1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 01:54:33.65 ID:4wnMa/Nj0
涼宮ハルヒは俺のことをお前のパトロンか何かと勘違いしているのではなかろうか。
そう思えるほどにやつの俺に対する金銭、及び物品の要求は日に日にエスカレートしして
おりそれは一高校生の俺に賄える代物ではなかった。もちろんやつが「キョン、さっさといくのよ」
なんて捲くし立て買いに行かせるものすべてに領収書は貰っていたのだがいかんせん団長に精算を要求しても
戻ってくる自信はなくそれを試すほど俺はあいつのことを分かってないわけじゃなかった
2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 01:59:27.06 ID:4wnMa/Nj0
いっそ竹部幹事長顔負けのSOS団屈指のイエスマン古泉に行かせたらいいのではないかと思う
やつは意味深な黒塗りタクシーに親類は豪華な別荘と金銭にゆとりのある体を存分に見せびらかしているのに
しかしやっぱり買い物の役が俺に回ってくるのは古泉は副団長、おれは団員その一という階級の差がなせる業か・・・
おのれ民主主義
5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 02:07:23.12 ID:4wnMa/Nj0
なんとかして臨時収入を得なければと考えたが
SOS団らしからぬ宇宙人でも未来人でも超能力者でもないごくごく一般な普通平凡凡庸なおれは
情報連結やらなんたらかんたら奇々怪々な方法で賃金を得るなんてことはできず
かといってファミレスでバイトすることになったなんて
あの神(古泉曰くに言おうものならさあ大変
7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 02:12:39.73 ID:4wnMa/Nj0
「SOS団に副業は認められないわ。SOS団はSOS団であって唯一無二かけがえのないものなの
いい?キョン?判ってるの?」
なーんて理屈だか何だか判らないしかしハルヒに言わせれば十分筋の通った理屈でまくしたてるに決まってる。
どーしたものか、このままでは毎月自宅での神(父曰くより舞い降りる天からの授かりもの、
形容が過ぎたか?つまりおれの大事なお小遣いは毎月神(古泉曰くへそのまま献上され
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 02:17:07.83 ID:4wnMa/Nj0
俺はなんだというとただのパイプ役カッコよく言えば運び屋である。
言っておくが俺はパイプ役にも運び屋にもなり下がるつもりはない。
勿論SOS団にお咎めを付ける気はなく設立当初、あくまで設立当初に比べれば
俺だって多少なりともこの団に愛着・・なんてもの湧きつつある、認めたくはないが。
9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 02:20:55.89 ID:4wnMa/Nj0
でも俺だってもっと自由にお金を使いたい。
だってここは民主主義の国日本だろ?
稼いだ・・わけじゃないがその金はもっと俺の自由に
それはCDであったりラノベであったり朝比奈さんとのデート資金であったりするべきだ。
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 02:29:51.38 ID:4wnMa/Nj0
どうもその辺をハルヒで無い方の昔からいてしかるべき神は解ってない。
おーい神様、この偽神涼宮ハルヒ、もとい俺の小遣いをなんとかしてくれー
しかし叫んだ手前ハルヒの前での俺の、正確にいえばハルヒ以外の発言力は
お世辞にも高いとは言えず、最新型液晶テレビなんかよりもずーっと薄い氷が
小学生の登校時に無残に割られるように意見ともども粉々にされるのは
目に見えてるのでしかたなーくただ毎日を過ごすしかないのである。
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 02:33:52.48 ID:4wnMa/Nj0
なんて金銭面ではしょぼくれた毎日を送っていた俺に朗報が入った。
ハルヒじゃない方の神は我を見捨てていなかったか。
要約するとこうだ。
親戚がコンビニを経営しているがこの度の商店街大福引大会で
特等のハワイ旅行が当たってしまった。
12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 02:38:37.07 ID:4wnMa/Nj0
さてさてどうしよう・・・・
と悩んでる話をラッキーにも母親から聞かされた俺は
オレオレオレだよ、オレしかいないとオレオレ詐欺顔負けの
オレオレっぷりで母親を強引に説得し親戚がハワイに行ってる間
アルバイトを兼ねて店番をやらしてもらうことになった。
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 02:44:14.40 ID:4wnMa/Nj0
そのコンビニには何度か足を運んだことがあるがとりたてて良い場所にあるわけでもなく
大きいわけでもない。ごくごく普通の小さいコンビニで家族で交代制で店番をしていて
アルバイトもいない。中学時代金欠だった時何度が臨時で働かせてもらったことがあるので
一応勝手もわかる。
14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 02:47:31.81 ID:4wnMa/Nj0
母親にその旨を電話にて伝えてもらったらなんと快く了承してもらった。
ハハハ、こういうときは持ちつ持たれつですよ。
小さいコンビニとはいえ一人で回すのは難しいと言われたが
その点も抜かりはない
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 02:49:23.76 ID:4wnMa/Nj0
古泉だ。普段散々お前のアルバイトである、神人が出現しないために
無償でひと肌もふた肌も脱いでるんだ。協力しないとは言わせないぜ。
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 02:51:51.28 ID:4wnMa/Nj0
「すみません、お気持ちは嬉しいのですがそれは無理ですね」
古泉はいつもの微笑を浮かべそう言い放った、確かにそういった。
協力できない?いつも散々俺にハルヒの無茶付き合わせといて
無理だとそういったのか、超能力者
17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 02:58:35.32 ID:4wnMa/Nj0
「すみません、これは機関の決まりでして。私たちはできるだけ涼宮ハルヒの傍
にいなくてはならないのです。それにいくら親戚の頼みとはいえあなたが一時的にでも
SOS団をほっぽらかすのは涼宮さんに良い影響を与えるとは思いません
僕でも朝比奈みくるでも長門さんでもなくてあなたがです。
しかしまああなたの気持ちも分らないわけではないのでこうして
協力できないまでも黙って見逃そうとしているのです。」
18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 03:04:33.27 ID:4wnMa/Nj0
納得はいかないが楽しくもないのに微笑みを浮かべる古泉が意見を変えるとは思えず
仕方なく古泉のもとを後にした。
最大の当てが外れた。バイトは土曜日、明日からだ。さあどうする。
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/03/08(土) 03:14:00.49 ID:4wnMa/Nj0
どうする、いっそハルヒに正直に話してSOS団の校外活動ってことにするか?
いやこれはあくまで最終手段だ。あいつがすんなりうんというわけがないし
認めたとしても本来貰える筈のお給金はなぜか絶対すべてあいつの手元に
いくにかまってるのだ。この本末転倒ぶりはいかがなものか。
いやいや絶対に避けねばならない。
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 03:24:05.76 ID:4wnMa/Nj0
朝比奈さんには古泉と同じ理由で断られそうだし、なにより日頃
ハルヒのおもちゃ及び俺の癒しの為に日々孤軍奮闘なさっている
女神にこれ以上の労働をさせるわけにはいかない。
国木田と谷口にも聞いてみたが二人とも手伝ってやりたいが、今週は用事があるから無理だ。
だそうだ、なぜいつも暇なこいつらが都合よく用事があるんだ?これもハルヒの仕業じゃあるまいな
51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 12:48:25.92 ID:7ughsg490
昼休み、急ぎ弁当をかきこんだ俺は
SOS団アジトへ向かった。
語弊があるな俺が目指したのは文芸部部室だ。
目標は長門有希、対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインターフェース
がお客に無難にコンタクトできるか?ってのはいささかの不安はあったし
54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 12:54:38.67 ID:7ughsg490
毎度の如く困った時の長門さまで
今回もあいつの助けを借りちまうってのは
俺も一男としてどうなんだ?と自問自答も
あったが背に腹はかえられないとはよく言ったもので
俺には選択肢がなかった。
じゃあハルヒに頼むか?
大きく首を横に振った俺はSOS団に寄生されている
要治療のドアを開けた
55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 13:01:24.11 ID:7ughsg490
そこにはいつもの姿で困った時のなんとやらがいた。
「・・・・・・・・・・・」
長門はそこに誰がいようが必要がある時以外一切しゃべらない、
必要のある時ですら2、3個の到底十分とは思えない単語で終わらせる為
団員一同(特に俺は手を拱いている。
57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 13:08:17.23 ID:7ughsg490
だから俺がこうしてはてどうして伝えたものか考えている限り
「・・・・・・・・・・・・・」
は万里の長城のごとく果てしなく続くのである。
いい加減何か言わなきゃ、部室の入り口で突っ伏したままの俺は
3里ほどは進んだであろう万里の長城で俺は言った
「長門、頼むもうお前しかいないんだ」
58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 13:12:55.66 ID:7ughsg490
「・・・・・・・・」
しばらく、そうだな2里ほどの時間を空け
「言葉の意味が分からない。それは私に情報を伝えるのに十分ではない」
再び広辞苑かと見紛う様な分厚いハードカバーへ意識を向ける長門を
引き止め事のいきさつを話した。
60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 13:22:13.69 ID:7ughsg490
「・・・なんだけど?」
「・・・・・」
しばしの沈黙のあと
「そう。」
「そ、それは手伝ってくれるってことなのか?」
「・・いい。」
なにが彼女の心をひいたのかは判らないが
とにかく一人っていうのは免れたぜ。
「じゃあ明日9時に迎えに行くから、よろしく頼むぜ
。サンキューな長門恩にきるぜ。」
「別にいい。」
そういった長門がなんだか少しほほ笑んだ気がしたが
光の加減ってやつだろう、そうに違いない
65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 13:35:43.57 ID:7ughsg490
「ちょっと、キョン!聞いてるの!!。」
「ん?あ、あぁ聞いてるぞ、んでなんだっけ?」
「もう全然聞いてないじゃない、SOS団主催大花火大会の話よ。」
何を言い出すやら、お前の体内時計はどうかしらないが
今は世間一般では12月だ、冬だ年の瀬だ。
67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 13:43:45.64 ID:7ughsg490
「そんなこと知ってるわ、いい?聞いて驚きなさい。
その花火が私の日々の尽力の賜物と言うべきかしら、
商店街のおじさんが夏の売れ残りの花火を沢山くれたのよ!!!ねぇ古泉君。」
ハルヒに向いていたいつもの微笑みを俺に向け
「そうなんですよ。一重に涼宮さんのおかげです。僕も
こんな季節外れに花火ができるなんてSOS団に入って
今日ほどうれしいと思ったことはありませんよ。」
68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 13:48:13.52 ID:7ughsg490
なーんて適当な賛辞の言葉を並べいつものイエスマン
ぶりを発揮していた。
「さすが副団長ねよくわかってるわ、有希はいいわよね?」
「・・・・・・」
これをOKととったらしいハルヒは
「みくるちゃんは嫌なんて言わないわよねぇ?」
「ひぃぃぃ」
女神が脅えてらっしゃるなんと健気な
70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 13:52:41.32 ID:7ughsg490
「というわけよキュン!いいわね。」
降参だ、花火でもなんでも好きにやってくれ。
「よしこれではここに会議での全員一致をもって、
SOS団主催大花火大会の開催をここに決定するわ。」
お前の会議は議長が権力持ちすぎなんだよ。」
71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 13:57:34.47 ID:7ughsg490
古泉がハルヒに聞こえない声で
「ありがとうございます。ここであなたが嫌だと言えば
、彼女は季節を夏に変える、なんてこともやらないとは
言えませんからl。」
全くだ冬に花火をやることくらい今までの行いを比べれば
長門だって楽々重量オーバーのスーパーハイパーミニマム級
くらいの軽さだ。
73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 14:04:05.24 ID:7ughsg490
花火?素晴らしいじゃないか。寒空の下俺の冷え切った心を
暖かく温めてくれる丁度いい光になりそうだぜ。
「ちょっとキョン!古泉君、私語は謹んで。まだ会議は終わってないわ。
いつやるかが決まってないじゃない。」
どうせお前が決めるんだろう、さっさとしろよ。
「そうね、じゃあ今週の日曜日に決定よ。
善は急げよねみんないい?じゃあこれにて会議しゅうりょーー」
74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 14:09:29.12 ID:7ughsg490
まずいことになったと古泉と俺は顔を見合わせた。
俺たちが予定がある、なんていったって通るわけがない。
却下却下却下だ。悪の大魔王の前で正義はあまりにも
無力なのである。
いやはやどうしたものか、諦めた方がいいんじゃないですか?
とでも言わんばかりの古泉の微笑が俺を貫く。
77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 14:13:01.95 ID:7ughsg490
しかし俺の為にもひいては朝比奈さんの為にも
諦める訳にはいかない。一休さんばりにとんちを
聞かせてやろうとうんうん唸ってると
「ちょっと。」
長門が珍しく誰に質問されたでもないのに声を上げた。
78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 14:20:41.50 ID:7ughsg490
「なに、有希。心配しないで花火は平等に分けるわ。
有希の分だってちゃんとあるのよ。団長だけが多いなんて
そんな事はないわ。約束するわ、この決定に変更はないわ。
一事不再理の原則ってやつよ。」
えらくタイムリーな事を言い出すやつだ、しかし長門はよく見てないと
分らないほど小さく首を横に振った。
79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 14:25:10.21 ID:7ughsg490
「違う。・・出来ない。私はそれに行く事を可能としない。」
「どうしたのよ有希、楽しいわよ花火。」
「私自身は行く事を望んでいる。・・しかし出来ない。その日は
家族で集まる、そう法事。」
82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 14:31:47.59 ID:7ughsg490
長門は宇宙人、家族はいるとは聞いていない。
じゃあこれは嘘?俺との約束を守るためについてくれた・・
「・・・うーん。SOS団の活動も大事だけど家族での行事を
ないがしろにしては立派なSOS団員とは言えないわ。
仕方ない、来週に延期するわ。今週は各自で不思議探索に
出かけること!以上今度こそ会議終了よ!」
83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 14:37:14.71 ID:7ughsg490
それからハルヒの怪獣がどうのこうのを話を
一人を除く全員で聞かされしばらくして長門が
本を閉じこの日のSOS団の活動とも言えない活動は
終了となった。
長門に聞きたいこともあったが皆の前で聞くわけにもいかないし
この疑問は明日に取っておくことにした。
91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 15:10:43.51 ID:7ughsg490
夏なんて言葉が果たして日本にあったのかと疑いたくなるほど
冷え切った土曜日の朝、冬本番には少し気が早いと思うが・・
遅くなった人が昼ご飯おごりね
なんてルールは今日は無いが間違っても
誘った方が遅刻なんて笑えない冗談なので、
余裕をもって家を出て8時半には長門のマンションの前に着いた。
92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 15:17:26.37 ID:7ughsg490
9時になったら呼び鈴を押そう。
まだ愛しの朝比奈さんはご就寝だあろうか
今日は休みだし寝坊なんてのも底なしに愛しいな。
ハルヒはハルヒでもう起きてひとりで不思議探索に
行ってるかもしれないな。
くだらないことを考えていると長門が玄関から出てきた。
集合時間にはまだ早いぞ。
時計をみると8時35分だった。
95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 15:22:08.34 ID:7ughsg490
「おはよう長門。」
「・・・」
古泉には負けるが俺なりに精一杯の笑みで迎えたはずだったが、
相も変わらずの対応だった。負けるな俺
「集合時間にはちょっと早いが俺も早く着いちまったから
丁度いいな、ハハ。」
「・・あなたが見えたから。」
96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 15:27:22.53 ID:7ughsg490
蚊の小さな鳴くような声でいったが確かに俺にはそう聞こえた。
これで笑顔でも見せてくれりゃあ少しは萌えるといったとこだが
残念ながら顔面のっぺらぼうの長門は黙って駅へと歩いて行った。
待ってくれ長門、大体お前はどこの駅か知らないだろう。
早足で追いかけた。
97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 15:33:12.62 ID:7ughsg490
「なんだってお前は昨日ハルヒに嘘をついてくれたんだ?」
揺れる電車の中向かい合った長門に昨日からの疑問をぶつけた。
「・・・・・・」
内緒なのか、それは俺に言えないことなのか?まさか明日本当に
法事があるってわけじゃあるまいな。それはそれで困るんだが
99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 15:41:14.14 ID:7ughsg490
「わからない。」
電車の中じゃ余計長門の声が聞き取りにくいことに気づいた。
これは注意して聞かねば。
「なぜあの時涼宮ハルヒに嘘をついたのか、私の仕事は彼女を監視すること、
彼女の意思を妨げるのは情報統合思念体の本意ではない。でもあなたとの
約束を優先した。わからない、これはバグかも知れない。」
100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 15:45:19.03 ID:7ughsg490
違うぞ長門、それはバグではない。
それは感情だ、なんだか知らないお前のパトロンの
意思に反した。素晴らしい事さ、なんといったらいいかな
お前は今眼鏡をしてないだろ?そういうことさ。
「・・そう」
101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 15:51:41.54 ID:7ughsg490
もしかしたらお前が今日制服で無く私服を着てきている
ってのも関係あるのかもしれないな。
他にこれといって話すことはなく、
目的の駅に着く十数分の間の会話はこれくらいのものだった。
携帯用にいつものハードカバーではなく文庫本を取り出した
長門に話しかける勇気が無かっったてのも原因の一つだ
105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 16:01:00.14 ID:7ughsg490
駅に着いて歩いて10分ほど、目的のコンビニに辿り着いた。
その間長門は俺の一歩後ろを文庫本を読みながら着いてきた。
いかにも出かける準備万端の親戚夫婦とその息子が出迎えてくれた。
「あらキョンくん、ごめんね急に。高校生で忙しいでしょうに。
そちらのかわいらしい子は彼女さん?隅に置けないわねぇ」
108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 16:09:06.50 ID:7ughsg490
「・・・・・・・・」
おい長門、否定してくれ
彼女ではないんですけど・・そうクラスメイトです。
団員仲間なんです、なんていうと余計話がこじれる。
「クラスメイトねぇ・・まあいいわ、翔あなたもキョン君にお礼を言いなさい。」
「キョン君ありがとう。」
キョンは万国共通語じゃないぞ。
111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 16:15:55.51 ID:7ughsg490
夫婦は簡単な引き継ぎ業務を終わらせタクシーに乗り
空港へと出かけて行った。
とここから長門と二人きりの店番が始まった訳だが
時刻は10時前、今時大手チェーンでも24時間営業でもない
コンビニの人の入り用はどこもこうなのかお客は一向にやってこなかった。
113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 16:25:43.80 ID:7ughsg490
お昼になれば多少客足も増えるかもしれないが
今は一人でも十分対応できるな、雑誌コーナーから適当に一冊
手に取りかービィ一面のボスの様にただ木の如く雑誌コーナーに
突っ伏している長門に渡しレジ奥の休憩室を指差した。
小さく頷いた長門は休憩室へと入って行った。
115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 16:35:31.05 ID:7ughsg490
あれから一時間、11時になっても客足が増えることはなかった。
全くゼロではないが売上5000円もないぞ、大丈夫か?
暇だが店番がオレしかいないので休憩に入るわけにもいかず、
廃棄と証したホットスナックをこっそり食べる俺
休憩室で雑誌を読んでいるであろう長門にも差し入れてやった。
売り物だから雑誌はこぼすなよ。
心配ご無用、だって長門は文庫本を読んでいたから
116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 16:42:22.75 ID:7ughsg490
時刻が12時に差し掛かろう頃から急激に増える客、
近くに工場でもあったっけな。
戻って来い長門、油でピカピカになった唇をティッシュで拭かせ
増える客に対応するため長門にもう片方のレジにつかせた。
大丈夫、一通りのことは教えた。長門なら機械の如くこなしてくれるさ。
118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 16:47:20.73 ID:7ughsg490
俺の前に並ぶ客が半分・・いやそれ以上長門に流れ
安心する俺、そーだよなあどうせなら冴えない男より
小柄な女の子にレジ打ってもらいたいもんなあ。
俺だってそうするさ、うんうん
121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 16:53:15.78 ID:7ughsg490
俺の期待以上にもくもくと実に手際よくレジ打ちをこなす長門。
そもそも脳内がレジスターみたいなものだから
レジなんて必要ないのかも知れん。
なんて下らない事を考えながらこっちはこっちでもくもくと
レジ打ちをこなす。
122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 16:58:45.43 ID:7ughsg490
しかしそれにしても早い、今じゃ俺の二倍近いスピードで
客を捌いてる。
よーくみるとアイツ機械の類いのものを一切使ってねぇ。
レジはまあいい、天才暗算少女としてお客に説明できる。
125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 17:09:18.75 ID:7ughsg490
でもレンジは使ってくれ。この時間帯の客は8割方弁当を
求めてやってくる。
「あたためますか」
と機械に言わせたような棒読みで言いそれにイエスと答えたら
くるりと弁当を持ち半回転振り向き1秒も経たないうちにまた正面を
向き渡す。
目を丸くしたお客がなにも言わない所を見ると弁当は無事温まっているらしい。
また何か宇宙的な不思議な力を使ってるな、ここは学校じゃないんだから勘弁してくれ。
止めたかったが俺のレジにも客は途絶えることはなかったので
お昼も過ぎ再び客がいなくなるまで長門のスペースワンダフルパワーは
いかんなく発揮された。
126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 17:14:14.22 ID:7ughsg490
「空間に存在する水分を振動させ温める、
大丈夫レンジと原理は同じ。」
原理は同じでも方法が違うじゃないか
そこを問題にしてるんだ。いいか今度からはレンジを使ってくれよ。
「必要ない。結果は同じ」
128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 17:19:47.89 ID:7ughsg490
話し合いの結果なんとかレンジに弁当を入れてから
その力を使ってもらうことになった。これなら多少温めが
速いだけでそこまで疑問には思われまい。約束だぞ、長門。
「わかった、それと・・」
なんだ?
130 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 17:24:24.41 ID:7ughsg490
「売り上げのこと・・あなたは私がレジスターを使ってないから
誤差が生じることを心配している。」
よくわかったな、その辺はうやむやにしてしまおうと思ってたんだ。
「問題ない、売上にかかわる全ての情報を私は記憶している、それはいつでも
転送可能。あなたの迷惑になることは・・しない。」
131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 17:29:37.00 ID:7ughsg490
迷惑だなんて間違っても考えるな、今までただの一度も
そんなこと思ったことないし思うこともない。今日だってこうして
ハルヒ嘘をついてまで俺を手伝ってくれている、もっと自分を出したって
いいんだぜ、お前は大事だ友達じゃないか。
「・・そう・・友達・・そう」
135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 17:40:01.97 ID:7ughsg490
ちょっと暗くなっちまったな。俺たちもちょっと遅いけど
お昼にするか、今日は俺の奢りだ、何食べたい?
「あなたと同じでいい」
自分を出したっていいと言った途端これだ。
じゃあこれでいいのか?俺は弁当コーナーから
テキトーになんたら幕の内を取り出した。
136 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 17:48:12.75 ID:7ughsg490
「この弁当には食品添加物が相当量含まれている。買うことを推薦しない」
おいおいなんでもいいと言っておいてそれかよ。
じゃあなんだったらいいんだ?
長門の指さした弁当を二つ買い一つを長門に渡した。
先に食って来いよ、いくら客がいないからって二人で食うわけにはいかないからな。
137 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 17:52:02.17 ID:7ughsg490
「・・・・・・」
無言で休憩室へ行く長門を背に再び一人での店番が始まった。
しかしなんだって鯖の塩焼き弁当なんだ?これはなんだ、
俺が毎度赤点スレスレの超低空飛行をしてるからDHAでも
とって少しは頭を良くしなさいっていう長門の意思表示か?
141 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 17:59:29.61 ID:7ughsg490
10分ほどで長門が休憩室から出てきた。
「次・・交替」
ああその事だがな、俺はいいや。さっきフライドチキン食べたし
あんまお腹空いてないんだ。
「ダメ・・あなたの成績はお世辞にも良いとは言えない。あなたに
留年してもらっては困る。これは情報統合思念体の意思でもある。
」
143 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 18:04:19.40 ID:7ughsg490
これは長門流の冗談だと思うことにしてお言葉に
甘えて休憩に入らせてもらった。現代高校生の
ご多分にもれず、肉中心の生活でそんなに魚は好きではないが
さっき肉を食ったからであろう、サバの塩焼き弁当はあっさりしてて
思いのほか上手かった。
145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 18:11:03.10 ID:7ughsg490
食事を終え俺は店内へと戻った、いつまでも長門一人にして
おくのは気がかりだしな。
人が増えるまでまた本でも読んでなよ。
そう提案したが長門は無言で首を横に振った。
もう読み終えたのかな。
147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 18:19:03.34 ID:7ughsg490
客足の悪い中無意味に二人での店番となったが
品出しも終えやることのない俺たちは終始無言で
少し気不味かった。
「・・・・・お弁当おいしかった?」
珍しく長門から話しかけてきた、今日のこいつはどこか変だ
「あ?ああずっと肉ばっか食ってたからな。たまには魚も
悪くないよ。おかげで少しは頭がよくなったかもな、なんて」
「そう」
少しは笑ってくれ
149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 18:22:27.54 ID:7ughsg490
・・・・・・・・・・・・・・
長門はどうだったんだ?魚好きなのか?
再び続く沈黙をかき消すため聞いた、別にそこまで
興味があった訳じゃなくただなんとなく聞いた。
「・・・・・・・・」
返答は得られず沈黙は続いていた。
151 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 18:27:19.38 ID:7ughsg490
気まずい時間は来客によって終焉を迎えた。
正直助かったぜ、お礼にも心がこもる。
しかし来客なんてのは一時の気休めでしかなく
再び沈黙が始まった。
助けてセガール!!
152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 18:31:16.85 ID:7ughsg490
「・・・あまり・・」
声を発したのは俺でもセガールでもなく長門だった。
あまり?なんだって
「あまりおいしいとは言えない。」
弁当の話か、鯖嫌いなら選ばなきゃいいのに
153 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 18:36:05.11 ID:7ughsg490
「違う、嫌いではない。しかし食事において重要なのは
何を食べるかではなく誰と食べるか、whatではなくwho、
一人での食事はあまりいいものとは言えない。」
概ね同意だがとても毎日一人で食事をしているであろう
長門らしからぬ言葉に俺は驚いた。
157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 18:47:36.86 ID:7ughsg490
「だから休日のSOS団での食事はとても貴重なもの。」
朝は妹と昼は谷口国木田とそして夜は家族と、
一人で食べることが少ない俺はそういう風に思ったことは
なかったが俺が長門の立場でもそういう風に思う事は
容易に想像できた。
孤食・・ね、なぁ長門今度からお昼は俺と一緒に食べるか?
文芸部の部室で、さ。
「・・・・」
長門は無言のまま小さくでもいつもよりは大きく頷いた。
160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 18:53:09.76 ID:7ughsg490
ありがとう、とは耳をすませても聞こえなかったが
確かにそう言われた気がした。これが幻聴というやつか。
俺もいよいよ来るところまで来てしまった。
SOS団は神に宇宙人に未来人に超能力者に幻聴者、
普通の人がいなくなってしまった。
ええい気を確かにもて俺、幻聴?いんや気のせいだ。
161 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 19:01:43.07 ID:7ughsg490
SOS団存続の為にもなんとか踏みとどまった俺は
長門とともにその後も店番をこなした。
二人がレジに並ぶととても偶然とは思えないほど
長門の方に人が行くのは少し気分を害したが、
あいつはあいつで俺との約束を守って温めは
一度レンジに入れてから不思議な力を使って
くれていたし、煙草の注文でどう考えても番号を
言われる前からその煙草を取ってきていたのは
この際目を瞑ろう。
170 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 19:19:59.30 ID:7ughsg490
セブンイレブンよろしく11時に閉店した店で
閉店後業務を行い11時半には店を後にした。
「明日は6時に迎えに行くから、頑張って起きてな」
じゃあ、長門のマンションの前でそういい立ち去る。
時刻は二時を過ぎている。今日は一体何時間寝られるんだろう。
172 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 19:24:42.97 ID:7ughsg490
どう考えても時間が合わないのは無言の
長門を俺が無理矢理近くのファミレスに連れて行き
一緒に夜飯を済ませたからだが後悔はしていない。
これでいいのだ、俺の睡眠時間がなんだ、
長門の睡眠時間が減ったのは・・まあなんだすまない。
そもそもあいつって寝るのか?・・
176 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 19:37:57.48 ID:7ughsg490
翌日早朝、俺は辺りは真っ暗の午前五時過ぎに強引に
目を覚まし長門の住む高級マンションへと向かった。
自転車を漕ぐ手が寒い、顔が寒い足が寒い。
ああ全部が寒いのか、電車もまともにないこの時間
だから仕方がない。
178 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 19:44:00.42 ID:7ughsg490
今度はぎりぎり6時五分前にマンションの前に着いた。
長門は既に待っていた。スマン長門、随分待っただろう。
「別にいい」
いやきっと絶対30分くらい前から待ってたに違いない。
じゃあそのかじかむ手はなんだ、赤みがかった頬は何だ、
長門なりの優しさに殊更感銘を受けた。
マンションの駐輪場に自転車を置き駅まで一緒に歩いた。
179 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 19:50:11.32 ID:7ughsg490
電車の中で長門は文庫本を取り出し読み始めた。
いいよ好きにしな、どうせ無言だったしさ。
その本は昨日読んでいたものと同じ本だった。
昨日の午後休憩を拒否したのは本を読み終わったからじゃないらしい。
じゃあ一体どうして?続きが気になるなら読めばよかったのに、
宇宙人の考えることはよくわからん。
181 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 19:57:01.61 ID:7ughsg490
七時に店を開けてもやっぱり誰も来ないので
長門に休憩を促したがやっぱり首を縦には振らなかった。
客の来ない中二人での店番、バイトとしては最高の状態
に見えるかも知れないが二人とはいっても一人は置き人形みたいな
ものなので無言の時は少々苦痛でそれを紛らわす客もほとんど来なかった。
182 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 20:05:05.28 ID:7ughsg490
お昼は相変わらずの入り用であったがそれほどの混乱も
なく過ごすことができたのは間違いなく長門のおかげだろう。
これがもし朝比奈さんであってみろ、
一人でレジ打ちなんてもってのほかで
キョン君・・なんつって事あるごとに腰ぎんちゃくの様に
俺に纏わりつくに決まっている。
目の保養にはもってこいだが到底頭数には数えられない。
古泉は古泉でバイトには縁がなさそうなおぼっちゃだから
こう上手くはいかなかっただろう。
ハルヒ?あいつは論外だ、核爆弾だからな
184 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 20:13:01.70 ID:7ughsg490
長門が長門であったからこそ今こうして俺はここにいるんだ。
心の中で手を合わせた、長門ありがとう。
そんなこんなで時刻は1時を回り客足の途絶えてきたので
そろそろ飯にしよう、そういい弁当コーナーにきっとこれしか
ダメなんだろう?鯖の塩焼き弁当を探しに行く俺の右肩に
若干の負荷がかかった。
186 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 20:21:41.68 ID:7ughsg490
分ってるよ鯖の塩焼き弁当だろ?
「違う・・それはあくまで最終手段、コンビニのお弁当は
どれも添加物が多く体に良いとは言えない。
あなたが健康でいることは涼宮ハルヒの意思、尊重
されなければならない。」
理屈はわかるがじゃあなんだ、今日はご飯抜きなのか
「それも違う・・・・・・」
そういった途端長門は黙った。
どうも昨日からのこいつはおかしい、いやおかしいのは
ずっと前からだがなにか・・
196 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 20:57:11.26 ID:7ughsg490
「もしあなたがそれでもなにか食べたいとそう考えるなら、
おいしさや見栄えに何も口出ししないとして・・」
前置きが長いな
「食べたらいい。人に何かを作ったことはないからあなたの口に
合うかどうかは保証しない。」
そういうと長門は休憩室へと戻りカバンの中からおそらく手製であろう
弁当を俺の前に差し出した。
200 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 21:06:04.30 ID:7ughsg490
ゴクッ、俺は思わずつばを飲み込んだ。
長門が弁当を作ってきた、俺に?
あいつからすれば単にハルヒの為なのかも
しれないがどうも一般男子には誤解を招く
内容で長門が長門である事を知らなかったら
どうしようもない勘違いをしてたところだろう。
これは手製の弁当だがそこに何ら意味はない。
いつまでも無言では拉致が明かないので
その何ら不埒な意味のない弁当を受け取った。
ありがとう、早速食べてきていいか。
うなづく長門に店番をお願いし休憩室へと入った。
206 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 21:21:01.45 ID:7ughsg490
いつ作ったんだ?そう見まがうほどの弁当がそこにはあった。
見紛うとは言ってもキャビアやフォアグラが入っているとかそういうことではなく
それはごくごく普通の弁当で俺が母に朝もたされたものだとしたら
何の感想を抱くことなく胃に運ばれていくはずだった、そんな弁当。
でもこれを作ったのは長門、やつは俺に昨日2時まで付き合わされ
朝は俺よりも着くよりも早く待っていた。
208 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 21:33:00.08 ID:7ughsg490
一人で弁当を食べている間俺の脳裏に浮かんだのは失礼にも
長門ではなくハルヒの事だった。
なんでもそつなくこなすハルヒはいつかの野球大会の様に
弁当だって上手に作れるんだろうか?この弁当ハルヒのやつがみたら
どんな顔するだろう。
なんて、やつが俺に弁当作るなんて全くもって皆無も皆無、地球がひっくり返ろうが
神人が百万匹現われて地球を滅ぼそうが神龍に頼もうがワンピースを見つけようが
何があってもあり得ないことなのでいらん考えはよそう、ここにハルヒはいないから
弁当が見られることはない、と。
ごちそうさまでした。長門に合掌した。
212 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 21:44:31.99 ID:7ughsg490
食事を終え店内に戻り長門に交代の合図を出した。
「必要ない。食べなくても平気。」
昨日の俺みたいな事を言うな、ダメだダメだ。
弁当は一つしか入っていなかったようなので
嫌がる長門に鯖の塩焼き弁当をもたせ
無理矢理休憩室へ押し込んだ。
214 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 21:51:24.29 ID:7ughsg490
なんだってそんなに働きたがるんだ、別に金は必要ないだろう?
俺のわがままなんだからもう少し気楽にやって欲しいものだ。
午前は眠気や疲れやらなんやらで気だるかった俺も
長門の気の入ってない弁当で気を注入されたのか
体は軽くなんなら午後の業務一人でこなしたってかまわなかった。
215 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 22:00:52.14 ID:7ughsg490
それでも長門は10分そこらで戻ってきた。
無言で俺の後ろを通り過ぎ店内へ向かおうとする長門
待て長門、お前寝てないんじゃないのか昨日。
「・・・・・・・・」
ほら見ろ、もう店はいいから寝てろ。午後は俺一人で十分だから。
「必要ない、私は人間ではない。睡眠はなくとも一週間程度なら苦にしない。」
うるさい、うるさい、うるさい、長門のくせに生意気だぞ。
「・・・・」
すまん、今のは妄言だ。とにかくもうダメだ、働くことは許さんぞ。
再び嫌がる長門を休憩室に押し込んだ。
こうでもしないと気が収まらない。
218 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 22:08:05.35 ID:7ughsg490
女に徹夜させておいて自分は二時間しか寝てないから眠いなんてのが
一番妄言かもしれないなl。
あいつは自分のことを隠す、少なくとも自分から言い出すことはないから
もう少し気遣ってやらないといけないな。俺は長門の彼氏でも何でもないが
命の恩人だ、やりすぎなんて事はないだろう。
219 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 22:18:10.99 ID:7ughsg490
少々自責の念に駆られていたそんな午前3時
相変わらず多いとは言えない客の対応をしていた。
「ねえ、店員さんここにハーブティーはないの?それもとびきり
熱いやつよ。私もう凍えて死んじゃいそうなの。せっかくこんな
辺鄙な所まで来たのに不思議はないし寒いし、全くさえない日曜日だわ」
変わった客だ、そんなもんあるか、喫茶店へ行け
・・・・・・・・・
ハルヒ!!
「キョン?」
店内に二人の声が同時に響き渡った。客がいなくて本当に良かった。
222 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 22:25:59.62 ID:7ughsg490
他人だと思えば非常にかわいらしい女子高生、
きれいなバラにはとげがある、なんて言うがこいつの場合
とげはおおよそチタン合金で出来ていて花びらまでとげの
とげとげとげ女それが涼宮ハルヒでなぜかその核爆弾は
俺の目の前にいた。
「お、お前なんでここにいるんだよ」
「なんでもくそもないわよ、今週は各自で不思議探索っていったでしょ、
だからこうして隣町まで来てるんじゃない。あんたこそこんなとこで
なにしてんのよ?」
227 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 22:40:07.95 ID:7ughsg490
不思議探索・・ああそういやそんなこと言ってたな
俺は仕方なく事のいきさつをハルヒに説明した。
今日は法事に行ってるであろう長門の事とこれがバイトであることは伏せて
「ははーん、じゃああんたはその旅行にいった、親戚の代わりに無償で、一人で店番
をしてるってわけねぇ。」
ああそうだとも。違うけど、ぜひそうあって欲しいと俺は思う。
230 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 22:49:44.96 ID:7ughsg490
「いいわ、手伝ってあげるわ」
へ?
「手伝ってあげるって言ってんのよ?私は団長よ、
団員の仕事は団長の仕事よ。不思議とは全然関係ないけど
見直したわ、キョン。」
ああ、ありがとう。俺はすごく心が痛い。
234 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 23:01:03.15 ID:7ughsg490
なんだか知らないけど突然出てきて手伝ってくれるのは
助かるが問題は長門がドアの奥にいること・・
嘘ついて俺を手伝ってたなんて笑って許しちゃくれねぇよなぁ。
その為に花火大会は延期になったわけだし。
俺の心配をよそに
「ねえキョンこのお菓子食べてもいいの?」
ダメだ
「お弁当は?」
ダメ
「アイス・・」
だ・め・だ。
どうやら店員をなにか勘違いしてるらしい。
何でも食べ放題ならよろこんで働いてやるさ。
236 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 23:10:40.78 ID:7ughsg490
「ほんとケチくさいわねえ、そんなんだからキョンに彼女が出来ないんだわ」
俺のせいじゃねえよ。
「いいわ雑誌でも読むから休憩室はどこ?」
なにが休憩室はどこ?だ。お前は手伝いに来たんじゃないのか、
とっととその手に持ってる雑誌をもとあった場所に反してこい。
239 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 23:22:19.29 ID:7ughsg490
「全く人使いが荒いわ、そんなんだからキョンに彼女が出来ないんだわ」
二回も言うな、それに人使いが荒いなんてお前だけには言われたくねえよ。
普段のSOS団員への態度(特に俺を棚に上げおって。
かといって二人揃ってやるこもなく本意はハルヒを休憩室に入れない事にあった為、
「キョンー手伝えたって客が来ないんじゃやることないじゃない」
の言葉に言い返すことは出来ずこれから増えるんだと宛ての無いことをいって
お茶を濁す他なかった。
245 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/08(土) 23:39:46.61 ID:7ughsg490
が一向にお客は来ずハルヒが来て30分以上したあるとき
やっと一人の客がやってきた。
「おや、涼宮さんじゃないですか。それにおや、あなたまで」
「古泉君!どうしたのこんなとこで?私?私はねいわゆる一つの
手伝いってやつよ、ねキョン。」
実働は伴ってないがな、そう付け加えて頷いてやった。
「僕は涼宮団長の言うとおり不思議探索ですよ。これといって
成果はありませんでしたがね。そこで喉の渇きを潤しにコンビニに。」
嘘だね、お前ハルヒを着けてたんだろう。このストーカーが、休みの
日にまでごくろうさまだぜ。
265 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/09(日) 00:37:47.16 ID:8WVHEwf90
「古泉君、わかってるじゃない。流石副団長ね。」
「恐れ入ります」
いっそ全て暴露してやろうかとも思ったがこればっかりは
持ちつ持たれつなので辞めた。
こいつはきっとすべて知ってるんだろうと敢えてなにも言わなかったら
ハルヒが店内を徘徊してるときに案の定l、
「あれ、彼女は?」
なんて聞いてきやがった。
休憩室を指差してやると
「ハハハ随分と大きな爆弾を抱えてらっしゃる。」
266 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/09(日) 00:41:47.85 ID:8WVHEwf90
とまあまるで他人事。
「ちょっとそんな顔で睨まないでください。これは機関にとっても
非常に大きな危機です。協力しますよ。」
じゃあそれらしい表情でいってくれ。ニコニコ顔で言われたって
ちっとも伝わってこん。
269 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/09(日) 00:55:41.12 ID:8WVHEwf90
とうとう4人での店番が始まった。
実働は一人だが・・。
もともと一人でやる予定だったのだから不満はないが、
ニコニコ突っ立ってる古泉はいいとしておいハルヒ、
座ってジャンプを読むのはいい、
「なにこれ、つまんない。」
売り物を投げ出すのもよしとしよう、
「やれやれ。」
片付けるのは古泉だし、
でも来る人来る人に
「ねえSOS団って知ってる?私そこの団長の涼宮ハルヒ。
なにか不思議なこと知らない?それも私が驚くようなうーんとすごいやつ。」
宣伝だか勧誘だかは辞めてくれ、どこの誰とも知らないやつにそんなこと
聞かれることがその人にとって1番不思議なことだ。余計にお客が遠のくだろ。
272 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/09(日) 01:08:00.45 ID:8WVHEwf90
なあハルヒ
「なによ。」
宣伝を止めただけでそんなに怒らないでくれ。
お前今日いつまでいるんだ?
「そんなの決まってるじゃない、キョンが帰るまでよ。」
おい11時までいるつもりか?
「ええ、そうよね古泉君、キョンなんか文句あるの?」
別にないけど。大ありだよ。
274 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/09(日) 01:17:41.06 ID:8WVHEwf90
「そうですね、涼宮さんがいるなら僕もお供しましょう。」
協力してくれるらしい古泉はこれだ。
明確な解決策もないままいたずらに時間は過ぎていく。
「ねえ暇よ、キョン。」
俺はお前を帰らす算段に余念がないんだ。放っておいてくれ。
「もう、どう思う古泉君。」
「そう思います。」
なあ古泉、お前には意思ってものがないのか?
276 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/09(日) 01:22:58.20 ID:8WVHEwf90
よほど読む物がないのだろう、ハルヒはとうとう
不動産情報紙を読み始めた。
「あなたの気持ちもわかりますが涼宮さんのことも
考えてあげて下さい。」
俺の気持ちがわかってての対応には見えなかったがな。
「涼宮さんがなぜここにいるかわかりますか?」
あいつの大好きな不思議散策らしいぞ、なんだ着けてたんじゃないのか。
279 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/09(日) 01:29:50.06 ID:8WVHEwf90
「そうです、大好きな不思議散策の間でもあなたに会いたくて
ここにいるのですよ。」
俺に会いたい?冗談はよせよ、たまたまだろ。
「おや、とっくに気づいてると思いましたが。まだ我々の町も十分でない
SOS団の不思議散策で用もなく隣町で来る理由がありません。
涼宮さんがあなたに会うことを望んだから無意識にも自分をここに
引き寄せたのでしょう。」
284 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/09(日) 01:35:51.32 ID:8WVHEwf90
・・理には適ってるがが証拠がないな。
「ええありません、証拠は彼女の頭の中にのみ存在します。
まさに神のみぞ知ると言ったところでしょうか。」
どーだか、古泉の妄想に肩を貸してる場合じゃない、
俺はハルヒを帰らせる方法を考えなきゃいつ長門が
出てくるかわからない。
291 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/09(日) 01:54:01.88 ID:8WVHEwf90
時刻は6時を回った。俺は相変わらず一人で店番をしていて、
ハルヒはハルヒしていて古泉は古泉している、つまり無難に回ってる
てことだ。
「ねえキョン、私コンビニの店員って、もっと楽しいものだと思ってたわ、
これは将来バイトすることになってもコンビニは遠慮しておくわ。」
そうしてくれ、全国のコンビニ経営者の人もお前に働いてもらえなくて
大喜びさ。でもな入り口付近に座ってスポーツ新聞を読むお前は
世間一般ではコンビニ店員とは言わないぞ、浮浪者という言葉が似つかわしいな。
「まったくです。涼宮さん。」
突っ立ってるだけもおんなじだぞ。
296 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/09(日) 01:59:50.43 ID:8WVHEwf90
「ねえキョン?」
なんだ面白い記事でもあったのか?
「手伝いは今日で終わり?」
いんや、明日までって約束だ。
「ちょっと、じゃあ学校はSOS団はどうすんのよ!!」
核心を突かれてしまった。
299 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/09(日) 02:07:09.07 ID:8WVHEwf90
ちょっと一日だけ、な。花火大会は来週だし
一日くらいどってことないだろ?これは社会奉仕活動なんだしさ。
上手く言葉にしたつもりだったがハルヒの顔には不服の思いが見て取れた。
「ダメよ、キョン明日は学校に来なさい。こなきゃ死刑よ。」
なんだってそうなるんだ。店はどうすんだよ。
「・・・・・・・・・・」
声にならない不満を浴びせられる、おーいいいのか古泉ハルヒ
ご立腹だぞ。
301 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/09(日) 02:19:29.55 ID:8WVHEwf90
革命的アイデアは微笑み王子によってもたらされた。
「明日はSOS団全員でここで一日課外活動というのは
どうでしょうか涼宮さん。これなら漏れなく全員で活動
出来ます。」
「古泉君。」
「はい、なんでしょう。」
「それしかないわ、なんでこんな簡単なことに気付かなかったのかしら。
キョン決まりよ!明日はここで課外活動よ。働くSOS団シリーズその1、コンビニ編
ってとこかしら。そうと決まればこんなことしてる場合じゃないわ。」
ハルヒは立ち上がった。
306 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/09(日) 02:27:40.55 ID:8WVHEwf90
帰るのか?願ってもない。
「そうよ、みくるちゃんや有希にこの事伝えなきゃいけないし
明日に備えて早く寝なくちゃ、それに私待つなんて性に合わないみたい。」
ああそうかい。そう言うとハルヒは売り物の新聞を足蹴に風のように去って行った。
何はともあれ面倒事が一気に片付いた。新聞一部くらい安いもんさ。
くしゃくしゃの新聞を纏めて、
「では僕もこれで。」
古泉も去って行った。またストーカーか、捕まらないようにな。
308 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/09(日) 02:38:46.73 ID:8WVHEwf90
とにかくこれで長門の嘘がばれる最悪の事態は回避した。
明日はみんなで店番なんてコンビニ規模からすると遥かに無駄な
人材配置をするようだが知ったこっちゃねーや。
大は小を兼ねるってやつさハルヒは面倒事起こす前に今度こそ
休憩室に入れておけばいいし朝比奈さんだって来る、うんうん悪くない、
古泉もなかなか粋なことしてくれるよなきっと朝比奈さんなら何のことない
この質素なコンビニのエプロンでさえ華麗に着こなしてしまうんだろうなぁ。
311 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/09(日) 02:47:21.31 ID:8WVHEwf90
なんて考えてる場合じゃない長門を回収しなければ
いくら暖房が入ってるとはいえいつまでも寝てては風邪を
ひくかも知れん。ん、対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインターフェース
は風邪をひくのか?
お客が居なくなった頃を見計らって休憩室のドアを開けた。
316 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/09(日) 03:03:09.48 ID:8WVHEwf90
部屋は真っ暗だった、当り前か日は落ち外は真っ暗だもんなあ。
電気はどこだったっけか・・パチ
「・・・・・」
そこには正座の長門がいた。なにをするでもなく暗闇の中座っていた・・のか?
ピーンポーン
わあ客だ待ってろ長門。
この客の波はまばらながら途絶えることなく続き
次に休憩室に顔を出せたのは1時間近くたち時刻は
8時を回っていた。
321 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/09(日) 03:13:57.60 ID:8WVHEwf90
長門は1時間前と寸分も違わず畳の上に正座していた。
お前まさかずっと起きてたのか?
「・・そう」
じゃあ電気くらい付けたらどうだ。
「涼宮ハルヒに休憩室への人の存在を確認される。彼女は馬鹿ではない。
それはあなたの本意ではない。」
起きてて出てこなかったのも俺に気を遣ってくれたのか?
「・・・・・」
いいよ、ありがとう。
「これは涼宮ハルヒの為、彼女は私がここにいること善としない。・・」
だからいいって、ありがとう
324 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/09(日) 03:26:39.52 ID:8WVHEwf90
「そう。」
今日は帰って寝れ、知ってるかもしれないが明日は涼宮も朝比奈さんも古泉もくるから
明日はその軍団と一緒に来い。きっと開店よりは遅いはずだから。
「・・・・・・」
また嫌なのか?ダメだぞ、SOS団で2番目に頑固なのは何を隠そう俺だ。
そうと分かったら帰った帰った。
327 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/09(日) 03:42:23.36 ID:8WVHEwf90
観念したのか長門が身支度し始めたのをみて
俺は店番に戻った。
ただ立ってるだけの業務は眠気を誘いいっそ寝てしまおうかと
考えたがそれは限りなくゼロである客足には関係ないだろうが理性が俺を止めてくれた。
長門が俺の後ろを通り過ぎ出口へと向かった。
おい長門、
瞳の大きな少女は振り向く
じゃあなまた明日。
「・・・・・・」
そして無言で去っていく。
あれで笑顔なら完璧だと常々思う。長門が水なら笑顔は油、
決して交わらないものなのだろか。
427 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/09(日) 14:40:47.14 ID:tD8u8Gk50
明日はハルヒも来る、働くSOS団シリーズコンビニ編なんて
意気込んでたがコンビニ業務なんてお前が思う様な事は
何も無いんだぞ、りゅうおうもフリーザも来ないんだ。あいつなら
本気を出せばゴーレムくらいは呼んでくるのかも知れんが。
それは俺が前もって不思議なんて何もないことを念を押してやれば済む話だ。
なんてやっぱり一人になるとハルヒの事考えてるんだよなー。居ない時ぐらい
出てくるなっての。
なんて一人考えながらの駅への道、時刻は12時も少し手前で俺の目指す電車も
終電の一本手前、残業祭の現代のサラリーマンはこんな気分なんだろう。
429 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/09(日) 14:53:16.71 ID:tD8u8Gk50
切符を買い無人の改札を抜ける。いやちゃんと切符は買ったぞ、
賭ける価値のないSOS団の名に懸けて。
時間が時間なので駅までの道も駅のホームにも誰もいない、
日曜の深夜にで歩こうなんて馬鹿は居ないのね、はたはた同意するよ。
でも駅のホームの暗闇に浮かびあがる小さな黒い影はいる筈のないあいつに見えて・・
きっとそうなんだろう。うれしいやらかなしいやらなんだかわからない気持ちを抱えて
俺は黒い影へと走った。
431 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/09(日) 15:02:24.47 ID:tD8u8Gk50
なんでまだ帰ってないんだよ。
「・・・・・・・・」
あのあとずっとここにいたのか?
「・・・・・・」
風邪ひくぞ、
「・・・・・・」
こんな寒い中なんで・・
「・・・・・・」
長門は何を言っても無言でそれは余計に俺の不安を掻き立てた。
電車がやってきた。とにかく帰ろうぜ。
長門はゆっくり立ち上がった。
433 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/09(日) 15:14:04.21 ID:tD8u8Gk50
彼女なんて大層なものはいたことはないが、
喧嘩して黙りこくった彼女と相対する気持ちはこうなのだろう。
電車の中でも長門は終始無言を貫きいつものように読書でも初めてくれれば
多少気も紛れたものの今度こそ読み終わっちゃたのかその様子もなく、
二人しかいない車両は何の音を発するでもなくガタゴトと俺たちを
目的地へと運んだ。
440 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/09(日) 15:30:27.35 ID:tD8u8Gk50
ホームに降りた俺たちは長門のマンションに向けて歩き始めた。
どれだけ気まずくとも俺の自転車は長門のマンションにあるので
一緒に帰るのを辞めることは出来ない。いや、それはきっと前置きで
俺の自転車がどこにあろうと待っててくれた女性を一人で帰す程野暮には
出来ていなかったさ。ならいっそ、
なあ長門、冬の寒さは堪えるよな、俺もそうだ。太陽はどこいっちまったんだろうな
。まあ待て、太陽はいつでもそこにあるとかそんな答えを俺は望んじゃいない。
いいか、俺たちは幸運にもお互い一人じゃない、そうだろう?なら俺にいい考えがある。
多少強引にすくい上げた長門の左手はやっぱり冷たかった。
444 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/09(日) 15:56:38.07 ID:tD8u8Gk50
勢いに任せて手を繋いだはいいものの長門はやっぱり長門で、
いや別にリアクションを望んでいた訳ではないのだが長門のまま歩き続けていた。
それと横並びの俺も一度繋いだ手を離すのもあれかななんて、長門よろしく横を追随する。
ピアニッシモで進行する無言の行進、今日の事は明日には後悔に変わるのであろうが明日の
事は明日考えればよくて75日も経てばいい思い出になるに違いない。
じゃあまた明日、握った手を離す
「・・・・」
駐輪場で一方的な別れを告げる、明日も一応マンションによって行こう。
一人になった俺は思う。
冬が寒くってホントによかった。
445 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/09(日) 16:03:10.48 ID:tD8u8Gk50
これで終わりにしてもいいんだけど
俺が1だって事はどう説明したらいいんだ。
451 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/03/09(日) 16:14:51.33 ID:tD8u8Gk50
ながるんと比べて圧倒的に言葉足らずだからどうまとめたらいいかわかんなかったんだ。すまん。
ハルヒもまだ消失までしか読んでないし。
キョンぽくない書き方はキョンもキョンらしからぬ事をしてるって意味だったんだけど・・
2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 00:15:29.22 ID:cOSDqjneO
「迷惑でなければあなたの分も作ってくるけど…」
文芸部の部室で長門は俺に向かってそう呟いた。
「え?」
聞き取れなかったわけでは断じてないが長門らしからぬ言葉に思わず発してしまった言葉、
そんなことってあるだろ?
「皆まで言わせないで…」
俺が図々しくも甚だしく勘違いしていなければこれは俺の弁当についての長門からのメッセージ、
俺はネギ入り卵焼きをつついていた。そりゃあ母と長門の弁当どちらがいいかと言われ
たら…。
3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 00:16:44.89 ID:cOSDqjneO
「じゃあ頼もうかな」
すまん、母さん。今まで弁当を作ってくれていた母との葛藤はコンマ5秒で蹴りがついた。
長机を挟んでの会話、その距離は俺が思っている以上に縮まっているのかもしれないな。しかし長門の弁当か、一度味わっているとはいえ心の高揚はぬぐえそうにない。
だからといっていいだろう、俺は部室のドアが開いていることには全く気付かなかったのだ。
4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 00:20:05.60 ID:cOSDqjneO
「キョン、いいわねえ有希にお弁当を作ってもらえるなんて」
ハルヒがいた、精一杯笑顔を作っているのだろうが眉毛が吊り上っている、状況は芳しくない。
「や、な何で?お前は食堂で飯食っていたんじゃなかったのか」
「そんな事はどうだっていいわ、説明してもらおうかしら、場合によってはただじゃおかないんだから。」
場合によってはではなく万に一つの例外もなく俺はこの後よからぬ目に遭う気がする、それも喫茶店おごりとかそんな生易しいものではなく。
5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 00:25:31.23 ID:cOSDqjneO
「キョン!大変です」
足音とともに古泉が駆け込んできた、こいつがキョンというのは初めてだな。
「し、神人が現れました、それも百万匹以上です」
なんだって?後ずさりする俺をハルヒと古泉が追いこんでくる。あの二人の形相を見れば誰だってそうするさ。
「神人が出たんですよ!それも百万匹、聞いているんですか?」
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 00:30:28.21 ID:cOSDqjneO
「ちょっとキョン説明しなさいよ!有希からお弁当ですって!!」
あっという間に一番隅に追い込まれる、ちょっと急展開すぎやしないか、それにハルヒの前で神人神人って…正気か古泉。
「やめて、彼に手を出さないで」
そう声を上げたのは長門だった。
「有希?」
「長門さん?」
長…門?
7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 00:36:16.74 ID:cOSDqjneO
はっ、眼前には自室の天井。夢だった。目覚めがいいとはあまり言えないな。
妙に現実味のあるタイムリーな夢だ、夢と現実というのは同じ脳を使用している分どこか綿密に絡み合っているのかもしれないな。
予知夢ではないことを祈ろう。
時計は5時を指していた、いつもならもうひと眠りだが今日は臨時アルバイト最終日、そうはいかない、作動前の目覚ましを止め重い頭を起こす。
いつもは母の勅命を受けた妹によって起こされるわけだがどうやら自分で起きることも可能らしい。
自分もまんざら捨てたものでもないな。
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 00:41:43.09 ID:cOSDqjneO
なんてどうでもいい自己発見を携え俺は家を出た。
辺りは真っ暗、途中新聞配達のバイクとすれ違わなければ本当に朝かと疑うくらいの情景だった。
目指すは長門のマンション、あいつには今日ハルヒ達と来るようにいってある
。ハルヒもそう連絡したはずだ。
でも目指している、この気持ちはなんというのだろうな。
俺の拙い言葉では表現出来そうにない。
9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 00:47:12.87 ID:cOSDqjneO
結果として長門はそこに、つまりマンションの玄関にいた。
ハルヒ達を待っていたんじゃないよな?いくらなんでも早すぎる。
「……」
唇ではなく首が俺にそうだという事実を伝えてくれた。
俺はSOS団の中でも事長門に対する理解力では1番を自負している。
その俺がいっている、これ以上の詮索は無駄だと。
自転車をマンションに置き俺たちは駅へと歩き出した。
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 00:53:42.85 ID:cOSDqjneO
「ハルヒにはなんていったんだ?」
「…なにも」
そうかい。
向かい合うようにして座った電車内で長門はいつもの文庫本を読み俺は
『朝、偶然長門と出会った。一緒に行く。』
という内容のメールをハルヒに送っておいた、こんな早い時間にどうやって会うのだと我ながら不肖な本文であったが
他に言い回ししようがないので仕方がない。
事実を隠ぺいするのはそう簡単にはいかないのである。
なにか言ってきたら…さてどうしようかね。
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 01:00:58.83 ID:cOSDqjneO
歩きながらもハルヒへのうまい言い訳を考えながら結論は先送りという一応の結論を得、
俺たちは臨時アルバイト先のコンビニに辿り着いた、そう鈴木マートに。
「な…」
さっきの夢はまだ続いているのか?俺がそう勘ぐるのも無理はないはずだ。
それだけの光景がそこにはあったのだから。
12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 01:07:21.42 ID:cOSDqjneO
店の看板と目印になるのぼりはすべて書き直されていた。
SOSマート、と。
ハルヒか?それとも古泉の仕業か?おそらく後者だ。
大方ハルヒの気持ちを盛り上げるためなのだろう、ハルヒにしてはやることが細かすぎる、
あいつならもっとこうコンビニを一大テーマパークに仕上げたりもしないとはいえないからな。
いずれにしてもあいつら来れば分かることだが。
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 01:13:41.25 ID:cOSDqjneO
ちゃんと直してくれるんだろうな、ここは俺んちじゃねぇんだぞ、
いや俺んちならいいとかではなく。
俺が誰かの粋な計らいに一通りのリアクションをとっている間、
長門は我関せずとばかりに読書を開始していた、
まだ薄暗い朝の冷たい風がやけに心に染みた。
14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 01:21:28.85 ID:cOSDqjneO
特に何をしたというわけでもなく、またなにをしたとしても短期間に客が
大幅に増えるという事は皆無なのである、
この鈴木マートに限っては・・ああSOSマートだっけか。
だから9時を過ぎたころ、なにやら外で騒がしい声が
聞こえた時もお客とは決して思わず
ハルヒ達だな、と思った。
実際自動ドアからけたたましい笑い声と共に姿を現したのがそうだったし。
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 01:27:05.93 ID:cOSDqjneO
ハルヒは手ぶらで朝比奈さんはバスケット、
古泉はなにやら意味深なリュックを背負っている。
「ちょっとキョンあれなんなの?」
ハルヒにはあの看板、案外ツボだったらしく腹を抱えて
笑っている、こっちが聞きたいんだが。
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 01:32:52.32 ID:cOSDqjneO
「さしずめSOS団販売戦略本部といったとこでしょうか。
よろこんでいただけて光栄です」
やっぱりお前だったか、古泉は笑みを絶やさない。
「そうはいってませんが」
「じゃあ違うのか?」
「そうもいってません」
「じゃあお前じゃねぇか、いちいちややこしい言い方するな」
17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 01:37:35.45 ID:cOSDqjneO
「あれ、古泉君がやったの?流石副団長ね。」
まだ笑いの虫が収まらないらしい。
「実は知り合いに著名な建築家の人がいましてね、
その人に掛け合ってやらせていただきました。
なにごとも形から、外から囲っていった方がうまくいくものです。」
荒川さんらが昨日苦労して取り付けたに違いない、
どうも機関とやらは金の使い道を間違っている気がしてならない。
少々おこぼれに与りたいものである。
18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 01:45:20.06 ID:cOSDqjneO
「あのー…」
これはこれは、大事な方を見逃しておった。
現代に蘇ったモナリザ、麗しきファーストレディ朝比奈さんである。
想像しうる最高の服、パンツ、靴をお召しになっている。
果たして服装が最高なのか朝比奈さんが最高なのか・・・
答えは後者だっ!!
「今日は1日よろしくお願いします。
いろいろ迷惑かけるかもしれないけど・・その・・
みんなのお弁当作ってきたから良かったら食べて、
キョン君のお口にあえばいいんだけど」
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 01:50:24.79 ID:cOSDqjneO
いやはやもったいないお言葉、朝比奈さんがお作りになったものなら
ミミズだってオケラだってアメンボだってみんなみんなご馳走ですよ、
お昼が楽しみでしょうがないです、はい。
とまあいつもならこう手放しで喜ぶところであるが
今日はそうもいかない気がする、だって…
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 01:56:57.32 ID:cOSDqjneO
「ちょっとみんな注目!開店からちょっと経っちゃったけど、
まあそんなの取るに足らない事ね。ここに働くSOS団シリーズの
開催を宣言するわ」
お前の言う取るに足らないことは商店を経営する上でとても重要なことだ、
覚えておいて損はないんじゃないのか。
「うるさいわね、そんなの知ってるわよ。
いちいち小さい男ね、これだからキョンに彼女が(以下同文」
日を跨いで3回も言われるとは…
とにかく今は開店中だ、生憎客はいないがな。
22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 02:02:28.72 ID:cOSDqjneO
「分かってるわよ」
じゃあとっとと降りてくれ、そこはレジの上だ。
ハルヒをレジ台から降ろしたはいいものの平日の朝方、
駅前なんていう程良い場所に建っていないSOSマートに
わざわざ足を運ぶほど近隣の人は暇ではないらしい。
おいハルヒそんな目で見るな、客が来ようが来まいが
レジに立つのを容認する程鈴木家の皆さんを背信しているつもりはないからな。
23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 02:09:19.56 ID:cOSDqjneO
本日のハルヒの腕章には[店長]とそう書いてあった、
しかしまあ長と名のつく権力を持つ者は皆そうなのか
ハルヒは全業務を俺と長門に任せ自分は古泉とあーでもないこーでもないと
店内を時計回りにありとあらゆる品に文句をつけていた。
「これも普通よ、あーこれも。どうなってんのよ古泉くん
これじゃあSOS団販売戦略本部なんていえないわ。SOS団の名折れよ。」
24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 02:15:34.45 ID:cOSDqjneO
「おっしゃるとおりですが、何分一日しか時間がなかったもので。
先ほども申し上げましたがまずは外堀からと
看板の付け替えからさせて頂いたのです。
品ぞろえにつきましては店長様とご相談させて頂いた上での
変更を予定しております」
どこの営業マンだ、しかし朝のごたごたでハルヒに長門の事を
突っ込まれてないことは評価してやる。
27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 02:21:20.63 ID:cOSDqjneO
「それも…そうね」
本人もすっかり乗り気だし。
ああ朝比奈さん?彼女ならハルヒに、
「みくるちゃんには今日は撮影係なってもらうことにしたから、
こんな小さな店に5人も店員は必要ないわ」
とまあ腹正しくももっともな事を言われSOS団臨時カメラマンとして
腕を振るっている、よくも看板以外なんら変哲のない店で
そこまで撮れるものだとトイレから保温機からなにから
片っぱしから撮影している。
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 02:27:10.57 ID:cOSDqjneO
これ何に使うんだハルヒ。
さっきはハルヒと古泉が品揃えにケチつけているとこを撮っていたが
静止画のハルヒは一段と美人に写るんだろうなあ、
隣はハンサム超能力者古泉だし。
喋らなければハルヒは朝比奈さんとタメ張るくらいかわいいんだがなあ、
まさか写真が喋りだすことはあるまい。
30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 02:34:14.22 ID:cOSDqjneO
のわぁ
突如丸い物体が俺の目の前に飛び込み俺は思わず仰け反った、
レンズ越しに俺を覗き込む
朝比奈さんだった。
「キョンくんも撮ってあげます」
「いや、俺カメラとかは…その」
「手をどけないと撮れませんよー。それ」
31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 02:40:32.21 ID:cOSDqjneO
「わああ、いいですってホントに。近いですって、俺じゃなくて長門…」
「キョン、みくるちゃん、なにやってんの」
朝比奈さんの後ろでハルヒが仁王立ちしていた。
あまりいい印象はもってないよなあ、多分。
「ひゃぁぁーこ、これは違うんです…その…キョンくんが写真を…」
朝比奈さん、俺を人柱にするおつもりですか
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 02:47:15.25 ID:cOSDqjneO
「ばっかじゃない、何写真ごと気に恥ずかしがってんのよ。
いいわ私も一緒に写ってあげる」
「いいって、ホントに」
俺の言葉とは裏腹にハルヒの笑顔はどんどんこっちに近づいてくる。
頬と頬が当たるくらいに…
いや、当たってる。…パシャ
33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 02:58:30.60 ID:cOSDqjneO
撮られてしまった、写真は苦手なんだがな。
「なにその顔、せっかく撮ったんだからちょっとは嬉しそうな顔しなさいよ」
なんで無理やり撮られて怒られにゃあならんのだ。
「なによ、じゃあ有希だったらいいっていうの?
ちょっと来なさい、みくるちゃんカメラ貸して!」
相手の問題じゃあないんだが、
俺は隣のレジの長門の所まで引きずられながら思った。
「有希、キョンと写真撮ってあげるわ。ちょっと来なさい」
34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 03:05:43.11 ID:cOSDqjneO
こんなときまで言うこときかなくてもいいと思うんだがなあ、
長門はハルヒの言うとおり俺と横並びになり、
「ちょっと二人とももっとよりなさいよ、
全然入らないじゃない。もっと近付けてよ」
一時期の中河なら泣いて羨ましがるような距離で写真を撮った。
35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 03:12:42.76 ID:cOSDqjneO
「これで満足?」
ハルヒは憮然とした態度でカメラを投げるように俺に押し付けてきた。
なんでこんなにすねてるのか定かではないが
これ以上首を突っ込んでもろくな事は無いので黙ってカメラを受け取った、
俺もこの半年で成長してるな。
36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 03:18:28.75 ID:cOSDqjneO
「しかし暇よキョン、何とかならないの、
働いてる気が全然しないの。これは社会勉強なのよ、
暇な事は必ずしも良いとは言えないわ」
「そんな暇なら休憩室で雑誌でも読んでろよ」
いてもいなくても変わんないしな。
ハルヒはしばらくウンウン唸って、なにを考える必要があるんだ?
なにもしないんなら素直に休憩してろよ。
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 03:24:29.54 ID:cOSDqjneO
「じゃあそうしようかしら、よく考えたら店長は現場より
指示するのが仕事よね、この場合はキョンに」
指示を出すばかりで現場に出ない上司が慕われるなんて話は
聞いたことないが概ね同意だ。
「分かってるわよ、その現場でやることがないんじゃない」
いちいち突っかからなくていいから早く休憩してくれ。
38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 03:31:33.49 ID:cOSDqjneO
「古泉君も連れて行っていいかしら」
好きにしろよ。
「ねぇ古泉君、キョンが暇だから休憩していいって」
お菓子コーナーでうろちょろしていた古泉はいくつかのお菓子を持ってやってきた。
「ホントによろしいのですか?」
よろしいもなにもそのお菓子はなんだ。
「これは新製品ですよ、新しいものには目がなくて。
これ売っていただいても?」
39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 03:38:05.56 ID:cOSDqjneO
やはり微笑み王子は頭数には入らんらしい。あのバイトはお前にぴったりだよ、
普通のバイトはむかんだろう、すっかりピクニック気分じゃねぇか。
「新しいといえばこの間今ヨーロッパで大人気の
ボードゲーム取り寄せたんですけど。
涼宮さん、雑誌は止めてこれやりませんか」
あの大層なリュックの中身はそれか。
40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 03:46:23.09 ID:cOSDqjneO
「いいわね、楽しそうじゃない。キョンもやるでしょ?」
俺がやったら誰が店番すんだ?明日の放課後までお楽しみはとっておくよ。
「それもそうね。みくるちゃんゲームするわよ、ゲーム」
「あ、はい」
こうして今も酒類コーナーにカメラを向けていた朝比奈さんは
いったい何本のフィルムを使ったのだろうか。
41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 03:56:05.07 ID:cOSDqjneO
「有希はどうする?」
弁当を陳列する長門は首を横に振った。
「そう…じゃあキョンいってくるわ。いい?
なにか問題があったらすぐ上司に報告だからね」
そういうとハルヒは古泉と朝比奈さんを連れて休憩室へと消えていった。
最初から二人みたいなもんだがこれで完全に二人きりになった。
42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 04:06:10.13 ID:cOSDqjneO
……
……
……
二人いるが沈黙の二文字が場を支配する。
長門も別に行ってもよかったんだがなあ。
思いそのままに長門に伝えると、
「…」
時計を指差した。なるほど十一時、
このまま古泉のいうボードゲームをやったら昼を跨いでしまう。
お昼の混雑一人でしのぐのは…無理だ。
二人きりの間にもうひとつ確認しなきゃいけないことがある。
しかし何と切り出そう、なんか勘違いみたいだし…
46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 04:29:30.67 ID:cOSDqjneO
「なあ長門、今日はその…つまり…だから」
「今日も作った。しかし今日は朝比奈みくるも作ってきている、
そっちを食べるといい。そちらの方が…あなたの口に合うだろう」
長門は商品陳列を辞め、こちらに向き直り
大きな黒い瞳をこちらに向け言った。
「いや、違うんだ。作ってるんなら長門のを食べたい、
食わしてくれ。作ってなかったら勘違いだなって心配で…その」
「そう」
そういうと長門は視線を反らし作業に戻った。
そんな長門を俺は素直にかわいらしいと思った。
より人間らしくなってるってことだって思う。
47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 04:34:59.98 ID:cOSDqjneO
会話がない、その一点を除けば俺たちの店番は順調そのもので
相変わらずのお昼のラッシュアワーも長門の人間技とは思えない
スタンドプレーのおかげで万事順調に進んだ。
俺もだてに三日も同じこと繰り返してるわけではなく、
初日と比べてかなり客の処理能力は上がったと自負している。
48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 04:43:53.52 ID:cOSDqjneO
がそれは長門にもいえることで長門は客の入店と同時に
レジからその客に渡すとおもしき釣りを出し机の隅から並べて行っている、
無論同時にレジ打ちを行いながら。
俺のレジに並んだり釣りがいらない客については何も行ってない。
どうやって入店時に区別してるのだろうか…。
確認したわけではなく俺の主観だが長門はそういうふうにしている。
49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 04:50:30.61 ID:cOSDqjneO
また宇宙的な何かなんだろう、今日も不自然なまでに二つのレジの行列に
差ができているのは宇宙的でも何でもなくいわゆる一つのルックスってやつだ。
とにかく長門は俺のシャア倍くらいの客処理能力を備えていたにもかかわらず
行列は常に長門側にあったんだ。
世の中の不条理をよく表している情景だと思うね。
51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 04:59:25.43 ID:cOSDqjneO
「キョン、有希、お昼どうするの?」
休憩室のドアからハルヒがひょっこり顔をだした。
今それどころじゃないことくらい分りそうなもんだが、
「先に食ってていいぞ、俺も長門も今手が離せない」
「……」
「そう、じゃあお言葉に甘えて。がんばってね」
「ああ」
言われなくてもそうするが大店長様のお望みとあらば。
52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 05:09:09.28 ID:cOSDqjneO
際限なく続いていた人の群れもやはり1時を境にまばらになった。
ほんと昼どきだけでもってるんだと思う。
食事を終えたハルヒ達が店内に戻ってきた。
「はー、みくるちゃんのお弁当はやっぱりサイコーね」
「いや、まったくです、いったいどこで勉強されたのでしょう。
今度ご教授願いたいものです」
おい古泉ご教授ってなんだ、まさか朝比奈さん宅に押し掛ける気か。
断じて許さんぞ、せめて俺も連れてってくれ。
53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 05:16:22.82 ID:cOSDqjneO
「教えるなんてそんな。これは未…とにかく喜んで貰えて嬉しいです」
朝比奈さん、その笑顔の為ならば俺は死ねます。
「なにニヤニヤしてんのよ、気持ち悪い。
そのお弁当なら私たち全部食べちゃったから
キョンの分はないからね。」
54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 05:25:57.23 ID:cOSDqjneO
ハルヒ…ファインプレーだ。ハルヒの食欲もたまには役に立つらしい。
今日俺は朝比奈さんの弁当を食べることは出来なかったからな、
どう断ろうかと思案したがどうやら杞憂に終わったみたいだ。
しかし随分と虫の居所が悪いみたいだがなんでだ?
「なんでもなにもないわよ、あのボードゲームよ」
ヨーロッパで大人気とかいってたあれか。
55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 05:34:03.11 ID:cOSDqjneO
「そうそれ、ところどころねルールに不可解な点があったのよ。
でも続けたわ、やっていくうちに理解できると思ったから。
そしたらどう、古泉君たら大事な一文を読み飛ばしてたのよ
『このゲームは四人以上で行って下さい』ってのを」
「すみません、説明書がフランス語で書いてあって翻訳に手間取りまして…」
古泉の微笑みはいつもよりぎこちない。
「やめて、古泉君は悪くないわ。私はルールを知らなかった私自身に怒ってるのよ。
だからお弁当全部食べちゃったの、ごめんねキョン、有希」
58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 05:43:07.64 ID:cOSDqjneO
文脈は全く繋がってない気がするがそんな事で謝らないでくれ、
俺も長門も気にしちゃいないから。そうだろ長門
「…いい」
だそうだ。
「そうだ、有希もお昼食べておいでよ。今日は店長のおごりよ、
何がいい?スーパー幕の内?それともDX…」
60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 05:51:35.10 ID:cOSDqjneO
「いい、自分で作ってきたから。気持ちだけ」
「そう、珍しいのね。有希が自分で作るなんて。まあとにかくいったいった」
ハルヒは長門を半ば強引に休憩室に入れた、いつかの俺みたいだな。
「あなたも行かれてはいかがですか」
「そうはいかんだろう」
いくら人が来ないからとはいえハルヒ一人に任せるのは心配だからな。
61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 06:00:13.94 ID:cOSDqjneO
「大丈夫です、機関である程度の訓練は受けています。
あなたや長門さんまでとはいきませんが最低限の仕事は出来ます。
今なら間に合うと思いますし」
余程自信があるのだろう、古泉は笑みを浮かべていた。ああいつものことか。
「そうね、ここは私と古泉くんに任せて行ってきなさい、
あんたのお弁当は私が選んであげるわ。そうね…」
62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 06:11:45.83 ID:cOSDqjneO
「や、俺も…」
言い終わらないうちにハルヒは弁当を片手に戻ってきた。
「はい、これ。あんた馬鹿なんだからこれで少しは賢くなりなさい」
「……… 」
ハルヒに背中を押され休憩室へと進む俺の右手に持たされた弁当は
鯖の塩焼き弁当というらしい。
これなんてデジャブ?
64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 06:21:22.16 ID:cOSDqjneO
おおよそ4畳ほどのその部屋で長門はいつかのように正座で待っていた。
なんだ待っててくれたのか、
先食っててよかったのに俺が来る保証も無かったと思うし
「………」
その視線は俺の右手に向けられていた。
いや、これはハルヒに無理やり持たされて…。
俺は出来れば長門の作った方が食べたいと思ってる。
65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 06:28:31.72 ID:cOSDqjneO
「そう」
そういうと長門は食事の準備を始めた、
意図したことは伝わったと考えていいのだろう。
俺は頭が良くなる弁当を鞄にしまった。
今度の弁当はちゃんと二人分あった。
約束した二人での昼食は文芸部室ではなくコンビニの休憩室となった。
67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 06:39:58.16 ID:cOSDqjneO
見た限り昨日と全く同じメニューでそれに俺は長門らしさを感じた。
……………
食事は無音で進んだ。食事中にうるさいのもどうかと
思うがかといってこれはあまりにも……
ハルヒが恋しくなるぜちくしょう。
…………
この状況を打破できるのはオレしかいない。
68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 06:50:09.65 ID:cOSDqjneO
「この卵焼きうまいな」
長門は箸を止め面をこちらに向けた。
「そう」
「焼き方とかもうまいと思うぜ。」
「火」
「こういうのって練習とかするの?」
「多少」
……そうか
そういうと長門は食事を再開した。古泉ならこういう時おべんちゃらな言葉を並べ上げ会話を
続けるのだろうが残念ながら俺にその嗜好はない。営業は向いてないかもしらん。
70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 08:29:25.30 ID:cOSDqjneO
…………
しかしこれでは二人で取る意味があまり、いや全くない。
「なあ、長門」
「……」
「お前はあまり機会がなかったからわからないのかもしれないが二人の食事ってのは
もっと会話に溢れた楽しいものなんだぞ。
いや今が楽しくないとかじゃないんだ、決して。
だがもっと会話に重きをおいてもいいかなぁなんて」
「…」
「俺は涼宮たちと違ってごく一般的な生活を送ってきたが
普通なりにそれはそれで楽しいこともしてきた。だからその話をしたりだな、
あとは好きな教科は?食べ物は?趣味は?
なんてお互い聞いたり答えたりするんだ。どうだ?少しは楽しそうじゃないか?」
「………」
72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 08:36:53.08 ID:cOSDqjneO
俺なりに一生懸命伝えたつもりだが。
〈………〉は返事としてはそれなりにも機能しないことを教えてやるべきか。
「…う」
え?
「それは理想。」
74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 08:46:44.93 ID:cOSDqjneO
長門は立ち上がり支度を始めた、どうやら食事終了らしい。
だったら…
「私にはその権利がないから」
長門のすきとおった声が室内にこだまする。
え、それどうゆう…ガチャ
聞き返す前に店内へと去っていった。
79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 08:54:45.60 ID:cOSDqjneO
残りの弁当はまだ半分以上もあった。急いでそれをかっくらう俺。
見かけによらない大食漢の長門が残していった弁当、それにあの言葉。
確信とは程遠いもろくも儚いものだが俺に一つの疑問が生まれた。
それは店内に戻って本人に確認するものでも誰かに話したりするものでもない。
82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 09:05:04.91 ID:cOSDqjneO
杞憂だって可能性の方が高いさ、だってそれは人間らしさの最終段階だぜ。
望んだのは確かだがそう簡単に実現するものでもないことはよく分かってる。
気長に待つとするさ。
さて、戻るか。いつまでも古泉には任せられん。
84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 09:11:19.48 ID:cOSDqjneO
ガチャ。
「うわぁ」
二人は同時に声を上げた。眼前にはハルヒの顔、
もう少しであの時の二の舞になるところだった。
辞めてくれ、それはもう俺の記憶から完全に抹消する予定なんだ。
85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 09:17:45.98 ID:cOSDqjneO
「どうしたんだ?」
「どうしたもこうしたもないわよ、有希が戻ってきたのにあんたが全然戻ってこないから
迎えに来たんじゃない」
まさか真実を伝えるわけにはいかんからな、
咀嚼がどうとかテキトーに逃げておいた。
89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 09:27:17.73 ID:cOSDqjneO
レジには古泉と長門が立っていた。
朝比奈さんはというとまだカメラを握っていた。
あんなに写真撮らせてどうする気だ?
「決まってるじゃない、SOS団のサイトに載せるのよ。
あ、載せるのはあんたの仕事よ」
どこから沸いてきやがったか自信というやつは今もハルヒの体を支配している。
91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 09:36:59.90 ID:cOSDqjneO
「あれ全部載せるのか?気乗りはしないんだが」
閲覧者もいないのにあれだけの枚数をアップするのは気が引けるぞ。
「全部じゃないわよ、ちゃんと吟味するわ。今はとにかく数を撮らなくちゃ、
あの画が欲しいなんて後で部室でいってもどうにもなんないんだから。」
「じゃあもういいんじゃないのか。」
朝比奈さんはついに天井にカメラを向けていた、蛍光灯でも撮る気だろうか。
93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 09:45:36.22 ID:cOSDqjneO
ここはそんな行動でもちゃんと画になっている朝比奈さんを褒めるべきか。
珍しく俺の主張を聞き入れたのか
「それもそうね。ねーえみくるちゃん、戻ってきて。写真はもういいわ。」
「はぁい」
きっと数えきれないほどの静止画が入ったカメラを持って
朝比奈さんはこちらにやってきた。
95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 09:53:51.08 ID:cOSDqjneO
ささハルヒにこき使われて大変でしょう、お茶でも飲んでゆっくり休んでください。
「でも…」
「キョン、何寝ぼけたこと言ってんの、みくるちゃんにはまだ仕事があるんだから。」
「ひょえ?」
まさか…
97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 10:03:13.84 ID:cOSDqjneO
結論から言おう、そのまさかだった。
「さ、これに着替えて。」
朝比奈さんに手渡されたそれはまごうことなく未来から
来た戦うウェイトレス朝比奈ミクルのそれだった。
「こ、これに着替えるんですか?」
「そうよ、さあ早く早く」
100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 10:12:56.77 ID:cOSDqjneO
俺はハルヒによって朝比奈さんが更衣室もとい休憩室に押し込まれるのをだまーって見ていた。止めないのかって?止めないさ健全な男子高校生はね。
でも俺のポジション上一応聞かなきゃならん、古泉には毛ほども期待できんからな。
「お前朝比奈さんに着替えさせて何するつもりだ?」
「なにするって分らないの!ほんとアンタは馬鹿ね。SOS団で何を学んできたの?
今度そんなくだらない質問してみなさい、死刑だから!」
103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 10:21:03.83 ID:cOSDqjneO
両手を上げ降参のポーズをした。死刑は、困る。
「古泉君、このばかキョンに説明してあげなさい」
スマイル王子は微笑みを辞め眉間に皺を寄せ一応それっぽい顔をした。。
「おそらく、SOS団オフィシャルショップであるこの店の客の入り用にいささかの
不満を感じだ涼宮さんは状況を打開するために朝比奈さんを
SOSマート公式マスコットとして採用、店外にて客寄せ。といったとこでしょうか」
108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 10:31:07.66 ID:cOSDqjneO
どこの名探偵だかしらないがハルヒの満足げな顔でウンウン
頷く顔を見るとどうやら正解らしいことは容易に想像できた。
しかしなんだってウェイトレスの衣装なんだ?日が照ってるとはいえ12月だぞ、あんな
風通しのいい服は・・俺は大歓迎だが朝比奈さんが。
110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 10:39:26.34 ID:cOSDqjneO
「決まってるじゃない、来年の映画の宣伝よ。それにね今年の映画DVDにしてここで発売するのよ。」
また変なこと言いだした。
「みくるちゃんの衣装に釣られてきた馬鹿に売りつけるってわけ。どう古泉君」
「まず視覚的宣伝で客の興味をそそり商品の購入を促す・・涼宮さん、完璧です」
112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 10:48:49.58 ID:cOSDqjneO
じゃあその馬鹿第一号は俺になりそうだな、二号は谷口か。
なんにせよそういう話は古泉じゃなく、鈴木さんにするべきだと思うが…。
ガチャ。
「あのー着替え終わったんですけど…私どうしたらいいんでしょう」
「いいわみくる、いやミクルちゃん。抱きしめたいくらいにかわいいじゃない。
115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 10:57:32.45 ID:cOSDqjneO
どうキョン?」
どうって、抱きしめたいくらいに…かわいいですはい。
「じゃあ行くわよ、ついてきなさい」
「ひょぇ、ど、どこにですか?」
「外よ、外、いいから早く」
「ぃいやですー外は寒いですー」
117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 11:06:36.56 ID:cOSDqjneO
「うるさい!」
「ひぃやーキョンくん…」
ハルヒに店外に引きずられながら捨て猫のような目で見る朝比奈さんを俺はどうしてやることもできなかった。
着替えるのを見過ごした俺にどうして止める権利があろう、すみません朝比奈さん。
118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 11:14:22.40 ID:cOSDqjneO
「さて、手のあいた僕はどうしましょうか」
さあな、もともとお前らに仕事ふるつもりはなかったから好きにしろよ。
例のゲームの説明書の翻訳でもしたらどうだ、
ハルヒの機嫌損ねたくないんだろう?
「それもそうですね、ではお言葉に甘えて僕は失礼するとします。」
古泉は休憩室へと姿を消した。
119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 11:23:13.00 ID:cOSDqjneO
自動ドアの向こうではハルヒが身振り手振りで朝比奈さんに説明していた。
ドアが閉まっていたためハルヒの大声くらいしか聞き取れなかったが
「いい!ここで待ってて客が来たら連れてくるのよ!簡単でしょ」「寒い?冬はみんな寒い
に決まってるじゃない」「もう!なんでもいいからやるの!!
SOS団員に甘えは許されないわ」
脅迫じみた事をいっていたのは確かだ。
124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 11:28:21.49 ID:cOSDqjneO
一人店内に戻ってきたハルヒは非常に満足そうな表情をしていた。
「ばっちり」
なにがだ。
127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 11:40:44.88 ID:cOSDqjneO
「ほらキョン私の言った通りじゃない、人人人。みくるちゃん万々歳ね」
いいから話しかけないでくれ、そんな余裕無いから。
決して読み飛ばしたとこがあるわけじゃない。あまりの急展開に
ついていけないのは俺も同じだ。
今コンビニのなかはハルヒの言うとおり人人人で埋め尽くされている。
朝比奈さん効果とかそういうちゃちなもんじゃない、
店内はライブハウスのそれだ。
170 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 16:48:48.59 ID:cOSDqjneO
「二百円のお釣りになりまーす。ありがとうございましたー」
「お釣り、三百円。そう」
二人でいくら客を捌いてもひっきりなしに表れ列が途絶えることはない。
一体どうなっているのか?それはこっちが聞きたいね。
ハルヒはミクルちゃん効果で疑いもしないみたいだし。
171 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 17:01:24.82 ID:cOSDqjneO
「キョン、疲れたでしょ交替してあげるわ」
いや、いい。お前じゃ無理だから大人しくしとけ。
「なんで有希はよくてあたしは駄目なのよ。不公平」
駄目なものは駄目だ、店長様は現場に出ないんだろ。
176 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 17:12:41.35 ID:cOSDqjneO
「もう!知らない。せっかく手伝ってあげようと思ったのになんでよ」
バタン!壊れるかと思うほどでかい音を出して古泉のいる休憩室に入っていった。
隣でなにもしないのにひっきりなしに話しかけてくるやつが居なくなったから少しは
早くなったかと思うが並ぶ列は衰えを知らなかった。
179 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 17:27:17.31 ID:cOSDqjneO
果てしなく続くかと思われた行列は四時前にはすっかり引けていた。
すべての商品とともに。
そう、売る物がなくなったから。
普段なら全く売れない線香や蝋燭までなにもかも売れたんだからどうかしてる。
店内は台風が去ったあとみたいになっていた。
181 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 17:34:59.88 ID:cOSDqjneO
チロリーン
客か?もう売るものはないぞ。
しかしそれは客ではなく朝比奈ミクルであった。
「キョンくん…あたし……」
その眼に貯めてらっしゃるのは女性の最大の武器はなんとやらとかいうあれですか。
いや、朝比奈さんは関係ないです。きっと、きっとなんか起こったんだと思います。
またハルヒのあれですかね、ハハ。
もう笑うしかない。
182 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 17:47:17.54 ID:cOSDqjneO
古泉が部屋から出てきた。
いつもの表情は消えていた。リュックを背負ってるが帰るつもりなのか?
「残念ながらそうせざるを得ません、急用が入りまして、アルバイトの。
あなた涼宮さんになにかしました?」
「いいや、心当たりはないが…」
手をあげておどけてみせた。
183 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 17:54:33.71 ID:cOSDqjneO
「…んかん」
長門、なにか言ったか?
「なにも」
「とにかく僕はこれで失礼します」
あの時と同じタクシーがすぐに店の前に到着し古泉を乗せて出発していった。
さてと、売る物がないんなら仕方がない、店を閉めるか。
184 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 18:03:55.20 ID:cOSDqjneO
そのためにはまず、おそらく機嫌があまり宜しくない
であろううちの女王様に伺いを立てないとな。
キィー、ゆるりドアを開けた、ハルヒは俺に背中を向け体操座りしていた、
すねてるのは、まあ間違いないな。
「なあハルヒ、あれから商品全部売れちゃってさ、店閉めようかと思うんだけど」
187 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 18:13:17.91 ID:cOSDqjneO
「…そう」
「俺はこれから30分くらいばたばたするから別に帰っても構わないんだけど、
あれだったら一緒に帰らないか?みんなで。」
「……つ」
「なに?」
「待つって言ってんだからいいから早くしてよ」
手をつけられない、っていうのはこのようなことを指すのだろうか。
もやもやした気分で閉店業務を行ない5時には店を閉めた、
まさかこんな最終日になろうとは。
188 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 18:24:14.36 ID:cOSDqjneO
じゃあ帰るか。
空はきれいなオレンジ色に染まり、
日も落ちこれからどんどん気温も下がっていくのだろう。
三VS一という誠に誰もが羨むべきシチュエーションで俺たちは駅へと歩き出した。
189 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 18:33:07.59 ID:cOSDqjneO
先頭にハルヒと朝比奈さん、機械のようにそれに追随する長門、
その背中をみつめる俺、縦になっちゃってるもんだから実感は乏しいがな。
こう後ろから覗き込む限りではハルヒの機嫌はそこそこに見えるのだが
わけもわからずいきなり鉄拳が飛んでくるのもないとは言えないから
覚悟はしておかんと。
190 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 18:41:21.70 ID:cOSDqjneO
その理不尽さに形だけでも抗議をする覚悟をな。
電車を待つホームでこの後どうするべきか考えていた。
いつもならハルヒがせっかく早く終わったんだし
みんなでなにか食べて帰りましょう、
なにがいいかしら私はハンバーグね、うんじゃあハンバーグに決定。
なんて言い出すのをただ待っていればよかったが
今日のハルヒにそのきらいはない。
191 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 18:48:28.46 ID:cOSDqjneO
本来ならこういうことを言い出すのは男性であるべきはずだから
アクションを起こさなきゃいけないのは俺?これって偏見?
別に解散なら解散で構わないんだが一応ハルヒ達には結果的に
ただ働きしてもらうことになったし、(働いてはないけど。
192 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 18:57:56.93 ID:cOSDqjneO
ハルヒの機嫌が悪かろう事もこのまま放っておいては
よからぬことが起こる気もしないでもないから、
いつからこんな責任感の強いやつになったんだろう。
「なあ、このあとなにか食べて帰るか?」
なんてらしからぬ言葉を発していた。
「…」
「…」
「…」
193 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 19:08:18.99 ID:cOSDqjneO
いや、あの少しの沈黙もこちらとしては不安を煽る大きな要因となるんだが・・
「別にいいけど、あんたの奢り?」
それでも構わないさ、団長様が機嫌を直してくれるんならな。
「私はこの後用事があるから」
長門に用があるとは珍しいな。長門はその無機質な視線を
俺から朝比奈さんに移し替えた。
194 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 19:14:07.89 ID:cOSDqjneO
「あ、あたしも用事があります。すみませんお二人でどうぞ」
朝比奈さんまで?つまりハルヒと二人か…
依然として状況は芳しくないな。
電車に揺られる間、俺は少し後悔していたことをここに綴っておく。
195 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 19:23:55.00 ID:cOSDqjneO
「じゃあ」
「ご、ごゆっくりー」
二人はホームに着くと我先にと去っていった。
あっという間に気まずい空間の出来上がりさ。
「別に二人が嫌なら帰ってもいいわよ」
「い、嫌とかじゃないさ」たぶん…
196 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 19:33:49.66 ID:cOSDqjneO
「そう、車内でのあんたはそうは見えなかったけどね」
「誤解さ、目に見えるものがすべてとは限らないだろう」
いやに鋭いな、こいつは。
「じゃあどこでもいいからとっとと行きましょう」
「近くのファミレスでいいよな」
「テキトーね」
随分不満そうだな。どこでもいいっていったじゃねぇか。
199 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 19:44:11.14 ID:cOSDqjneO
ファミレスまでの道中は悲惨だった、
二人なんだから一緒に歩いてもいいと思うのだが
ハルヒは頑なに俺の2,3歩前を歩いた。
へんてこな状況は店内でも続いた、
俺がテーブル奥に座るとハルヒは向かいの手前に腰かけた。
つまり斜め通しでお互いの向かいには誰もいない。
207 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 20:49:22.12 ID:cOSDqjneO
なんちゃらバーグなんちゃらとかいういかにもな名前の
付いた料理を二人は終始無言で食べ続けた。
このままずっと無言ってのもあれだが下手につついて
爆発させるのもまたあれだしな。
こういうの四面楚歌っていうのか、それとも前門の虎後門の狼?
国語は苦手だからな。
210 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 20:57:34.82 ID:cOSDqjneO
「あんた好きな人っているの?」
いきなり話し出したと思ったらおよそハルヒとは思えん言葉が飛んできた。
「恋は馬鹿馬鹿しい病気なんじゃなかったのか」
「そうよだからあんたがその馬鹿馬鹿しい病気にかかってんのかって聞いてんの」
「答える義務はないな。その病気とやらはやすやす知人に話すものでもないんだぜ」
211 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 21:05:40.11 ID:cOSDqjneO
「それもそうね」
首根っこ捕まえてでも強引に聞いてくるかと思ったがこれは意外だな。
「なんだハルヒ、お前恋でもしてんのか?
いいと思うぞ。それこそ健全な高校生活だ。
そいつと放課後は一緒に帰って休みの日には映画見たり遊園地にいったりするといい」
「………」
213 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 21:13:18.87 ID:cOSDqjneO
「大丈夫、お前ならちょっとその異端なとこを隠せば相手には苦労しないだろうぜ」
ハルヒは立ち上がって顔を極限まで近付けてどなり散らした。
「うるさい!だまれ!帰る」
どうやら俺は何かスイッチを押したらしい。
215 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 21:23:21.17 ID:cOSDqjneO
去っていくハルヒを追いかけなかったのは一斉にこちらに
集まっている視線にいかにもの展開をみせるのが少しこっぱずかしかったからだ。
機嫌を直すつもりが完全に逆効果だったみたいだ。
10分ほどして俺も店を出た。
216 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 21:29:30.97 ID:cOSDqjneO
明日からの学校が少し鬱だ、人生にリセットボタンがあるなら
やり直したいところだが生憎どこからやり直したら
ハルヒの機嫌が直るのかすらもわからない。
久々のちゃんとした睡眠も心地よいものとはいかなかった。
218 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 21:36:05.59 ID:cOSDqjneO
夏のうだるような灼熱地獄のなか登るよりはいくらかましだが
師走の寒空の下登る坂道も面倒なことこの上なかった。
朝練をしている気分だ、運動部に所属した覚えはないが。
前を歩く一人に足元がおぼつかないやつがいた。
半年も一緒にいりゃ分かるものだな、
ありゃ古泉だ。
220 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 21:44:09.08 ID:cOSDqjneO
意図せずも前をヨタヨタ歩く古泉と俺とのスピードに
開きがあったためすぐに追いついた。
「よう古泉、らしくないぞ。徹夜でボードゲームか?」
「おはようございます、徹夜というところまでは正解です。
理由は…あなたもあまり聞きたくはないでしょう?例のあれです」
ああ、例のアルバイトか、ご苦労様だ。地球防衛軍。
222 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 21:52:54.89 ID:cOSDqjneO
「あなた昨日涼宮さんになにかしました?。
あれだけの頻度で現れるのは初めてです。
僕にはあなたが関わってるとしか考えようがありません」
「いや、まったく知らんな」
たぶん俺です、理由は知らんが。すまん古泉。
223 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 22:02:27.02 ID:cOSDqjneO
「あなたが知らなくても原因はおそらくそこです。
あなたは涼宮さんに選ばれたのです。少しは自覚してください」
肝に銘じておくよ。
「とにかく僕の体の事を少しでも心配する気持ちがあるなら
一刻も早く彼女との関係を修復してください」
そうさせてもらうよ、俺としてもこのままじゃあ
非常にやりにくいからな。
225 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 22:08:55.00 ID:cOSDqjneO
俺が教室に入るとハルヒすでに自分の席に着いていた、
肘を枕に外を向いていたので目を合わすことはなかったが。
話しかけるタイミングを失ったのは確かだ。
謝ればいいのか?しかしなにを謝れば…ガラーッ
思案中に岡部が登場したため結局会話を交わすことなく朝は終了した。
226 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 22:14:31.35 ID:cOSDqjneO
四時間目終了の合図とともにハルヒはいつものように教室を出て行った。
俺もいつもなら谷口、国木田と机を並べるところだが今日はそうもいかない。
弁当を片手に近づく国木田に部室でやることがある、
とあながち間違いでもないテキトーなことをいって一人教室を後にした。
228 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 22:22:40.27 ID:cOSDqjneO
部室のドアを開けると長門はすでにそこで本を開いていた。
結構急いだつもりなんだがな、四時間目…出たよな…。
「………」
まあ食べようぜ、俺おなかぺこぺこだ。
昨日のことがあるから少々話しづらい、
これじゃなんの為に二人で食べてるのか分らない。各々が孤食してるだけだ。
なにかはなさなくちゃ、頭では分かっているが口は言う事を聞かない。
229 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 22:28:53.23 ID:cOSDqjneO
「どうするつもり?」
なんのことだ?心当たりは一つしかないが。
「涼宮ハルヒの事、彼女は今…変。うまく言葉では説明できない」
「どのくらいおかしいんだ」
「視覚的にそう感じられる、つまり見て取れる」
長門にしてはわかりやすい、相当ってわけか。
230 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 22:35:32.44 ID:cOSDqjneO
「今この二人での昼食もやめた方がいい、少なくとも彼女が平常に戻るまでは」
「これにあいつは関係ないだろう、ハルヒの機嫌が悪いから
長門が一人で飯食うなんて駄目だ。意味がわからん。
嫌というならまた別の話かもしれんが」
「そう」
231 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 22:44:08.37 ID:cOSDqjneO
やがて食事を終えた長門は読書にもどった。
俺はというと教室に戻るのもあれで無意味にパソコンをつついている。
ホームページに写真をアップしなきゃならんらしいが、
それはまた放課後にでもやるさ。
「なあ長門」
「…」
233 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 22:52:05.34 ID:cOSDqjneO
端麗な顔は本から俺へと向きを変えた。
「今週の土曜日暇か?付き合ってほしいんだが」
「どこ」
「駅前のデパートか、どこでもいいんだが。
バイト代が入ったらハルヒ達にもなにか買ってやろうかな、なんて。
真実は伏せるが全くただ働きってのもな、二人の方が選択の幅が広がるだろ?」
234 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 23:02:15.29 ID:cOSDqjneO
………
「いい。私もデパートに用事があったから」
「そうか、それは奇遇だな。時間が余ったら図書館でも行こう」
「そう」
その瞳はずっと俺を見つめていた。
「そうだ。話はそれだけ、続き、読んでいいぞ」
「そう」
236 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 23:10:23.89 ID:cOSDqjneO
ハルヒは今日の午後もさらにいうと今週ずーっと変な感じだった。
別に全く喋らないわけでもないし、部活にも出てたし、
日曜の花火大会の日程も決めた。
でもなにかうわの空というか心ここにあらずな様子で、原因を確かめようにも
俺が話しかけると「なに?」「用がないんなら話しかけないでよ」
237 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 23:14:47.73 ID:cOSDqjneO
なんて極端に態度を急変させる為どうする事も出来なかった。
いっそ思いすごしなんじゃないか、
なんて逃避してみたくもなるが毎朝死にそうな顔で
ふらふら坂を登る古泉を見るとそうじゃないことに相違なかった。
239 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/27(木) 23:22:07.02 ID:cOSDqjneO
帰りにSOSマートに立ち寄った、看板はすっかり鈴木マートに戻っていた。
後始末を自分でやるところはハルヒよりは上だな。
全部売れたというのは前日に電話で伝えておいたが
半信半疑だったらしく、あたりまえか、
改めてお礼を言われた。
いえいえしでかしたのはきっとアイツですからお礼はアイツに…
口が裂けても言えないから笑顔で押し通したが。今度確認しておこう。
250 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 00:26:19.83 ID:qA6xE6ObO
ちなみにバイト代は9万円だった。水曜のお昼に5万渡しといた、割り勘ってやつだ。
多少数学が苦手な傾向にありきれいに半分かは判らんが。
長門がなにに使うのかは正直気になる、
しばらくした頃に聞くのはタブーじゃないよな。
252 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 00:31:53.44 ID:qA6xE6ObO
ハルヒの気分は晴れぬまま土曜日を迎えた。
約束は十三時、十五分前には余裕をもって着いたが
やっぱりどうして長門はすでに待っていた。
習慣というのは怖いもので自然といつもの喫茶店に入っていた。
253 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 00:37:48.49 ID:qA6xE6ObO
オレンジペコを規則的なペースで飲む長門、
俺は口に付けたコーヒーのカップを置いた。
「長門が今日行きたい所ってどこなんだ?」
「どこでも」
デパートのどこでも行きたい所に行きたい?
はて凡庸な俺にはさっぱり理解できん。
258 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 00:47:49.20 ID:qA6xE6ObO
その凡庸な俺に理解できない言葉で説明されてもあれなので
「そうか」
というしかないわけである。
これまた自然に俺の払いとなった喫茶店を出て、
俺たちは駅前のデパートへと向かった。
古泉と朝比奈さんには大体なに渡すか考えていたがハルヒは見当もつかん。
262 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 00:54:48.63 ID:qA6xE6ObO
それを長門に悩んでもらおうと考えていたのだが、
物事そううまくは運ばないようで
「私行くとこがあるから」
デパートに着いた途端姿を消した。追おうにもまるで消えるように
人ごみの中にまぎれてしまったためそれも出来ない。
264 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 01:00:37.66 ID:qA6xE6ObO
悲しいかな一人デパートに取り残された俺は仕方なく
一人でプレゼントを探しに行った。
中房に毛が生えたくらいの男子高校生が一人でデパート
をうろつくのは少々目立たないか、
いや考えすぎか。
266 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 01:07:21.58 ID:qA6xE6ObO
元来、一人を苦手としてきたわけではないが平日休日テスト期間夏休み、
いつだって4人で過ごしてきた半年間は人一人の心を変化させるには
十分だったようで俺は柄にもなく
今の自分を少々さみしいと感じた。
自然と早足で歩いてプレゼントを買い集めていた。
270 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 01:17:03.71 ID:qA6xE6ObO
なんとか、ハルヒのを選ぶのに要した時間を考えればこの言葉が妥当であろう、
プレゼントを選び終え入口のエントランスに戻り長門に電話をする。
「……」
「ああ長門、すまん遅くなった。図書館無理になっちまった」
「いい、また」
273 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 01:24:06.95 ID:qA6xE6ObO
「そうだな、また行こう。今エントランスにいるけどそっち迎えに行くか?」
「いいこちらが、待ってて」
「んあ、ああ」
ツーツー
では長門を待つ間に今日俺が買った商品をご紹介しよう。
276 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 01:33:09.97 ID:qA6xE6ObO
まずは古泉、ドン!これ。プレゼントの中でも際立って大きい長方形の箱の中身は
雑貨屋で買ったなんだかよく判らないボードゲーム。
陳列棚の説明書きに『ボードゲームです』
書いていなけりゃそうかどうかも分らない位の代物。
黒字の箱になんだかよく分からない
記号が書いてあるだけ。絵は無し。
正直古泉のは何だってよかったんだ、
放課後の暇つぶしに一役かってくれることだろう。
277 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 01:41:18.57 ID:qA6xE6ObO
次に朝比奈さん、はいこれ。ちいさい袋に入ってるのは茶葉。
いずれ俺たちが飲む物をプレゼントとするのは言いえて妙な話だが
未来から来た朝比奈さんに彼氏でも何でもない俺が渡すべきものが
何か分からなかったんだ。彼女なら喜んで受けとってくれるさ。
しかし茶葉って結構高いのね。
279 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 01:50:00.08 ID:qA6xE6ObO
最後にハルヒ…これh……すまん長門が来た。
長門は両手に荷物を持ってやってきた。
左の方は明らかに重そうだが何を買ったんだ?
「本」
冷静に考えれば服では無かろう事はよく分っていた。
280 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 01:58:29.82 ID:qA6xE6ObO
「重くないか?持つぞ?」
長門は首を横に振った。
「あなたの方が大荷物」
言われてみれば、確かにそうである。なんでこんなの買ったんだ俺。
「そうだな、図書館ほんと済まなかったな、いけなくなって」
「いい、一人でも行けるから」
そうだな。
少し長門の保護者気分でいたことが恥ずかしかった。
281 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 02:08:14.39 ID:qA6xE6ObO
もう遅いし飯食って帰るか、どこで食いたい?
時刻は6時を回っていて空は闇へと姿を遂げる最中だった。
長門の口にしたその場所はバイト初日に長門といったあのファミレスだった。
俺はあのあとハルヒともいったから一週間で三回だ。
すっかりなじみの深い場所になっていた。
284 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 02:15:58.35 ID:qA6xE6ObO
いい思い出ばかりではないが。
テーブルに運ばれてくるなんとかバーグなんちゃらを見るのも三回目。
違うものを頼めば良いのだがどうも一風変わった品や期間限定メニュー
なんてものが苦手で普遍的なレギュラーメニューを頼んでしまう。
冒険なんてのが苦手で間違っても勇者にはなれない……
言ってて悲しくなってきた。
286 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 02:28:31.53 ID:qA6xE6ObO
「話は?」
妄想にふけっていると珍しく長門の方から話しかけてきた。
「なんのだ?」
今度は心当たりないが。
「普通なりに楽しい話」
休憩室での話、覚えてたのか。
じゃあ俺が中三の時の話だ
口の中のポテトも飲み込んでから話し始めた。
「佐々木って女がいてな……」
288 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 02:37:57.72 ID:qA6xE6ObO
ーーーーーー
ーーーーーー
ーーーーーー
ーーーーーー
「とまぁこういう女がいたって話だ」
「…素敵」
「って佐々木のことか?」
そういうふうに言うやつは初めてだが。
「大体変な人っていうけどな」
「感性は人それぞれ」
ごもっともだな。話をしますって話し出すのはあまり自然ではないが
長門にとっては地球自体自然とは言い難いのでこれも上出来といえよう。
290 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 02:47:53.19 ID:qA6xE6ObO
「長門もなんかはなすか?」
「話しても意味がない」
「どうしてだ?情報に齟齬ってやつか?」
「あなたに話せるのは涼宮ハルヒの事くらい、
そしてあなたは私より彼女を理解している」
長門はもともとハルヒを観察する為だけに統合思念体とやらに生み出された。
当然と言えば、当然か。
293 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 02:56:41.83 ID:qA6xE6ObO
「そうか、俺の理解力が欠如しているとかじゃなくてよかったよ」
「……」
返事をすることよりもピラフを口に運ぶ方が重要なのか、それとも。
すっかり冷めたハンバーグを口に放り込みファミレスを後にした。
今日の詫びも兼ねて俺が会計を済ませた。
294 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 03:05:41.63 ID:qA6xE6ObO
ファミレスから長門のマンションまではそう遠くなかった。
女性を一人にしない紳士道があるわけではないが前記の
理由から俺は長門を家まで送っていくことにした。
月曜とは違い横並びに歩いていたが会話がないという点では一緒だった。
気分には大分開きがあるが。10分程度で高級分譲マンションの前まで来た。
296 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 03:14:00.93 ID:qA6xE6ObO
「じゃあな長門、明日も会うんだけどな」
明日は花火大会およびプレゼント配布会である。
駅へと戻る俺の肩にいつかのような負荷がかかった、
長門がか細い腕で俺のセーターをつまんでいた。
「?なんだ」
両手をふさぐ荷物のうち本では無い方の袋を差し出した。
298 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 03:25:38.56 ID:qA6xE6ObO
「これ、あなたに」
「え、お俺に?くれるのか?」
「そう、受けとって」
不意の事に頭が真っ白になった。
「ああ、ありがとう。でもどうして?」
ボードゲームを持っていない、空いている方の手で受け取った。
クリスマスには少し早いが。
299 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 03:33:42.76 ID:qA6xE6ObO
「これは礼」
「礼?なんのだ?心当たりはないが」
礼を言う心当たりは山ほどあるけどな。
「すべて、あなたと私が出会って今日までしてくれた事すべて」
「俺が長門にしてやれたことなんて殆んどないぞ、
俺の方が礼したりんくらい世話になってる」
「あなたがどう感じていようと関係ない。わたしという個体はあなたに感謝している」
300 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 03:43:56.70 ID:qA6xE6ObO
「…」
「こんな気持ちになるのは初めてのこと。自分でも自分が理解できない」
「…」
「尽きることのない思いはいつか形になるだろう」
「…」
「あなたに出会ってから、特に最近のわたしは範囲外の行動をしている」
「…」
「自分が何をしたいのかも分からない」
「…」
「分からない…なにも」
「…」
「行って」
「あ、あぁ」
長門の饒舌に聞き惚れていた。俺は再び駅へと歩き出した。
302 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 03:55:04.72 ID:qA6xE6ObO
「待って、振り向かずにそのまま」
2、3歩歩いたところで背中越しに声が聞こえた。
「…ただ一つ分かっているのは……あなたは涼宮ハルヒが好き」
「…!!」
振り向くがすでに長門はそこにいなかった。
305 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 04:04:14.32 ID:qA6xE6ObO
帰り道、心臓が締め付けられるような、そんな感覚が俺を支配していた。
あんなセリフを俺に放った長門、なによりそれを強く否定できなかった俺。
答えなんて出せるわけがなかった。首筋に当たる風が余計に俺を冷たくさせた。
307 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 04:10:27.77 ID:qA6xE6ObO
家に着き風呂に入った。
構いたてる妹とシャミセンを軽くあしらった。今日はすぐに寝ようと思った。
ベッドに入り明かりを消す、暗闇は眠りへ誘う好材料とはならなかった。
ーーカチ
ーーカチ
ーーカチ
無音で際立つ秒針がいたずらに時が過ぎているのを伝える。
308 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 04:18:51.67 ID:qA6xE6ObO
ひとつ大事な事を忘れていた。明かりを付け眩しさになれるのに一応の時間を置いたあと
俺は封を開けた。
剥ぎ忘れたであろうシールには
長門に渡したバイト代に近しい数字が書いてあった。
これが長門の働いた理由だとしたら…
再びベッドに入り利己的な自分に嫌悪を抱き己を呪った。
真に考えるべきは自分ではなく他人。
310 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 04:30:59.56 ID:qA6xE6ObO
身をもって感じた、どんな言葉よりも心に響いた。
今日は寝ないでおこう、
芽生えたこの気持ちを脳に焼き付けておきたかった。
いつしか記憶がなくなり朝日が俺を迎えていた。
311 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 04:40:01.79 ID:qA6xE6ObO
季節外れの花火大会は滞りなく実施された。
七時にいつもの駅前ではなく河川敷に現地集合、
最後が誰だったかは言うまでもないか。
「遅い!キョン、罰金」
312 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 04:46:51.17 ID:qA6xE6ObO
間に合ったのに罵倒されるシステムはどうかと思うが
そんな団員の思想はお構いなしにハルヒはふくれ面で俺を睨みつけた。
「あれ?なにそれ?」
一人一人こっそり渡すつもりだったがいくらなんでも
古泉のは目立ちすぎだった。
「
314 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 04:54:13.58 ID:qA6xE6ObO
「これか、これはとっておきだ」
「なにそれ、ばっかじゃない。まあいいわ
あんたの冗談に構ってる暇はないから。早くしないと朝日が出ちゃうもの、
キョン、有希、みくるちゃん、古泉君、あそこまで競争よ。
最下位は後片付けの刑に処するわ」
「…」
「わぁぁ、待ってくださいぃ」
315 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 05:03:02.33 ID:qA6xE6ObO
駆け出すハルヒを長門と朝比奈さんは追いかけた。
朝比奈さんそんなに駆けたら……バタン。ほら言わんこっちゃない。
「荷物を持っていたら走れませんね」
荷物持ちの男性チームはハルヒがピースで飛び跳ねてる場所に歩きだした。
316 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 05:09:24.43 ID:qA6xE6ObO
「ところでそれなんです?」
それというのはこれのことだろう。ことのいきさつを話した。
「それはわざわざありがたい話です。ですが受け取るわけにはいきませんね」
「どうしてだ?」
「だってほら、持つところがありませんから。帰りにありがたく頂きます」
317 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 05:26:16.99 ID:qA6xE6ObO
両手にもった花火を軽く持ち上げ、微笑を浮かべた。
それは男には無意味どころか逆効果だということを教えてやるべきか。
「朝比奈さんには何を買われたんです?」
「内緒だ、いずれわかる」
321 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 05:46:02.43 ID:qA6xE6ObO
「いいでしょう、涼宮さんに悪影響を与えるものではないと信じましょう」
なんでもハルヒを絡めてくるな、朝比奈さんの話だろうが。
「肝心の涼宮さんには?」
「…さあな、忘れた」
「たった一日で?知り合いの病院でも紹介しましょうか?」
本気で言ってんだったらお前を紹介してやるよ。
363 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 14:05:47.26 ID:qA6xE6ObO
「キョンー、古泉君。なにやってんの、早く」
「ほら、お姫様がお呼びだ。その話はまた今度だ」
各々季節外れの花火を楽しんだ、
売るほどあるというのは正に売り物であった花火にぴったりの表現で、
それほど沢山の花火が用意されていた。
374 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/28(金) 15:55:04.04 ID:qA6xE6ObO
「これあたしに?」
キョトンとした顔もまたたまらなく愛おしかった。
「ええ、この間のお礼です」
「えぇあたし、そんな、なにもしてません」
「そんなこともないですし、中身は茶葉です。
今度俺たちに振る舞ってくれたらありがたいです」
416 名前: ◆B5kBzKHNEA [] 投稿日:2008/03/28(金) 23:45:35.07 ID:qA6xE6ObO
「そおですか、じゃあ。明日頑張って淹れます、楽しみにしてて下さいね」
キラキラ光るその瞳は二人きりなら完全にアウトの視線を放っていた。
「キョンくん、これ付かないんですけど」
「ああそれは点けるとこ逆ですよ」
これがハルヒのいういわゆる一つの萌え要素ってやつか?
わかるぜちくしょう。
420 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/29(土) 00:19:44.44 ID:LuJycA68O
「ほんとです、点きました」
生憎浴衣ではないがきれいな女性が線香花火ってのは随分風情を感じさせるね。今冬だけど。
「キョンくん」
「はい?」
422 名前: ◆B5kBzKHNEA [] 投稿日:2008/03/29(土) 00:41:19.69 ID:LuJycA68O
「あたしは今過去に来ています、それは線…なんでもありません」
「はぁ」
それなら半年も前に伺いましたが
「あたしたちみたいな人と仲良くして楽しい?」
これは今なら自信を持ってこたえられる。
「えぇ、だからここにいるんだと思います」
「そう、じゃあ早く涼宮さんの所へ行ってあげて」
全部お見通しですか…
425 名前: ◆B5kBzKHNEA [sage] 投稿日:2008/03/29(土) 00:58:11.06 ID:8GvUwYNz0
ハルヒは何が楽しいのか両手に十数本の花火を持ち一人で振り回していた。
「楽しそうだなハルヒ」
「そうね、冬に咲く花火よ。普通じゃないもの」
分ったから花火をこっちに向けて近づかんでくれ。
「じゃあお楽しみを邪魔するのも悪いな」
428 名前: ◆B5kBzKHNEA [] 投稿日:2008/03/29(土) 01:06:02.58 ID:8GvUwYNz0
「何?」
「これ、完売御礼で親戚がお礼をくれてな。現ナマじゃ生々しいから俺が物品に変えておいた」
袋ごとハルヒに手渡した。
「そういうことだから、また冬の花火でも楽しんでくれ」
「待って、キョン」
429 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/03/29(土) 01:11:26.00 ID:8GvUwYNz0
「なんだ?」
「開けてもいい?」
「…絶対だめだ、帰って開けろ」
「なんでよ、今開けたいわ」
「家に帰るまでが遠足さ、今は花火大会、そうだろう?」
引用が間違ってるのは…認めるさ。
430 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/03/29(土) 01:16:11.91 ID:8GvUwYNz0
「むーー」
しかめっ面は辞めてくれ。
「じゃあちょっと待ってて」
ハルヒは荷物置き場から大量の花火を持ち出してきた。
「ここで花火しながらヒントを頂戴、これならいいでしょ?」
432 名前: ◆B5kBzKHNEA [] 投稿日:2008/03/29(土) 01:21:52.73 ID:8GvUwYNz0
無垢な笑顔に無理矢理しゃがまされ火のついた花火を持たされた、だから熱いって。
「えーとじゃあまずは色ね、白?黒?それとも……」
三時間余りの花火大会はサブイベントも無事終えて終了となった。
片づけはちゃんとやったぞ。俺と、古泉が。
434 名前: ◆B5kBzKHNEA [] 投稿日:2008/03/29(土) 01:28:13.61 ID:8GvUwYNz0
翌日、毎度毎度腹立たしい坂道を登っていると後ろから声をかけられた。
「おはようございます」
古泉は一際大きな荷物を抱えていた。
「重そうだな」
「そうですね、出来れば部室で頂ければ良かったのかもしれません」
437 名前: ◆B5kBzKHNEA [] 投稿日:2008/03/29(土) 01:34:31.42 ID:8GvUwYNz0
「それは俺に持ってあがれって事か?」
そんな大荷物持って目立つのは勘弁だ。
「滅相もありません。おかげさまで今日は快調ですからね、お先に失礼します」
古泉はそれを頭に載せ少々テンポのおかしいスキップで俺の前をいった。
この分ならハルヒの機嫌も治まってるらしい、実に喜ばしいばかりだ。
439 名前: ◆B5kBzKHNEA [] 投稿日:2008/03/29(土) 01:45:24.20 ID:8GvUwYNz0
めでたしめでたしと行きたいが最後にもう一つ。
やらなきゃいけないことがある。ガラーッ、ドアを開け対象を確認する。
机に脳の重さと比べて無駄に重い鞄を置いた。
「おはようハルヒ、ひとつお願いがあるんだが」
「えっ、あ、なに?」
妙によそよそしい気がするのは俺の気のせいかね?
440 名前: ◆B5kBzKHNEA [] 投稿日:2008/03/29(土) 01:50:54.57 ID:8GvUwYNz0
「この間の写真焼き増して欲しいんだ」
「どれを?」
「えーと……全部」
「全部?正気なの?あんたみくるちゃんが何枚撮ったかわかってんの?」
「そうだな、じゃあメモリーカードごと貸してくれないか?」
441 名前: ◆B5kBzKHNEA [] 投稿日:2008/03/29(土) 01:55:11.86 ID:8GvUwYNz0
「なにそれ、いいたくないの?あたしの写真ならそういいなさいよ」
「いや、その…」
ポニーテールなら別にお前でも…ってそうじゃなくて
ガラー
「ほら岡部が来たぞ、この話はまた後だ」
444 名前: ◆B5kBzKHNEA [] 投稿日:2008/03/29(土) 02:09:08.96 ID:8GvUwYNz0
「ちぇっ」
これから何とかしてハルヒから意中の写真を得なければいけない。
伊達に半年もハルヒのお目付け役を仰せつかってるわけじゃない、
策なら…まあこれから考えるさ。
空の写真立てなんて風変わりなものを部屋に飾る趣味は俺にはないからな。
終わりです。ありがとうございました。
449 名前: ◆B5kBzKHNEA [] 投稿日:2008/03/29(土) 02:14:06.58 ID:8GvUwYNz0
改めて、最後まで読んで頂きありがとうございます。
遅筆遅筆で保守して下さった皆様には本当に感謝です。しかも今日はお出かけ・・・・
前スレと合わせてこの話はこれで終わりです。
次回も少し考えてあるのでいつかの金曜日夜にスレ立てしようと思いますので
その時はまた是非覗いて行って下さい。