29(土) 17:34:57.38 ID:UWdwz05+0
「大丈夫です。《神人》と戦うときにこれよりも酷い怪我を負ったこともありましたから」
俺の心配の種はそこじゃないんだ。いや、もちろん身体的にも痛そうで心配しているのだが、そ
れよりも精神的なダメージが心配で堪らない。
「なあ、怖かったよな? 辛かったよな?」
唯一無傷に見える肩に手をかけ、語りかける。
「ごめんな、古泉。もう大丈夫だからな」
自分よりも上にある頭をくしゃっと撫でる。
「あ……」
古泉の目が潤んだように見えた。だが古泉は涙を流すのをこらえ、そっぽを向いてしまった。泣
いても構わないんだがな。
俺は苦笑いして、濃緑色のブレザーを差し出した。
「これ着とけ。そのままじゃこっから出れないだろ?」
「……はい」
素肌に直接ブレザーを着る。だがしかし元々身長が違うせいもあって、下は全くと言っていいほ
ど隠れなかった。またも苦笑する。古泉もどうしていいか分からないようだ。
俺はYシャツを脱いで差し出した。上半身を晒すことになるが、古泉は下半身を晒しているんだ
からおあいこだ。
「すみません」
「いいって、気にすんな」
ようやく露出していた肌を半分隠すことができた古泉と共に、これからどうするかを話し合う。
「この部屋の外はどうなっているか分かるか?」
「いいえ……僕も眠らされている間にここまで連れてこられたので、ここがどこであるのかすら分
かりません」
なら仕方が無い。このまま進むのみだ。
「よし、行くぞ。歩けるか?」
「ええ、平気です……っと、うわ……っ」
バランスを崩した体を支えて、そのまま古泉の腕を肩にまわす。
「無理すんなよ」
「すみません……」
古泉の体を気遣い、なるべくゆっくり歩く。だが、近くにあったドアにはすぐに辿り着いた。
226 名前:61[] 投稿日:2008/03/29(土) 17:35:39.00 ID:UWdwz05+0
「いいか、古泉。開けるぞ」
「はい」
ドアノブを捻り、前に押す。キイイ――という音が鳴り、少しずつ外の風景が見えてきた。
どうやらここは廃墟であるらしい。ボロボロの廊下に足を踏み出す。
「見張りはいないみたいだな」
「恐らく犯人は単独犯だと思います。僕はあなたよりも先に目を覚ましましたが、あなたの眠って
いた数時間の間にも僕はあの男性しか目にしていませんし、彼が他の人と連絡を取る所も見ていま
せんから」
仲間がいないなら安心だ。しかし、ここから出た後どうすればいい?
「窓がありますよ。もしかしたら現在地が分かるかもしれません」
確かに、無闇に外に出るより、まずここがどこなのかぐらいは把握するべきだろう。
部屋にあったのよりも数倍でかい窓から、外を見る。
「――なんだ、市内じゃねえか」
周りの風景で分かった。ここは俺が小さい頃に肝試しやら何やらでよく遊んでいた空き家。ラッ
キーだ。ここからなら、道に迷うことは絶対にない。
「よし、帰れるぞ。古泉、行こう」
「ええ。早くここから離れましょう」
あいつに奪われた荷物はどうするかな、なんて思ったが、脱出する方が先だ。
「行こう。あっちの階段を使うと一番玄関に近いぞ」
「はい」
こうして俺たちは、出口を求めて歩き始めた。
227 名前:61[] 投稿日:2008/03/29(土) 17:38:01.56 ID:UWdwz05+0
とりあえずここまで。読んでくれてる人、ありがとう
レイプシーン少なくてごめん
もっと苛めたいんだけどな…俺の技量が足りない