121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/03/18(火) 07:59:39.03 ID:UmSyqWPsO
一樹「最近は閉鎖空間が発生しなくて楽です」
森「そうね。好きな人でも出来たのかしら」
一樹「だといいんですが…」
森「どうしたのよ?浮かない顔して」
一樹「確かに姉さんに好きな人が出来た可能性が高いんですが、どうやら相手が僕の兄さんのようなんですよ」
森「確かにそれはキツイかもしれないわね」
一樹「僕も兄さんの事は尊敬しますが、実の兄を恋愛対象として見てしまうのはいかがなものかと…」
森「難しいわね…ところで一樹は好きな女の人は居ないの?」
一樹「僕ですか?居ませんよ」
森「ちょっと気になってる人とかも居ないの?」
一樹「そうですね…しいて言うなら、森さんですかね」
森「な、何を…」///
一樹「まぁ、頼りになる先輩としてですが」
森「そ、そうよね…」
一樹「森さん?」
森「な、何よ?顔近いわよ!」
一樹「落ち込んでませんでした?」
森「ば、馬鹿な事言ってないで早く学校行きなさい!」
一樹「今日日曜日ですよ。そんなに焦ってやっぱり変です。熱は…無いみたいですけど」
森「額同士を合わせなくてもいいでしょ!もう分かったから早くアンタのお姉ちゃんの観察を続けなさい」
一樹「変なの…」
森「私って駄目ね…」
212 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/18(火) 18:22:52.32 ID:UmSyqWPsO
保守がてら >>121の続き(というより番外編)を書いてみる
キョン「なぁ一樹、ニンジンとジャガイモとタマネギと牛肉買ってきてくれないか?」
一樹「いいですよ。今晩はカレーですか?」
キョン「あぁ、有希に訊いたらカレーを推奨するってすぐに返事が返ってきてな」
一樹「有希さんに夕飯が何がいいのか訊くのは、カレーに決めている日の方がいいですよ」
キョン「訊いてから俺もそう思ったんだが、後からやっぱり変えるってのも変な話だろ?」
一樹「そうですね。それじゃ行ってきます」
キョン「おう、気をつけろよ」
―――
森「……」
一樹「あ、森さん」
森「一樹じゃない。どうしたのこんな所で?」
一樹「スーパーに来て買い物に来る以外に何をする事があるんです?」
森「そうね、普通の高校生だったらバイトっていう選択肢があってもおかしくないと思うわよ」
一樹「バイトなら機関だけで手一杯です。夕食前の時間ですけど、森さんも自炊したりするんですか?」
森「私だって人並みに料理したりするのよ。…とは言っても今日はお惣菜買って済ませちゃうんだけどね」
一樹「仕方ないですよ。仕事だって僕よりも多い筈ですし」
215 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/18(火) 18:58:17.96 ID:UmSyqWPsO
森「自分で作った方が安上がりなのは分かってるんだけど、一人分だけ作るのは大変なのよ…
そうだ!一樹、明日私の家に来ない?」
一樹「明日ですか?僕は姉さんが荒れない限り暇ですけど、森さんの仕事の方は大丈夫なんですか?」
森「いいのよ。私の仕事は基本デスクワークだから土日は暇なのよ」
一樹「そうですか。夕飯の買い出しなので、そろそろ帰ります。連絡はメールか何かでとりましょう。それでは」
森「そうね。また明日ね」
―――
一樹「ただいま帰りました」
ハルヒ「もう、どこ行ってたのか心配したでしょ!」
一樹「すみません、ちょっと知り合いと話し込んでしまいまして」
キョン「まあまあ、何も無くて良かったじゃないか」
キョン妹「キョン君夕飯まだ?」
みくる「ちょっと待ってて下さいね」
一樹「すみません。僕のせいで遅れてしまいまして。少しの間これでご勘弁下さい」
キョン妹「わぁ、一樹君ありがとう」
キョン「おい、飯前にお菓子なんか食べたら夕飯入らなくなるぞ」
キョン妹「大丈夫だもん。ハルにゃんと分けて食べるから」
ハルヒ「まったくもう、みくるちゃんも早く作ってね」
みくる「は、はい分かりました」
217 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/18(火) 19:24:05.01 ID:UmSyqWPsO
キョン妹「ごちそうさま。キョン君遊ぼ」
キョン「俺はまだ食べてるんだぞ、だから少しくらい待ちなさい」
キョン妹「キョン君のケチ。じゃあハルにゃん遊ぼ」
ハルヒ「はいはい。ちょっと待っててね」
一樹「兄さん」
キョン「どうした一樹?」
一樹「ちょっと話があるんですが、食べ終えたら僕の部屋に来て貰えませんか?」
キョン「別にいいけど、あそこは俺と一樹の部屋な」
一樹「そうでしたね。すみません」
キョン「それと、ここじゃ駄目なのか?」
一樹「いえ…その…ここじゃ話しづらいんです」
キョン「ふーん、わかった」
一樹「ありがとうございます」
ハルヒ「アレは間違いなくシモ関連の話ね」ヒソヒソ
みくる「で、でもまだそうだと決まった訳じゃ…」ヒソヒソ
涼子「みくる、キョンや一樹だって男なんだからアレな本の一つや二つ持ってるよ」ヒソヒソ
ハルヒ「キョンの事だから谷口って人を通じて無修正のもらってるわ」ヒソヒソ
キョン妹「キョン君、男の人が持ってて、谷口って人かり貰う無修正のアレな本って何?」
ハ・み・涼「シーッ!」
キョン(何を言ってるんだ?)
有希「ユニーク」
一樹(有希さんがこれまでに無いくらい楽しそうだ。何があったんだろ?)
220 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/18(火) 20:00:47.78 ID:UmSyqWPsO
キョン「スマンな。妹の相手してたら結構な時間食っちまった」
一樹「いえいえ、大丈夫です。そういえば兄さんはやけに妹さんからなつかれていらっしゃる。
いや、それとも僕が避けられているのでしょうか?」
キョン「ただの思い過ごしだから気にするな。それより、話ってなんだ?」
一樹「そうでしたね。話というのは、明日姉さんと遊んでいて貰いたいのです」
キョン「…それだけか?」
一樹「そうですが。どうかしましたか?」
キョン「いや、なんかもっと深刻な事かと思ってたから、拍子抜けしてな…
なんかあったのか?」
一樹「実は…」
***
キョン「なるほど、明日機関の人と会うんだけど、その時にハルヒに対し機関の名を出せないから困ってた訳だ。
けどさ、明日不思議探索をやるって事になったら、適当な用事付けて、
ハルヒにキャンセル入れて機関の人と会えばいいんじゃないのか?」
一樹「ですが、もし僕が断った事により閉鎖空間が発生してしまったら、元も子もありませんからね…」
キョン「それぐらいで閉鎖空間が出来るのか?」
一樹「僕は超能力に目覚めてからは、姉さんに肯定的になるようになりました。」
223 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/18(火) 20:23:58.45 ID:UmSyqWPsO
一樹「それが急に否定的になってしまったら、多少のストレスは感じると思われます。
それが発展した場合閉鎖空間が発生して、森さんと会うどころの話ではなくなってしまうのです。」
キョン「そういう事か…」
一樹「……」
キョン「やっぱり、ハルヒに直で話すのが一番だと思うぞ」
一樹「ですが…」
キョン「今回誤魔化せたとしても、次が上手くいくとも限らないんだから、こういうのは早い方がいいんだ」
一樹「…わかりました、今から話会ってきます」
キョン「頑張ってこい」
一樹「姉さん」
ハルヒ「どうしたの一樹?」
一樹「ちょっと明日の事について話がありまして…」
ハルヒ「明日?ああ、丁度良かったわ。明日は土曜で休みだから、みんなで不思議探索に行こうと思ってたのよ」
一樹「実はですね、明日クラスの友達と共に遊びに行こう誘われていたんです。
本来なら、前々から言っておくべきなのですが、言うのを忘れてしまっていました。
なので、今回僕だけ不思議探索を不参加といった形に出来ないでしょうか?」
ハルヒ「なんだそんな事?
いいわよ、行ってきなさい」
226 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/18(火) 20:51:11.01 ID:UmSyqWPsO
ハルヒ「あたしは不安だったのよ。みんなはあたしの提案に乗ってきてくれる。
それが休日を一日消費するような事でも、みんなは嫌な顔一つ見せずに参加してくれる。
でもね、それが他のみんなの大事な繋がりや関係を脅かす物だったとしたら、私はそんな事は二度としたくないのよ。
あたしは宇宙人や未来人や超能力者に興味があるけど、兄弟はそれ以上に大切な物なの。
特に一樹は何時から自分の意見をないがしろにしているような所が時々あったから、怖かったのよ。
あたしの意見に合わせるために自分を殺すような事はして欲しくないの。
だからこれからはもっと自分の意思を持つようにしてね。これは約束よ」
一樹「はい、わかりました」
キョン「戻ったか。それでどうだった?」
一樹「幸いにも閉鎖空間は発生しませんでした。それどころか、むしろ姉さんの精神は安定する傾向にあります」
キョン「そうか、良かったな。案ずるより産むが易しってのはこの事だ」
一樹「確かに今考えると疑心暗鬼になっていたのかもしれませんね。
ですが、休むのが僕ではなく、兄さんだったとしたら、結果は変わっていたと思いますよ」
キョン「どういう意味だ?」
一樹「そのままの意味ですよ」
230 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/18(火) 21:27:48.93 ID:UmSyqWPsO
From:森さん
Title:Re:Re:Re:Re:Re:Re
じゃあ明日の11時に駅前でね(´∀`)ノシ
一樹(普段は絵文字なんかめったに使わないのに…そんなに料理するのが楽しみなら、一人分でも作ればいいのに…)
森(一樹の好物ってなんだったかしら…新川辺りに聞いておかないと)
―翌日
一樹(いつもの不思議探索の癖で結構早く来てしまいました。さすがにこんなに早くは森さんも…)
森「おはよう一樹。もう来てたんだ」
一樹「ええ、僕の方は癖のようなものですよ。森さんはなぜこんなにも早く?」
森「材料買うために出てきたんだけど、まさか一樹がこんなに早く来てるとは思わなかったわ」
一樹「だったら買い物も一緒に行きませんか?」
森「そうね。一緒に行った方が効率いいものね」
―スーパーにて
一樹「今日はどんな物作る予定なんですか?」
森「カゴの中のもので出来る物よ」
一樹「カゴの中ですか」
(えっと…ニンジンにタマネギにジャガイモと牛肉か…
アレっ?なんだかデジャブが…
って昨日の夕飯と同じじゃないですか!
別に僕はカレー嫌いって訳じゃないですけど、二日続けてはちょっとな…)
238 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/18(火) 22:35:05.48 ID:UmSyqWPsO
森「あの一樹、どうかしたの?」
一樹(さすがにカレーが嫌だとは言えないしな…)
「いや、なんだかまるでデートしてるみたいだなって思いまして」
森「ば、馬鹿な事言うんじゃないわよ!」////
一樹(そんな顔真っ赤にして怒る事無いのに…)
「あ、はい。すいません」
森・一樹「………」
森「まぁ、私も悪かったわ。ごめんなさい」
森・一樹「………」
森(まずいわね。雰囲気最悪だわ。今になって思えば、気にする必要もないような事なのに…
けど一樹が言うんだもん…)
一樹(しまった、こんなことになるんだったら素直に、
「昨日はカレーだったんで違うものにしていただけるとありがたいんですが」とでも言えば良かった…
姉さんの時に正直に言わなかった事で一回後悔してるのに…僕は馬鹿だ)
森(いつまでもこうしてる訳にもいかないし。よし!)
「一樹!」
一樹「は、はい!」
森「か、買い物も終わったんだし、私の家に行きましょう」
一樹「そうですね」
(やっぱり経験豊富な人は人を引っ張っていけるんだ。…すごいな森さんは)
森(流れ無視して無理矢理引っ張っちゃったけど、これで良かったのかしら)
243 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/18(火) 23:15:07.66 ID:UmSyqWPsO
―森さんのマンション
一樹「へぇ、結構広いですね」
森「家賃が機関持ちだからね。そうじゃなかったらとてもじゃないけど、こんな所住めないわよ」
一樹「そうなんですか。僕もいずれこういう所に住めるようになるんですかね」
森「かもね。けど、あんまりそうなって欲しくないわね。」
一樹「なんでですか?」
森「だってそうなるって事は、あなたのお姉さんの精神が安定していない状態が続くって事よ。それは一樹にとっても好ましくないでしょ?」
一樹「確かにそれは機関抜きにしても、一人の弟として好ましくないですね」
森(そして一樹が危険な目に合わせられる回数が増やされるって事だから…それは嫌よ)
「それにね、一人暮らしなんてあんまり良いことないわよ」
一樹「そうなんですか?」
森「ふとした瞬間に孤独の恐怖を感じるのよ。人間は孤独に耐えられるほど丈夫じゃないからね。この恐怖感は凄いわよ」
一樹「僕の家は兄弟が多いので、孤独なんてことは考えもしませんでした」
森「フフ、兄弟っていうのは本当に大切な物だと思うわよ。私は一人っ子だったから、余計に感じるんだけどね」
(だから一樹みたいな弟欲しか…でもそれじゃ、恋愛感情抱けないのか…難しいな)
303 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/19(水) 12:30:38.77 ID:K10ZzHoNO
「さて、そろそろ作り始めましょうか」
森さんは立ち上がり、キッチンがあるであろう方向へ歩み始めた。
「僕も手伝いますよ」
なんだかんだでタダメシみたいになってしまうんだから、手伝いくらいしないと悪いだろう。
「いいのよ。手伝わなくて」
「ですが…」
「一樹は他人の事を考え過ぎるのよ。たまには自分勝手になりなさい。
それに、私って料理するときは一人の方が集中出来るのよ。
だからソファで休んでるのも手伝いの一貫だと思って」
これ以上僕が売り込んでも、恐らく森さんは拒否し続けるだろうから、僕は諦めて「わかりました」とだけ言った。
廊下からも半開きのドアのおかげで隙間からソファは覗き見る事が出来たので、僕はゆっくりとリビングに向かった。
リビングの中は本当にリラックス出来る空間だった。
まず、部屋の中の香りが甘い柑橘系の香りがして目を瞑ったら、想像力がかきたてられそうだ。
次に部屋の中心に陣取られたソファは沈み過ぎる事もなければ、固過ぎるなんて事も無く、身体を優しく包み込むようだ。
更に、向かい合うようにプロジェクターが置かれ、周りにスピーカーが配置されている。
映画を観るのに好ましい環境であるのは素人の僕でも分かる
304 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/19(水) 12:31:16.61 ID:K10ZzHoNO
部屋の隅にはワインセラーとグラスも置いてあり、酒を煽る時にも的しているようだ。
…なんだか僕て森さんの待遇の差がこんなにもあるとは思わなかった。
別に今の待遇にケチをつける訳じゃないけど、給料をもう少し水増ししてくれてもいいのに…
僕がソファにしゃがみ込みそんなふうに考えていると、
ワインセラーが置かれていない方の部屋の隅にやけに質素なテーブルが置いてあるのに気が付いた。
高さとしてはソファに座りながらもグラスにワインを注ぐのに最適なようだけど、
そこに乗っているのが写真立て一つというのがどこかしっくり来ない。
使わないときには花瓶でもおいておけば、立派にインテリアとして活用できるのに…
少しばかり気になりソファから離れて、写真立てを手に取ろうとした時だった。
「一樹、出来たわよ」
僕は閉まっていたドアが音を立てるの同じに手首を引っ込めて、目線を上へ反らした。
「どうしたのよ?返事もしないで上の方なんか見て」
「すいません、ちょっとボーっとしてました」
「一樹でもそんな事あるのね。まぁいいわ出来たからキッチンの方に来て」
森さんは大して気にする事なく僕を台所へと誘導し始めた。
419 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/20(木) 06:27:22.61 ID:NBvhheykO
>>304
僕が台所に近づいたとき、ちょっとした違和感を感じた。カレーの香りがしないのだ。
僕は料理の知識が乏しいから、もしかするとスパイス臭のないようなカレーもあるのかもしれない。
けど、森さんの買った品々はごくごく一般的な家庭でカレーを作る時に使う物だった。
それなのに、香りに香辛料系統が含んでいないのは…
「あっ」
これは僕の声だ。何故こんな所で僕が気の抜けるような声を出してまったのかと言うと、
僕の予想していたメニューと違っていたからだ。森さんによって作られて並べられたのは純和風の物だった。
「どうしたの?今日は一樹らしからぬ発言が多いわよ」
「気にしないで下さい。それより肉じゃが作ってくれたんですね」
通りで和風だしの匂いが漂っていたわけだ。というより、ここまでカレーと信じて疑わなかったのが変なだけだったんだろう。
白い湯気を立てている肉じゃががとても美味しそうだ。
「それじゃ、食べてましょうか」
森さん身につけていたエプロンを外し、横の椅子に二つ折りにして架けた。
僕も椅子を引いてゆっくりと腰を下ろす。
さすがにさっきのソファのように柔らかくはないが、座り心地はゆったりとしている。
420 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/20(木) 06:29:57.71 ID:NBvhheykO
「美味しいですね」
「フフ、一樹は条件反射的にお世辞言うから信用ならないわね」
森さんは口ではこう言ってるがにこやかに応対している事から喜んでいるのだろう。
実際森さんの料理は美味しかった。ホクホクとしたジャガイモに煮込んであり、思わずご飯が進んだ。
副菜のほうれん草のおひたしも箸休めとしての役割を果たすだけで無く、野菜自身の味を豊富に含んでいて舌鼓を打った。
僕は食べ終わり森さんの方を眺めると、ウイスキーをグラスで飲んでいた。森さんがこちらを向いた。
「アンタも飲む?」
酒というのは飲む人の理想で押さえている人格をさらけ出すというけど森さんにはあまり当てはまるような気がしない。
…というより、生きたいままに過ごしているだけなような気がしない事もないけど。
「いえ、僕は未成年なので、ジュースか何か貰えますか?」
「連れないわねぇ。まぁいいわ、冷蔵庫の中にジュース入ってるから好きなの飲んでいいわよ」
無理矢理僕に酒を勧めたりしないから、まだマシな方なのかもしれない。
冷蔵庫の中を覗いてみると、ジュースの缶やペットボトルも何本か入っていた。
421 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/20(木) 06:31:57.61 ID:NBvhheykO
その中に一本気にする瓶を見つけた。赤い色から察するにトマトジュースだろう。
「森さん、これ貰いますね」
「へぇ、トマトジュースなんか飲むんだ。一樹らしいわね」
「美味しいし、身体にもいいから結構好きなんですよ」
僕は手元にあったグラスにそのジュースをと注いだ。僕は口を付けて一気に流し込む。
…違和感を僕の身を襲う。トマトジュースなんだからトマトの味がするんだろうけど、なんだか喉が熱い。
「森さん、これってもしかして…」
「一樹、トマトジュースくらい、もっと勢いよく飲みなさいよ」
「え、でも…」
森さんは瓶を片手で掴み僕の握っているグラスに溢れる寸前まで注いでしまった。僕は諦めて一気に流し込む
吐き出したくなったが、無理矢理飲み込む。
そして水を飲むためにシンクに向かってレバーを押してコップに並々と水を注いでガバガバと飲む。
僕のこの様子を不審に思ったのか、森さんはこのジュースが入っていた瓶を眺めてた。
すると一気に顔から熱が飛んで行き、僕の嫌な予想が当たった事の証明をするセリフを読んだ。
「一樹、それジュースじゃないわ!お酒よ」
422 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/20(木) 06:33:31.12 ID:NBvhheykO
「ですよね。どうりで身体が熱いわけです」
「一杯目で気付かなかったの?」
「えぇ、まぁ…」
森さんにお酌してもらったので、断りきれなかったとはさすがに言えない。
それに今は新しい酸素を体内に取り入れる方が先決だ。森さんは頭を軽く掻きながら話し出す。
「あれは前に私が読んだ漫画でブラッディ・メアリーっていうカクテルが出てきて、
それを再現しようと思ってトマトジュースにアルコール度数高い酒を適当に混ぜてみたのよ。
本物とは全然違うんだけど、その時の私は酔っ払ってたから気にしてなかったの。
それで、なんとなく捨てる気になれなかったから、とっておいたんだけど、まさかこんな事になるなんて…
ごめんなさい、一樹が来る前に処分しておくべきだったわ」
森さんは心底申し訳なさそうな顔をしている。なんだかこっちが悪い事をしたような気がしてきた。
…けど今の僕はそんな森さんに労いの言葉を掛ける余裕はない。僕に出来るのは、
「いえ、それよりちょっと横になってもいいでしょうか?」
と言って薄笑いを浮かべるだけだ。すると森さんは
「分かったわ、ちょっと肩貸して」と言って僕の右腕を森さんは首に乗せて僕を廊下へと導いた。
423 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/20(木) 06:35:43.42 ID:NBvhheykO
森さんの誘導は、さっき料理が出来るまで待たされていたリビングを通りすぎ奥へと進んでいった。
視覚がボヤけていて、なんだか部屋が薄暗いと言う事しか分からない。
「ここで横になって」
森さんの言葉に従って僕は仰向けに寝そべる。身体が柔らかい布で包まれる。
その大きさはソファより大きく、身体全体を受け入れるのを可能にしていた。
おそらくこれは森さんのベッドであろう。枕らしきものもあったが、そこで僕の意識は途絶えてしまった。
大変な事をしてしまった…
それが私の第一の感想。そして全ての後悔の引き金ともなりえる言葉。
よりによって私の管轄内でこんな事になってしまうとは…
以前の私だったら、こんなミスはあり得なかった。
何故なら一樹をただの部下の一人としてしか見ていなかったからだ。
けれど、その自体は私が自らの手で変えてしまった。
私は一樹を恋愛対象と見るようになってしまった。
以前の私は一樹の姉、つまりハルヒと同じように、恋愛というのは精神病の一種だと思いこんでいたし、
私はその“精神病”に対しワクチンか何かを打って耐性を持ってると思いこんでいた。
病気というのはかからないと全てを理解したことにはならないのに…
424 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/20(木) 06:37:19.83 ID:NBvhheykO
最初は一樹の事について興味が無かった。いや、むしろどちらかといえば嫌っていた部類かもしれない。
私が学生時代と呼ばれるもの全てを犠牲にして独自のルートからどうにかこうにか機関に入ったのに対し、
一樹の方は機関側から招集が掛り、ほぼ審査ゼロで機関に身を置くようになった。
正直、一樹の事を上っ面だけがいいどこでもいるような子供ぐらいにしか思っていなかった。
しかし、一樹の仕事ぶりを見て驚いた。あんな化物と戦っているとは思わなかったからだ。
自分の命をベットしてまで、あんなことを出来る一樹を軽蔑から、一気に尊敬の対象まで昇進した
そして、極めつけは一樹の言葉だった。
ある日私と一樹が機関とは関係ない個人的な会話をしていた時の事だ。
「――って言う風に姉さんが言うんです。あの時は本当に困りましたよ」
「フフ、一樹も大変ね」
あの時の時間、天気、温度全て私は記憶している。そしてなにより、次の言葉が忘れられない。
「森さんの話してる時に笑った顔かわいいです」
いつもだったら、一樹がまた調子付いてからかい始めた程度にしか思わないのに、それ以降、自然と一樹を目で追うようになった。
427 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/20(木) 06:38:37.83 ID:NBvhheykO
私にもなぜそうしようとするのかは分からない。強いて理由を挙げるとすれば、やりたいからやる。これだけだ。
そして私はそんな風に一樹に憧れの念を抱いた状態で今日という日を迎えた。
一樹が私の料理を美味しいと言いながら頬張ってくれるのはとても嬉しかった。
その事が私の顔が熱てらせてしまった。その照れ隠しの時に酒なんて物を飲まなければ、
一樹に偽のトマトジュースを渡さずに済んだはずだ。悔やんでも悔やみきれない。
とにかく、私にできる事を全力でしなければ。
「一樹…大丈夫?」
私の問いに一樹は答えなかった。身体中の毛穴から冷や汗出たような気がした。
私は落ち着きを得るために深呼吸を繰り返す。横隔膜の動きと酸素濃度にかけるしかない自分がここにいた。
「一樹…大丈…」
私はここまで言って話しかけるのを辞めた。決して一樹の生存に悲観せざるを得ない証拠を見つけた訳ではない。
寧ろ逆だ。一樹の生み出す呼吸音と腹式呼吸によって上下する胸を見て、安心感を得る。
(良かった…何も無くて本当に良かった…)
脳内で暗唱し、喜びにふける
428 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/20(木) 06:40:04.93 ID:NBvhheykO
改めて一樹の顔をまじまじと眺める。鼻は高く、スッキリとした顔立ちに、
笑った時とは違う閉じ方をしている目、さらに整えられた髪が一樹の魅力を増幅させている。
もし私が男だったとしたら、大なり小なり一樹に嫉妬するだろうと思う。
顔をじっくりと眺めながら、私にちょっとした邪なな思いが私を襲う。それは、一樹とキスをしてみたいと思った事だ。
私は自分の不注意によって、一樹をこのような目に追い込んだ張本人にも関わらず、このような思考が浮かんでしまった。
実を言うと、キスがしたいのではなく一樹の身体に触れてみたいのだ。
一樹の身体の感触を肌と肌を通じて、知り合いたい。私の望みはそういった物だった。
どうすべきか考え込んでいると、一樹の身体向きが変わった。寝返りを取る事によって、約90゚半時計回りに動いた。
今チャンスを逃したら、二度と巡り会えないような気がした。覚悟を決めて、ベッドの中に身体埋めた。
目に入ってきたのは肩から腰までのラインだった。女の物とも違うソレは、新しい曲線美を見つけたような気持にさせた。
意を決して腰に指先軽く触れた。何の反応もないように見えたが、押し殺したように「んっ…」という声が聞こえた。
430 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/20(木) 06:41:02.43 ID:NBvhheykO
もしかすると起きたのかもしれない。だが私は躊躇しなかった。もうここまできたら言い訳など成立しない。
だったら、自分のやりたいようにやるだけだ。両脇から腕を通して一樹にしがみついた。
だが、なんの反応もなかった。私は一樹に抱きついたまま心と身体の充実感が溢れるのを感じた。
それからそこそこ時間が経った。私は一樹が寝返りを打つ度に抱き合う位置を変えた。
やはり向き合うのが一番私に安らぎを与えただが、一樹の腕が私の身体に絡み合わないのが、
どこか寂しかった。そして私は寝るという行為において、邪魔なだけな女なのだ。
それを理解した時、私は一樹に抱きつくのを止めた。抱きつく前よりも寂しくなったのは、多分気のせいづはない。
もう五時だ…そろそろ一樹を起こさないと。
「一樹、起きなさい」
一樹は眠そうに目を擦っている。
「すいません、身体を落ち着かせるために寝ていたのに、いつの間にか熟睡してしまいました」
なんの落ち度も無いのに、一樹は丁寧に頭を下げた
「いいのよ。元はといえば私が悪いんだがら。本当にごめんなさいね」
私も頭を下げる。こういう場合は上司とか部下とか関係なく接しなければならない。
465 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/20(木) 14:01:40.94 ID:NBvhheykO
>>430
「今日はありがとうございました。肉じゃが美味しかったですよ」
「ごめんなさい。ああいうは事は二度と起こらないようにするわ」
「もうその事は忘れて下さい。今思えば、意外といい経験だったかもしれませんし」
「本当に何もないのね、なにか異常があったらすぐに連絡するのよ」
「わかりました。じゃあまた後日…」
そこまで言うと、一樹は方向を転換して玄関から出て行こうとしている。
私はその一樹を止めたくなった。だが、仮に止めたとしても私に何ができるだろう…
その点を考えると私は動く気になれなかった。
閉じられたドアを見た後にマンションの前まで見送れば良かったかなとも考えたが、後の祭だ。
私はリビングに向かい、ソファにうつ伏せに倒れた。身体が重いのは身体にアルコールが残っているからだろうか。
「このまま寝よう」呟いて私が実際に眠るまでの時間は五分かからなかった。
西を眺めると太陽が大きく映った。その光景は、僕になんとも言えない充実感を与えた。
アルコールは人生に必要ないものだとばかり思っていたが、いつもの風景が違って見えるのであれば、時々はいいのかもしれない。
僕はそう思いながら家までの道のりを踏みしめた。
466 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/20(木) 14:03:08.69 ID:NBvhheykO
「ただいま帰りました」
「おぅ、おかえり一樹」
兄弟の中で僕以外だと唯一の男の声。疲れきった様子も無いから、恐らく不思議探索には出かけなかったのだろう。
「あら、おかえりなさい一樹。そういえばなにをして遊んでたの?」
涼子姉さんの声だ。社会人だから休日をのんびりと過ごしたいのというのが口癖だから、休息をとっていたのだろう。
「今日は友達とカラオケに行ってまして」
この時の為に用意しておいたセリフを使う。
「カラオケか、最近行ってないわね」
「たまに行くと楽しいものですよ」
「そうね…ん?一樹、お酒飲んだでしょ」
一瞬ヒヤリとする。大丈夫だ。カラオケなら酒を飲んでいても不思議な所は無い。
「ばれてしまいましたか。友達に誘われてちょっとだけ…」
「未成年だからってとやかく言うつもりはないけど、羽目外してすぎないのよ」
「肝に命じておきます」
不可抗力だったのは言う必要はないでしょう。
それを説明しようと思えば、機関の説明もしないといけませんし。
「…酒は飲んでも呑まれるな」
有希さんからの忠告も聞けました。今日は珍しい日です。
468 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/20(木) 14:04:11.69 ID:NBvhheykO
「あ、一樹君おかえり。帰ってたんだ」
末っ子の妹さんです。僕はさっき帰ったばかりだと言う旨を伝えて一旦目を切りました。すると、
「ねぇねぇ、一樹君からいい臭いがするけど、どうした?」
酒臭いのをいい臭いと捉えますか…僕がどう切り返すか考えている時に、涼子姉さんから助け舟が渡されました。
「妹ちゃん、一樹君は間違ってお酒飲んじゃったの。だからそれはお酒の臭いだよ」
…まさか助言が核心を突くとは思いませんでした。目配せする涼子姉さんに目を合わせられません。
ですが、これに対する妹さんの反応は予想外のものでした。
「えぇ、違うよ。お酒の臭いじゃないよ。女の人の臭いだよ」
女の人の臭い…?確かに半日森さんと過ごしましたが、それくらいで臭いが移るものですかね?
それに、家主のベッドで寝ていたからと言って、“女の人の臭い”は移るのでしょうか?
「妹ちゃん、“女の人の臭い”ってどんな臭い?」
僕が呆気に取られているのを見て涼子姉さんが尋ねました。
「うーんとね、なんかいい臭いで、その…涼子ちゃんがお仕事行く時に付けてる香水みたいな臭い」
「そう…わかったわ妹ちゃん。ありがとね」
469 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/20(木) 14:05:31.62 ID:NBvhheykO
「私はちょっと一樹に話があるから、みくるの所に行ってきて」
「うん、わかった」
妹さんは笑顔で頷くと、走って去っていきました。涼子姉さんは兄さんと違って妹さんの扱いが上手です。
そんな事を言っている僕はどちらに近いんだろうと思っていると、涼子姉さんから今から部屋に来るように指示を受けました。
さっきはおおらかな雰囲気を醸し出していたのに、今は顔が凄い形相です。
さっきはお酒の一杯や二杯では怒らないと言っていたのに、手のひらを返したようです。
部屋に入ると座るように目で合図を受けました。僕は床に座ろうかとも思いましたが、
姉さんがベッドに座るよう言われたので従いました。…今日は涼子姉さんにイエスマンになっている気がします。
「…今日はカラオケに言ったんだよね?」
「はい」
「それで、お酒を飲んだのは認めると?」
「はい」
ここまで言うと、姉さんは顔を赤らめて視線をあちこちに巡らせました。
やがて、一回溜め息をついてからまじまじと僕の顔を見つめ始めました。
そして冷ややかに僕の名を呼びます。僕はそれにいつもより遅れたテンポで返事を返します。
470 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/20(木) 14:06:18.01 ID:NBvhheykO
「カラオケには女の子も来てたんでしょ?」
この質問の尋ね方が“来てたの?”だったら、僕は否定しただろう。けどこの姉さんの尋ね方は上ような形だったので、僕は肯定した。
するとまた姉さんは一瞬視線を反らし、また僕の方を眺め始めた。今度は時間がかなり短縮されていたようだけど…やがて口を開いた
「一樹、あなたも男の子だし、年齢も年齢だからそういう事に興味があるのはわかります。
ですけど、あまり行き過ぎた行為はし過ぎないようにしなさい」
「はぁ…」
姉さんは何を言ってるんだ…それの注意ならさっき有希さんがいる前でもやったのに…
「一応言っておくけど、避妊だけは絶対にしなさい。仮に望まれない妊娠をした時に、一番辛いのは一樹自身なのよ」
ああ、そういう事ですか…これまでのやりとりがなんだか噛み合わないと思ったら、話の主題が違ったからなんですね…
「わかりました。気をつけます」
何もしてないのに、こんな事に対して真面目に返事するのも妙な話ですが、
否定するのも面倒なので、イエスマンを気取らせてもらいます。
最後に誰にも気付かれないように、このセリフを言わせて下さい。
「やれやれ」
fin
471 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/20(木) 14:07:47.62 ID:NBvhheykO
とりあえず終わった…
最後に一言
スレ違いスマン
&保守